『サブプライム問題』ってエントリーを書いてから,また少し自分で勉強した.
1)アメリカで資金はジャブジャブあって,貸付先を探していた.
2)貸付先の一環として,サブプライムローンに資金が行った.
3)住宅価格が上昇局面では,サブプライムローン債務者が返済できなくなっても,担保となってる住宅を売れば返済できた.
4)返済できるどころが,売買益すら得られることが分かった.
5)サブプライムローンはその定義上,通常ローンよりも金利が高い(=貸し付ける方からすると利回りが高く,おいしい貸付先ということ).にも関わらず,2),3)のような状況だったので,貸し倒れリスクは低いように見えた.
6)調子に乗って,サブプライムローンをどんどん貸し付けた.かなり強引な手法で低所得者層に,サブプライムローンを買わせた.
7)証券化すればリスク分散できるので,証券化した.
8)証券化したものを,さらに繰り返し証券化したりした.その結果,米格付け機関(ムーディーズなど)が、サブプライムローンを組み込んだ住宅ローン担保証券を正しく評価できない状態となった(実力よりも高く格付けしていたということ).
9)この証券化された住宅ローン担保証券を誰が保有したかというと,商業銀行や投資銀行などの金融機関.証券化された資産は安全なので(特に繰り返し証券化されたことによって,サブプライムローンが組み込まれていることが分かりにくくなって安全だとカンチガイしたってこと.実際,8)でも書いたとおり,米格付け機関も安全だとカンチガイしてしまったわけで),安全資産を持ちたいという気持ちの強いアメリカの商業銀行なんかは,住宅ローン担保証券に手を出してしまったというわけ.
10)さて,住宅価格が上昇している局面では問題はないことに注意しよう.なぜならば,返済が滞るサブプライム債務者がほとんど出現しないためである.
11)ところが,住宅価格上昇率が2006年に入って以降急速に鈍化!ここから問題が表面化する!
12)サブプライムローン債務者の返済が滞るようになる.住宅ローン担保証券が紙くずになったりするわけ.住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行は損失を計上するようになる.
13)金融機関は,貸出基準をきつくするので,追加融資を切望するサブプライムローン債務者のもとに資金は回ってこない.
14)サブプライムローン債務者の返済が滞りがさらに増える.より多くの住宅ローン担保証券が紙くずになったりするわけ.住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行はさらに損失を計上するようになる.
15) 12)~14)をループし,結局,住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行は莫大な損失を計上してしまう.(ゴールドマンサックス以外,軒並み損失を計上したってニュースや,Citiにアラブが出資したってニュースや,メリルリンチにみずほが12億ドル(約1300億円)出資したってニュースが記憶に新しい.)
16)金融不安発生!
17)株安,ドル安などになり,アメリカ経済先行きが怪しくなってきており,さらに世界株安などを引き起こし,世界経済を不安に陥れている ← 今ここ
1)のところで,どこから資金がジャブジャブ出てきたのか,ということを考えてみたんですが....「各国中央銀行が資金を供給しまくった」と下の参考にあげたIMFのページにはあったんですが.僕は,日銀の低金利や量的緩和みたいな金融政策によって,金がジャブジャブアメリカに流れた,という影響も大きいのかな,と思う.日米間の金利格差がある上に,量的緩和でジャブジャブ資金を垂れ流したので,日本からアメリカに資金がジャブジャブ流れていったのかな,ということです.
某外資系金融機関に勤める人も,「2008年は,過去数十年の中で一番つらい年の一つになる」と言っていたな.大変ですね.自分とその家族の資産は自分で守るために,これからも世界経済のお勉強はちゃんと続けよう.
なんかコメントあったら,適宜ツッコミ希望.
(参考)今回さんこうにしたページをいくつか.
経済,金融,国際情勢,ぜんぜんわかりません,って人は,以下を見るとよいでしょう.漫画のようによめて,それなりに正しいことが書いてあると思います.
あと,ウィキペィアの記述が,やっぱりけっこう参考になります.
それから,これは以前のコメントで知ったやつですが,けっこう参考になりました.
Lessons from Subprime Turbulence @ IMFSurvey Magazine: IMF Research
特に,
Investors have placed excessive trust in rating agencies’ approach to
structured credit. The ratings methodology for corporate credit risk is
fundamentally different from that used for structured credit and yet
the ratings that result are placed on the same scale, implying similar
potential losses. To avoid future confusion, ratings for the different
types of obligation should be clearly distinguished and investors
should never just rely on ratings to determine investment policy.
