『シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土』の読書感想

梅田望夫さんという人物は、とても魅力的だ。面識はないが、文章を読むだけでそう思った。いくつか感想を箇条書き。

シリコンバレー精神
本書[pp.299]より引用。

限られた情報を限られた能力で、限られた時間内に拙いながらも何かを判断しつづけ、その判断に基づいてリスクをとって行動する。行動することで新しい情報が生まれる。行動する物同士でそれらの情報が連鎖し、未来が創造される。行動するものがいなければ生まれなかったはずの未来がである。未来志向の行動の連鎖を引き起こす核となる精神。それが「シリコンバレー精神」である

blogを書くという行為は、この精神と通じるものがある、と梅田さんは書いている。blogのアーカイブをみれば、自分がそのとき何を考えていたか、ということが分かる。後からみると見当違いのこともあるけど、それを修正するのではなく、ああ、そのときはそんなことを思っていたのか、ということが分かる。そして、そうやって過去の自分を振り返るための情報をblogアーカイブは提供している。ただし、そうなるためには、そのときの情報に基づいて、自分の判断をしないといけない。両論併記とか、こう書いたらウケがいいだろう、といか、そういう発想で文章を書いてはいけない。

Nerd
プログラミングおたく、とかいったニュアンスで本書で使われていた。別に、野球なら野球おたく、サッカーおたく、経済学おたく、とにかくなんでもいいからおたくとかマニアみたいな人たちのことの総称がNerdと一般的には使われていると思う。シリコンバレーでは、プログラミングNerdがたくさんいて、この人たちがシリコンバレーの超スピード成長を支えている、と書いてあった。おたくというと日本語ではマイナスのイメージしかないが、要するになんらかの対象に情熱を持って生きているすばらしい人間だと思う。情熱をもっていない人は生きた屍だと思うので、経済全体がどれくらい幸せか、という尺度は、GDPなんかを見るよりも、総人口に対するNerdの割合、とかで定義すればよいんじゃなかろうか。そしたら私は計量経済学Nerdに分類される。

返さなくてもいい借金
起業が日本より気楽にできて人材が流動的なシリコンバレーの特徴が強調されていた。うらやましい。日本の僕は、いま修士1年の秋で、この冬から来年春までのシュウカツの機会を逃すと、通常就職はもう出来ず、大学の先生になるか廃人になるかのどっちかしかなくなる。もっと気楽に、万が一、学問に飽きてちょっと違う空気がすいたいな、とか思ったら、気楽に別のことが出来るような世界があったら気が楽だな、と思った。そういうシステムがないから、博士課程の学生がけっこう精神的に追い詰められたりして、博士が100人いる村なんて怖い童話が語られたりする。グーグルを作った二人もスタンフォードの博士の院生二人だった。日本で、慶應や東大の博士課程の院生がグーグルみたいな化け物を生み出す可能性は、まぁゼロでしょう。それだけの土壌があれば、もっと気楽に博士にいけると思うんだけどなー。

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