『この金融政策が日本経済を救う』の読書感想

著者の主張はざっくり言うと「日銀は正しい金融政策をする能力がない」という感じ。僕も、今の日銀がいまだにゼロ金利にしていないのは、歴史的・致命的なミスだと思うので、この主張自体は賛成かな。

ただ、「ん?」ってところもたくさんあった。
例えば、マンデル・フレミング理論を持ってきて、

いまだに、公共投資一本槍の政治家やエコノミストの皆さんには、ぜひこの理論を論破してもらいたいものです。間違いなく、日本人初のノーベル経済学賞受賞者になれます。ぜひ、頑張ってください(笑)。

と嘲笑しているが、マンデル・フレミングモデルが実証に耐えうるモデルかどうか、高橋洋一氏はやったことがあるのだろうか?実証分析を通るまでは、たとえノーベル賞とった人が考えた理論であっても、仮説でしかないのだよ。I doubt that this model can explain the actual economy.

あと、プリンストン大学にいた頃、バーナンキ(アメリカの中央銀行のトップ)だとかクルーグマン(去年のノーベル経済学賞)だとかと交流して、正しい金融政策の知識を得て、それに比べると日本は正しいことができていない、というボヤキについて。そのクルーグマンは、「もっと財政出動しろ、まだ足りないぞオバマ」だとか「90年代の日本は財政政策が効かなかったと批判されるが、それは違う。財政政策が不足してたんだ」と言っている。高橋洋一氏のマンデル・フレミングモデルによれば、財政政策は(変動為替相場制のもとでは)まったく効かないはずなんだけど。もちろん、マンデル・フレミングモデルのもとでも、金融政策も正しく行われていれば、財政政策も有効だっただろうが、そもそも高橋洋一氏は、「日銀は無能」と言っているわけだからさ。「アメリカの一流はこういっていた」という、虎の威を借りる議論はやめてほしい。

結局、高橋洋一氏って、経済学博士号ももたなければ、経済学の研究業績もゼロ。あ、でも繰り返すけど、「日銀は能力不足」という点は、賛成。

(追記)
ちなみに、以下のエントリによると、クルーグマンは、日銀がゼロ金利に下げてもあまり変わらない、と考えているようだ。僕はそれには同意しかねるが。というか、完全に理解できないが。

文藝春秋のクルーグマンインタビュー記事・続き - himaginary’s diary
昨日に引き続き、文藝春秋のクルーグマンのインタビュー記事から、気になったところを抜粋してみる。今日は日本に関する箇所。 日本は96年が財政出動のピークだと思います。その時日本経済は3パーセントの成長を見ました。財政出動が経済を刺激するのは確かです。効果がなかったと言われるのは、巨額のお金を使ったのに、経済が持続的回復を...

コメント

  1. […] ほんと、たまたま本屋さんで見つけちゃって、つい買ってしまったのであった。反日銀の代表格、岩田規久男氏の超最新作。出版日、8月20日になってる。で、本の題名にて、言いたいことをはっきり言っている。同じ反日銀でも、『この金融政策が日本を救う』(by高橋洋一)と違って、まともな本だと思う。知らないこともけっこうあったし、勉強になった。 […]

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