というところが,なかなか鋭い指摘だと思った.structured creditとは,マクロリスクのことで,corporate credit risk や個別のサブプライムローンのようなミクロリスクとは,分離してかんがえないといけない,ということだろう.格付け機関や,住宅ローン担保証券を保有していた米の金融機関が,サブプライムローンが証券化されて組み込まれた住宅ローン担保証券というstructured creditを正しく評価できなかった,ってことだろう.
コメント
お久しぶりです。ども。
なんか、ごちゃごちゃ毎度コメントしてしまって恐縮です。
以下、参考ページだけあげておきます。
別にIMFが万能なわけでは全く無いわけですが、
やはりここにいる人は、そこらへんの金融機関の
エコノミスト(俺とか)よりは間違いなく優秀だと素直に思います。
http://www.imf.org/external/pubs/ft/gfsr/index.htm
定期レポート。ちょっと古いけど一番新しい号は非常に勉強になる・・・はずです。
それとOECD。こちらの定期レポートもよく引用されます。
http://www.oecd.org/document/36/0,3343,en_2649_37467_1962020_1_1_1_37467,00.html
の最新号のなかの↓これ
http://www.oecd.org/dataoecd/53/17/39654605.pdf
特にp19の誰がCDOを買ったか?っていうエクスポージャー(保有リスク)を
推計している部分は、雑誌とかでも引用されまくり。
あとは、細かい論説だとクルーグマンの格付け会社批判
http://select.nytimes.com/2007/07/02/opinion/02krugman.html?_r=1&hp&oref=slogin
よく言われる批判ですけどね。まぁ格付け会社を
信じて投資しまくってたヘッジファンドも、単なる
投資の下手な人の集まりだったっていう、残念な真実も
見えたり見えなかったり。山崎元さんなんかは、
ハイレバレッジをきかすインセンティブが(一発屋に
なるインセンティブが)ヘッジファンドにはあったという
指摘をしていますが、まぁそれも正しいと思います。
で話し戻して、上記のIMFのレポートのCDOとかの関係図の中で(ch1のp11)
唯一抜けていたのが、この格付け会社だと僕は思うので、
どこらへんまで関係者がいたのかを把握してみると、
この問題はLTCMのときよりはやはり大変だなぁと
思うわけです。
(ABS、CDO、SIVs、モノライン、格付け会社、住宅ローン専門金融、商業銀行、投資銀行などなど)
ぜんぜんサブPとは関係ないですが、あっちの経済学者の人は
本当によく経済(というか現実のニュース)そのものについても造詣が深いというか
よく見ているなぁと思うわけです。クルーグマンにしてもマンキューにしても。
追記です。
http://www.economics.harvard.edu/faculty/rogoff/files/Is_The_US_Subprime_Crisis_So_Different.pdf
Rogoffの論説(?!)
確か池田○夫さんのブログからたどっていった気がする。
毎度、まとまりなく、だらだらコメントで恐縮です。
なんかもうちっとスマートに書きたいなぁ・・・。
いや、本当にすいません。
ラインハートの論文,時間ないのでとりあえず結論だけ読んでみました.
今回のクライシスはこれまでにないものでマジでヤバイよってみんな騒いでいるけど,過去のクライシス調べると共通因子(金融自由化とか)があるからそうでもないかもよって話ですね.
うーん・・・頭が整理されない・・・やっぱりわからんサブプライムショック.
[…] まず、サブプライムローン問題の背後にあった、証券化というテクニックについての説明。証券化のプロセスの中で、リスクは小口化され、切り分けられ、純化された。それによって、投資家のリスク選好にあわせた形で金融商品をオーダーメイドできるようになった。中でも、特にリスクが低いところだけを集めて作られた証券は、トリプルAの格付けを得てもおかしくないものとなった(注:本当にトリプルAの実力があったかどうか、不明。ここで言いたいのは、サブプライムローンというジャンクが、証券化で、一部はジャンクではなくなった、ということを強調したいだけ)。ところが、ここが僕はサブプライム問題の肝だと理解しているんだけど、この格付け自体を、格付け会社が誤っていたのが大問題だったんじゃないか。いくらオーダーメイドで低リスクのところだけをかき集めてみたところで、それはトリプルAにはなりそうもない、せいぜいトリプルBくらいだったんじゃないか?格付け会社は、ここをミスジャッジしてしまった、というミスを犯したんじゃないかな。それについては、ここにも以前書いた。 […]
[…] (参考) 『サブプライム問題について少し分かってきた気がする』 […]