イノベーションのジレンマにしても、ブルー・オーシャン戦略にしても、「一番声の大きい顧客の声ばかりが反映されてしまうがために、気づいたらハイエンド市場に特化する方向に向かってしまっていた」という事態を打破すべし、ということを説いていると思う。
企業には、一番うるさい顧客の声ばかりが聞こえてくる。で、このうるさくてわがままな顧客の「あれもこれもやって」という声を反映させまくると、高機能高価格な方向にどうしてもいってしまう。結果、普通の顧客にとって「そんな機能いらないから安くしてよ」という製品が出来上がってしまう。
企業の側も、開発が楽しくって仕方がないから「あれも入れようこれも入れよう」という方向で進めてしまう。既存の顧客でいろいろと意見をくださるのは、コアでマニアな一部のハイエンド層のみかもしれないのに、そういう可能性は無視して、あたかも聞こえてくる声は、一般的、平均的ユーザーの声だと考えちゃう。開発するほうも職人的な満足度を得られので、ついつい機能をつけすぎちゃう。
気が付いたらハイエンド市場に特化したハイエンド製品で戦う既存の大企業。そこにローエンドな安くって低機能な製品を投入して勝負をしかける新興のベンチャー企業が現れ、あっというまに新興のベンチャー企業が勝ってしまう、というのがイノベーションのジレンマ。で、だから、つけすぎた機能を「取り除こう」とか「減らそう」という意識を持てというのが、ブルー・オーシャン戦略。機能を減らすことで、逆に満足度を高めていただける潜在的顧客がいるのだよ、というのがこの戦略の背景。
よく言われる例が、ゲームオタクを満足しようとPS3をつくったソニーと、家族団らんの時間をつくるためのきっかけとしてのWiiとつくった任天堂。安くて機能の低いが、簡単に操作できるWiiと、高くて機能が高いが、かなりやりこまないと楽しめないゲームばかりのPS3。ソニーのターゲットは既存のゲーマーで、任天堂のターゲットは、ゲームをやらない一般家庭。
Wiiの場合、顧客への付加価値は高まったが、コストも低下している。普通、付加価値とコストはトレードオフの関係にあると考えてしまいがちだが、そうではない。かもしれない。というお話。
だとすると、世の中の人の満足をもっと高めるようなものを、いまより安く提供できる。かもしれない。というか、ぜったいそういうことが可能だと思う。とてもこの世がパレート効率的とは思えない。
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