【書評】『2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望』by落合陽一

book

コロナショック前の2019年11月に出版された、国連が提唱するSDGsの解説を中心に、地球が将来どう変化していくのかを予測している本です。

以下のような方が読むと、とっても面白いと思います。

  1. SDGsの勉強をしたい一般人
  2. 世界が今後どう変化するか羅針盤を知りたいビジネスパーソン
  3. コロナショックの影響で世界がどう変化するかを知りたい経営者

僕は三番目の視点でけっこう読みました。コロナショックぬきにしても、世界はこれからこう変わっていくんだよ、ということを、本書はかなり的確に説明してくれています。コロナショックでそれが加速する話と、その逆の話がありそうで、とっても勉強になりました。

例えば、これ。僕は製造業の会社を経営しているのですが、以下の概念図を見て、思考がすっきりしました。

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この概念図を見て「あ、これコロナショックで加速しちゃうな」と思った話から書きます。「付加価値の低い中間工程は、人件費の安い新興国で」という現象は、すでに見られていました。だから、僕の経営する会社でも、「なるべく高付加価値な仕事をやろう」としてきました。でもこれを見ると、付加価値の高いと思われる工程(設計など)についても、グローバルに人材間の競争が起こるので、日本の大卒・院卒の設計エンジニアも厳しい状況になるのかもしれないと思いました。自動翻訳ソフトももっと精度が良くなるだろうし、5Gで通信量が激増すればオンライン打合もより高い精度でリアルに近い感じでできるようになってしまうでしょう。コロナショックでこの流れは加速するのかなと思いました。

反対に、コロナショックで状況が変わったのかなと思った話。物理的なモノとヒトの移動に制約がかかったので、地産地消がより進むのかなと思いました。そうなると、ここで「中間層(製造工程)、中抜き」と書かれている部分で、製造業の国内回帰のベクトルが働くのかなと思いました。

グローバルに見ると、日本人より人件費が安く、はるかに優秀な若者がそこら中にいるのだと思います。世界中のいろいろなところにいる彼らと、24時間、言葉の壁がなく、オンラインで仕事ができるようになってしまうならば、日本人に残る仕事は一体なんだろうか、とけっこう深刻な気持ちになりました。国内だけを見ると少子高齢化で労働力不足ですが、グローバルにはまだまだ人口が増え続けています。日本国内の人手不足が解決するどころか、グローバルにジョブの最適化が起こることで、日本人はやることがなくなっていくのでは?という気持ちになりました。

そうなると、グローバルに見たときに「日本人の付加価値ってなに?」ということを真剣に考えないといけないと思いました。当たり前ですが、豊かな生活をするために、人間だれもが高い給料がほしいです。そのためには、高付加価値な仕事をする必要があるわけです。

もっとも、何を持って「豊かな生活」と言うかも、難しいです。

さて、そもそも「貧困」とは何でしょうか。単純に「お金のない状態」と考える方もいるかもしれません。しかし、お金という尺度だけでは「貧困」は測れません。なぜなら極端な話、お金がなくても、食べ物があり豊かな生活環境が整っていれば「貧困」とはいえないし、逆にインフレが進み通貨の価値が暴落した国では、いくばくかのお金があっても物を購入できず豊かではないかもしれません

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シリコンバレーで年収1500万、東京で年収1000万、日本の田舎で年収500万。どれが「豊かな生活」かというと、一概には言えないかもしれません。大切なことは、これらのすべての選択肢のどれでも選べるけれど、自分の意思でそれを選び、納得し、幸せな人生を送ることだと思いました。

とにかく勉強になりました。池上彰さんや安田洋祐さんとの対談も載っていて、読み応えがありました。コロナショック前に書かれた本ですが、いま読んでみても非常にいろいろなインスピレーションを得られました。

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