『スタンフォード式 デザイン思考』byジャスパー ウ

book

とっても良い本でした。僕からするとDesignって、何か芸術っぽいもので、遠い世界のものに感じていました。なぜなら僕はLogicalに考えるのを是とするビジネスの世界に生きているからです。でもこの本を読み、それが完全に勘違いだと気づきました。Designってlogicalなものなんですね。

どういうことかというと、これを引用すれば十分でしょう。

つまりデザイン思考とは、「(問題を解決する方法を)設計(Design)するための考え方(Thinking)」と捉えると、 腑に落ちるのではないでしょうか。

位置: 234

注意したいのは、決まりきった方程式にあてはめて必ず同じ解にたどり着くわけでもないというところです。これ、本当に面白いところです。「thinking」なので、あくまで、思考法、ということです。実際、本書でも

私は、人々の問題に関連していることであれば、どんなトピックでもデザイン思考を通じて解決に近づくことができると考えています。

位置: 520

「近づくことが出来る」と言っているに過ぎません。正解にたどり着くのではなく、「近づくだけ」です。「遠ざからなければOK」にも聞こえます。perfectly logicalな数学との違いは、ここでしょう、きっと。(極限概念を学ぶとき、「~近傍」という発想が数学でも出てきますけれどね。あれも、近づくだけ、ですがね。話がそれすぎますから、やめておきますが。)

ちなみに、僕の妹はNYのデザイナーなのですが、彼女も同じことを言っていました。つまり、Designはロジカルなもので、課題を解決するためにあるのだ、クライアント(顧客、つまり、YOU!)にserve(サーブ:従う、仕える)するためにあるのだ、と。

同時に妹は、DesignとArtの違いについても教えてくれました。Artは、まったくのただの娯楽で、情緒に訴えるだけの存在ということでした。確かに、ゴッホのひまわりって、どんな問題を解決してくれるのでしょう?あぁ、上手だねぇ、っていうことですよね。それって、究極の快楽ですよね。人間に生まれて良かったですね。

人間に生まれてよかった、と言いましたけれど、人間ってワガママで、年がら年中、文句言っているのですよ。夢も見ますし。「空を自由に飛びたいなぁ、はいタケコプター!」と言ってくれる企業は、いつ現れるのでしょう?経済成長の源泉は、みんな(僕も、あなたも含めて)のワガママ・欲望です。この点についても、以下に引用する通り、的確に本書は捉えています。

私たちは常に「人々が何かに困っていないか、不便を感じることを改善できないか」と考える必要があるのです。

位置: 217

そう。人間はワガママで、欲深い。常に満足しないで、よりbetterを欲する生き物です。だから進化し、経済成長してきました。これからもそうです。ぜひワガママ全開で生きましょう。

とは言え、ワガママ全開でヒトが生きていると、いろいろな課題が発生します。それを解決するのがビジネス(事業展開)だと僕は強く信じています。お商売の結果、儲かり、利益が得られたとすれば、それは課題を解決したことに対する正当な報酬であると考えています。

それで?だから?So what?

実際、どうやって課題を見つけて解決(ビジネス)していくの?という話なんですけど、その具体的な手順は典型的には下記の通りです。これが、かの有名なデザイン思考です。

  1. 共感
  2. 定義
  3. アイデア出し
  4. プロトタイプ
  5. テスト

もう少しぼくの言葉で言うと、

  1. インタビューしてみる。たくさん。世の中にはたくさんの問題があるはずだが、どんな問題があるのかを、宝探し感覚で探しに行ってみましょう。シンプルに考えましょう。人間はワガママmonsterだから、そこら中に転がっています。
  2. How might we…?というフレーズで、課題を設定してみる。「どうやったら、~できるだろう?」とつぶやいてみよう。「課題」という難しい言葉は避けましょう。
  3. ブレストする。発散させる。それから、KJ法で、まとめる。
  4. 仮説を立ててみる。これは、フレーズでもよいのですね。たとえば、「赤の他人の家に泊まるかしら?」みたいなのでもよい。え?聞いたことあるって?そう、これは、まさにAirbnbがデザイン思考で出したプロトタイプですね!
  5. テストする。これは、ソフトウェアのβ版リリースと思えばよい。バグだらけでよいから、とりあえずリリースしてテストする。で、直していけばよい。最後にはきっと素晴らしいアウトプットが出てくるはず!

こんな感じです。本書では、「空港での過ごし方をデザインする」、という例があって、分かり易かったです。そう、デザイン思考は、空港経営にも活用できるのです。ということは、ちょっと応用すれば、ビジネスに活用出来るのです。

需要があれば、僕がNinbari株式会社の社長としての中期経営計画を、デザイン思考を応用してどうやって作成したか、がんばって書くかもしれません。書くとすれば、

  • 人事制度をデザインする
  • 工業製品をデザインする
  • 財務計画をデザインする
  • 経営計画をデザインする

・・・こんな感じの目次になるでしょう。

なお、本書の正式名称は『実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決 (できるビジネス)』(byジャスパー ウ)です。

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