もうこのエントリー書いてから1年近く経つのか(去年の株安のニュースは2月28日のことだった).最近また株下げているけど,ちょっと頭が整理されていない状態なので,自分自身用のメモとしていくつか箇条書き.時間もないのでデータを探したりもしていないので,変なことかいてたらツッコミ希望.
1)円高→日本株安
円高→株安という経路があること自体,よくわかりません.日本は輸出国なので,円高になると輸出してる企業の業績が悪化して,株安になる,というのがいちおうの説明ですが,日経平均のような株式指数がどの程度,為替市場の影響をうけるものなのか,よくわかりません.個別の企業が影響を受けるのはよくわかりますが.例えば以下にあるように,トヨタの例.
外国為替市場では円相場が一時、1ドル=105円台後半まで上昇し、トヨタは下落率が7%を超え、2営業日ぶりに昨年来安値を更新した。
ソース:日経平均、終値752円安の1万2573円・2年4カ月ぶり安値 @ NIKKEI NET
2)最近の日本の株安の原因はなに?
原因として考えられる仮説はたくさんあります.
- 1)で述べたとおり,円高→株安という経路が強いという仮説.
- 日銀の追加利上げ観測があって,株安を誘発している(債券保有比率を高め投資家がポートフォリオを再構成するから),という仮説.さらに日銀の追加利上げ観測は,円高要因ともなるわけで(内外金利差を小さくするから),現状の円高はこれによって引き起こされている面があるんじゃないか,ということまでいえそうかな.
- サブプライム問題がやばすぎるという仮説.しかしこれもよくわからんのだが,サブプライムの端を発する世界同時株安が,「根拠なき熱狂」なのか,「経済の実態を反映した結果」なのか,よくわからない.サブプライムって実際,どの程度日本の株式市場に影響をもっているんだろう?(心理的な影響じゃなくって,実物面で)
- その他のいろいろな不安要素があって,根拠なく下落してるだけ,という仮説.サブプライムも含め,原油高騰,与党も野党も頼りない現状,年金不安や医療不安だなんだと,いろいろ心配ごとが多いから,なんとなくみんなリスク回避的になっているのかな,ということ.
- 日本の経済の実態を反映しているという仮説.実態とはなに,ということがあるが,日本の企業の業績なり将来の合理的な見通しが,本当に悪いから日本は株安になってる,という仮説.
3)じゃ,円高はなんでおこってるの?
- 2)の最初の二つ目の項目で書いたように,日銀の追加利上げ観測があって,円高に進んでるって仮説.
- 円が高いというより,ドルが勝手に転落しているって仮説.
- 日本の企業のファンダメンタルが高くってそうなっているよって仮説.これは2)の4つ目の項目の反するが.
4)為替と株価の関係ってどうなってんの?
円安→株高→円高→株安→円安→・・・・
ってなってるんだろうか?相関関係と因果関係を混同してしまいたい誘惑に勝てない.
ああわからーん.もっと国際経済学,国際金融あたりを勉強しときゃよかったかな....まぁどうせ正しく理解してる人なんてほとんどいないからいいか.
コメント
はじめまして。ひろしといいます。
ググっているとヒットしました。
経済学の大学院生の方のようなので、しかもファイナンスを専攻なさっているようなので、ぜひご質問させていただきたいことがあります。
このエントリーにもあるように、現在、株価が乱高下していますが、銀行のサブプライムローンの損失拡大や失業率の悪化といった情報やそこから生まれる期待が株価に与える影響を分析しているような研究はあるのでしょうか?
お教えいただければ嬉しく思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
ひろしさん
コメントありがとうございます.
>現在、株価が乱高下していますが、銀行のサブプライムローンの損失拡大や失業率の悪化といった情報やそこから生まれる期待が株価に与える影響を分析しているような研究はあるのでしょうか?
「現在のサブプライムなどの情報が,どのように株価に影響を与えているのか」という時事ネタに関心があるのか,「世の中にあるいろいろな情報が,どのように株価に影響を与えているのか」ということに関心があるのか,どちらでしょう?
前者の場合は正直,すぐに「これがそう」という論文を読んだことはありませんが,google scholarで探してみたら,以下がありました.
http://www.boeckler.de/pdf/v_2007_10_26_holz.pdf
ファイル名を見れば分かるとおり,非常に新しい日付の論文で,サブプライムなどの現状についてアカデミックに分析されているようです...がちょっと今時間がないのでこれを読んでいる暇はありません.そのうち目を通したら,ブログでこの論文の紹介エントリーを書かせていただくかもしれません.注意すべきは,論文は通常,どこかの学術雑誌に載ってはじめて価値をもちますが,このように新しい論文だとまだとこにも載っていないので,どれくらい内容があるのか,まったく不明なことです.しかも著者は無名ですし,あまり期待しないほうがいいかもしれません.
後者の場合は,まぁそうですねー.市場効率仮説(efficienty market hypothesis)という有名な仮説があって(ぐぐればたくさん説明ページがありますよきっと),この仮説が正しいのかどうかってことで学界はいまだに決着ついてないんですが,この論争をめぐってよく「どういう情報が株価の予測力をもつのか」みたいなことを学者たちは研究してきました.ここにある情報Aがあったとして,このAを知っていれば明日の株価の予想が可能になるとしましょう.さて,そんな情報はあるのか?ということを考えるとき,「ない」とするのが市場効率仮説(efficienty market hypothesis)の立場です.よく「マーケットはあらゆる情報を織り込みずみ」とかいいますが,まぁそういう状態のことです(すべての情報は織り込み済みだから,まだ織り込まれていない情報Aはあるはずがない,ということ).一方「ある」とする人たちは,実際にこの情報Aを探してみて,「ほら,あったじゃん」というような論文を書いているわけです.市場効率仮説(efficienty market hypothesis)が正しいならばこういう情報Aはあってはならないので,Aみたいな情報が存在する現象を「アノマリー(異常現象)」とか呼びます.不思議な例では,「お天気」があります.天気がいいとみんな気分がよくなって強気になるのでNYの株価あがる傾向にあって,その反対もまたしかり,っていうユニークな研究をみたことがあります.”Stock prices and Wall Street weather”, American Economic Review, Vol. 83, No. 5 (Dec., 1993), pp. 1337-1345ってやつですが,American Economic Reviewは経済学の世界ではTOP3に入る超一流の学術誌です(自然科学でいえばNatureとかScienceみたいなレベル).が,アノマリーも取引コストなどを考慮に入れれば,実はそんなに株で儲けることは難しい,という風な立場もあって,実際に株で儲けることが出来るほどの強いアノマリーはないと思います.
「とりあえずデータをいじってみたら,ある変数(例えばサブプライムの証券化された回数とか,失業率とか,金利とか)から株価に因果関係がありました」というレベルの拙い回帰分析をしているだけの人なら,世の中たくさんいるんじゃないかな,と思います(たまに僕もそういうことを遊びでやっています).が,こういう分析は理論的根拠がないので,アカデミズミでは相手にされません.