『脳を活かす勉強法』の読書感想

タイトルに惹かれた&NHKプロフェッショナルの司会や『フューチャリスト宣言』などで有名な茂木さんの本,ということで読んでみた.茂木さんに好感をもった状態で読んだのだが,率直な感想は,「この程度の工夫,誰でもやってるはず」である.例えば,勉強するとき,五感をフルにつかったほうが有効だよ,とか.僕も暗記作業するとときは,一人になって読み上げて,読み上げた自分の声を聞いて(聴覚),手を動かして書いて(触覚),当然対象文字列を見て(視覚),というようなことをやっていた.単に目で見て覚えるより断然効果がいいが,そんなことみんな知ってるでしょう?あるいは,本を読むのがいいことだよ,とか.これも当たり前でしょう?または,夜より朝のほうが能率いいよ(寝ている間に脳が情報を整理するから,という説明はなるほどと思ったが)とか.それもみんな経験的に知っていることでしょう?あるいは,簡単すぎても脳は喜ばないし,難しすぎても脳は喜ばないので,ちょうどいいくらいの難易度の問題をやって脳を喜ばせてドーパミンを出せば効率よく学習できるよ,とか.これも,当たり前でしょう?

「学者とは,当たり前のことを,さもすごいことを言っているかのように言う人」というジョークを思い出した.

しかし,この本けっこ売れているらしい.ということは,こういうことを当たり前だと思っていない人が少なくないということか?しかし,こういうことが当たり前だと思わないまま大人になった人が読んだとしても,本書はあまり参考にならないと思う.本書の根底にあるのは,「勉強っておもしろい!だから,もっと勉強してもっと脳を喜ばせて,もっと知的好奇心を満たして,もっともっと楽しみたい!そのためには,もっと上手に自分の脳を活用したほうがいいよ!」というメッセージなのである.「勉強っておもしろい!いい学校に入りたいから,とか,いい会社に入りたいから,といったモチベーションではなく,単に楽しいからもっともっとやりたい!」という気持ちを著者は持っているが,誰もがそういう気持ちを持っているわけではない,ということを25歳の僕ですら経験的に知っている.この気持ちをもった人はみな,本書の内容を当たり前に感じるだろう.そうでない人は,そもそも「勉強のどこが楽しいの」と思うんじゃないだろうか.

このレベルの大衆本を書くならば,「実は勉強ってこんなに楽しいんだよ」といった趣旨の本を書いたほうが社会貢献になると思う.あるいは,「勉強って楽しい!」って思える人と,「勉強って嫌い」と思う人の差がどこからくるのかを説明してほしい.この差は先天的とは思えない.後天的なんだろうが,どういう系統的要因が有意に効いているんだろうか.家庭環境?学校環境?『脳を活かす勉強法』よりも,『勉強好きな大人の脳,勉強嫌いな大人の脳』みたいな感じのタイトルの本を書いて欲しい.

 

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