『フューチャリスト宣言』の読書感想

『ウェブ進化論』『シリコンバレー精神』『ウェブ人間論』と,梅田望夫さんの本は大体読んできた.本書は,だいたい,これらの本の延長にあるが,脳科学者の茂木健一郎さんとの対談形式になっている点,スパイスが効いてる,とだけ言っておこう・・・かと思ったけど,以前にも「ネット上にある,自分の本に関する感想はほとんど読んでる」と梅田さんは書いていたが,本書でも改めて書かれていた.アナウンスメント効果を狙っているのか?「ちゃんと読むから,ちゃんと感想文書いてね」って.ほんじゃ,まんまと僕は引っかかってやろう.

既存社会のお偉方は,リアルが充実してるからネットをあんまりよく分かってない,分かろうともしない,むしろ嫌う,ネガティブな面ばかり取り上げる,という風潮について.これは僕もよくないとは思うけど,どうしようもないって投げてる.でもネットを賞賛するのって,お偉方にとっては自己否定につながるから,この態度を直すインセンティブはないから,お偉方を責められないかなって.お偉方は本当に聞く耳を持たない.重症なのは,若者の忠告を聞く耳持たない自分がすばらしいって思ってそうなことかなぁ.僕もこれなんとかならんもんか,と思っていたこともあったけど,説得はあきらめて,彼らが年とって社会の重要なポストからいなくなるのを待つしかないんだろう,って.だから,急激な変化はやっぱり今のお偉方が完全に社会に対して影響力を持たなくなる時期,うーん,たとえば大企業でいまの50歳過ぎくらいの役員くらいの人が,社長やって会長やって相談役になって,そんで会社から完全に退く70近く,つまり,あと20年弱は無理なんじゃないかなーって感じてる.

あと,本書では,けっこう楽観的なことばかり書かれてるし,読み終わったあとの心地よさって相当なものだけど,これは梅田さんと茂木さんという二人の才能が語り合ったからだ,という印象が強い.みんながみんな,「やりたいことをやり,一つのことを極め,知的作業に快楽を感じ,同時代の権威からの賞賛より未来からの賞賛を求める」わけじゃないから.「そういう人にとっては,これからはすばらしい未来が待ってる,読者もみんなそうなれ!」というメッセージを暗に発していたような・・・.梅田さんと茂木さんはそういうタイプだからいいけど.「そうじゃないタイプの人はダメだ」,みたいなことを言外に匂わせてる.そうじゃないタイプのほうが多いと思う.正確には,「梅田・茂木タイプになりたいけど,実際には,なれない」って人が大半かな.そういう人は,この本読んで,明るいフューチャーリスト宣言されても,ちょっと劣等感を感じるんじゃないでしょうか.置いてかないでくれ!って感じちゃう気が.で,梅田さんは,そういう人を置いてってもいいって思ってるんだろうか?なんか,とんでもない格差が生まれつつある気がした.

それと,「一億人から3秒集めたら」という夢物語が,ネットによって可能になるだろうって話.そこまで行ったら,考えられないくらいすごいことが出来るのだろうけど,そうなったら個は埋没しないだろうか.たとえば,アカデミックな世界で,現状では通常,研究者の個人名で論文を発表し,研究業績は個に贈られる.単著論文ならば,一つの脳で出した知的営みなわけだが,どう考えたってオープンソース精神で論文を書いたほうがすごいものがかける.もし実現したら,ノーベル賞論文と比べ物にならない論文がゴロゴロ出てくる.そうなると,「個への名誉」はどこにいっちゃうんだろう?って.そんなものいらない,って本当に人間ってそう思えるかな?学者の研究だけはリアルの世界から出ずに,ネット上で元気玉つくりましょう,みたいな話にはならないのかな?2.0的に元気玉を作ることでビジネスやウィキペディアは信じられないスピードで進展するのに,学者の研究成果は,いつまでたっても1.0的な個人作業のまま.そんなジレンマが起こるんじゃないかな.いや,でもちょっと待てよ,やっぱりアカデミックな研究も2.0的になり,既存の大学の制度が根本的に変わるのかもしれない.大学の先生という専門職業がなくなっていくのだろうか.

長々と書いたけど,ネット万歳,でも時々怖いってこと.

 

「『フューチャリスト宣言』の読書感想」への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です