“Pop Internationalism”の読書感想

邦訳は学部時代読んだことがあったんだが。昨年ノーベル賞とったし、原著を読み直してみた。有名な、「国と国とが競争をしているというのは危険な妄想」という主張。いまだに日本では大臣クラスの政治家が理解できていないみたいだが。

ちょっと、かいつまんでクルーグマンの論理をメモしておく。

1)国のcompetitivenessを、「our ability to produce goods and services that meet the test of international competition while our citizens enjoy a standard of living that is both rising and sustainable」と定義しよう。

2)あまり貿易をしていない国は、exchage ratesはstandard of living にそれほど影響しない。standard of livingの成長は、国内のproductivity growthにのみ依存する。海外と比べたときにproductivity growthがどうか、ではなく。つまり、standard of livingの成長(=competitiveness)=productivity growthということになるが、こういう場合は、国際競争力がうんぬん(貿易で勝ち組負け組の国が出てくるetc)って議論は無意味ってことでしょ。

まとめると、あまり貿易をしていない国ならば、standard of livingの成長(=competitiveness)=productivity
growthとなる。対偶をとってstandard of livingの成長(=competitiveness)≠productivity
growthならば、貿易をたくさんしている国、が導けるよね。

3)じゃあ、貿易をたくさんしている国について考えてみようか。そういう国は、productivityは成長しているけど、純輸出を増やすには、自国通貨を減価させ続けないといけない、ってことに気づいたとしよう。自国通貨を減価させると、他国財が相対的に高くなる。他国財に対する購買力が低下するので、standard of livingは確かに下がるかもね。

まとめると、「国のcompetitivenessが、単純に国内のproductivityとは異なるものである」⇔「purchasing power grows significantly more slowly than output」ということ。(*)

4)じゃぁ、実際にデータを見て(*)の仮説を検証してみよう。国内のproductivityが成長しているのに、購買力が低下しているかどうか、検証すればいいわけだ。国内のproductivityはreal GDPを見ればいい。購買力は、command GDP(注)を見ればいい。実際に見てみると、real GDPの成長率よりも、command GDPの成長率が著しく低い、なんてデータはない。

5)なんでこうなるんだろう?国と国は、企業と企業が競争しているのと同じよう競争をしているわけではないってことを知ろう。ペプシとコカコーラを考えよう、ペプシの売り上げの中で、コカコーラの従業員の割合はすごく低いだろう。だから、ペプシが成功すると、コカコーラは被害を受ける。でも、国と国は違う。日本製品の海外への売り上げ(輸出)の中で、アメリカが閉める割合は小さくはない。だから、日本製品が高品質で安価なものを売ってきても、それは必ずしもアメリカの被害にはならない。アメリカ企業は売り上げを減らされるだろうが、アメリカ国民は、高品質な安価な日本製品の恩恵をうけて、standard of livingを高められるからだ。

・・・とまぁ、こんな感じ。

(注)exportをexport price index(つまり国内の物価指数)で割るのではなく、price index for U.S. imports(つまり貿易相手国の物価指数)で割ったもの。exportによって自国が得るお金で、どれくらい海外のモノが買えるか、を表現することになる。つまり、購買力の代理変数となる。

 

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