この本の概要
ベストコンディションを整え、最高のパフォーマンスを引き出すために必要な、全てが詰まっている超良書です。文字通り、「全て」です。具体的には、食事、睡眠、運動、瞑想、自然との触れ合い、などです。著者は、1976年生まれで、慶応SFC出身なのですが、本書を読むだけで相当勉強熱心な方だということが分かります。これまでの人生で、どれほどの論文や書籍を読んできたのでしょうか。ぜひ機会があれば一度コーヒーでもご一緒させていただきたいものです。
さて、著者によると、現代人の体調不良の原因は、文明病です。例えば肥満という現象を考えるとわかりやすいです。古代に食糧が十分ではなかった時代には、食糧があるときにできるだけ食べておくことが理にかなっていたため、飽食の時代でもつい本能的に食べすぎてしまうわけです。肥満は、その結果です。本書では、肥満で内臓脂肪を蓄積しすぎると、炎症をもたらし、ストレスやうつ病を誘発するという理屈が説明されています。ここで炎症とは、身体の表面の傷だけでなく、体内の目の見えないところでも発生しているという点が重要です。炎症がうつ病を誘発している理屈は、『「うつ」は炎症で起きる』でも詳しいです。原題の”The Inflamed Mind: A radical new approach to depression”は、とってもキャッチーで面白い表現ですね。
本書では、大きく下記の3つの分類に沿って、体調不良を引き起こす問題について、整理してくれています。
分類 | 古代 | 現代 | 例 |
1.多すぎる | 少なかった | 多すぎる | カロリー |
2.少なすぎる | 多かった | 少なすぎる | 睡眠 運動 自然との触れ合い 太陽光の摂取量 深い対人コミュニケーション |
3.新しすぎる | なかった | 現れた | 孤独 抗生物質 |
主な内容
現代は、多すぎる
カロリーについては、すでに説明した通りです。
現代は、少なすぎる
「睡眠」、「太陽光を浴びる時間・自然との触れ合い」、「深い対人コミュニケーション」などが少ないと説明されていました。どれも、体調改善のヒントが隠されていました。
睡眠
僕も相当睡眠オタクで、いかに良質の睡眠を得るかばかり考えているので、この本に書いてあることの大部分は知っていましたが、それでも勉強になる部分も多かったです。例えば、下記は知りませんでした。
睡眠不足と炎症の関係を明らかにしたデータも事欠きません。
鈴木祐. 最高の体調 ACTIVE HEALTH (p.50). 株式会社クロスメディア・パブリッシング. Kindle 版.
これは、けっこう驚きました。本当ならば、「睡眠不足→炎症→うつ病誘発」という因果関係があることになります。改めて睡眠の重要性を理解しました。
太陽光を浴びる時間・自然との触れ合い
著者によれば、自然の画像を眺めるだけでも効果があるようです。もちろん、本物の自然に触れ合うほうが良いに決まっています。そう言えば、経営者仲間にも、山登り、キャンプが趣味と言っている方がいることを思い出しました。
と同時に、コロナ禍を受けて、体調を整えることの重要性も含めて考えると、都会から地方への移住は本当に素晴らしいことだと思いました。地方は本当に自然が豊かで素晴らしいです。僕はずっと日米の首都にしか住んだことがなく、25歳のときに兵庫県三田市に住んで京都府福知山市で働くという人生を選択しました。この人生には、本当に心から満足し幸せなのですが、自然との触れ合いが増えたことも大きな要因だと思いました。
深い対人コミュニケーション
著者によると、濃密な関係を構築できるのは同時に5人までで、その内訳は時間の経過とともに変化するということです。SNSなどで、広く浅い関係を簡単に構築できてしまうのは良い面もありますが、ストレスにもなりえます。僕は「広く浅く」は苦手なのですが、本書のこの部分についてとても納得しました。
現代は、新しすぎる
「抗生物質」と「孤独」。この2つが、特に僕の印象に残りました。
抗生物質
まず抗生物質ですが、これは良い腸内細菌までを殺してしまうので、身体によくないという理屈でした。そう言えば、妻だったか誰だったかが、抗生物質は身体によくないという話をしていました。ちょっとググっても、
抗生物質は細菌に対する薬であり、ウイルスには効きません。 つまり、風邪のほとんどを占めるウイルス性の風邪には、抗生物質は不要なのです。 かつては、風邪による体力低下をきっかけに細菌に感染すること(二次感染)を予防するため、抗生物質の処方が広く行われていました。今では、そのような二次感染の予防効果は、抗生物質にはないことがわかっています。それにもかかわらず「風邪には抗生物質」との思い込みが、日本の一般社会に根強く残っているのが問題となっています。
https://cs.sonylife.co.jp/lpv/pcms/sca/ct/special/topic/index1702.html?lpk=
などと出てきます。wikipediaの抗生物質の項目によると、
アレクサンダー・フレミングが1928年にアオカビから見付けたペニシリンが世界初の抗生物質である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%97%E7%94%9F%E7%89%A9%E8%B3%AA
ということなので、1928年前後で、人類の腸内細菌の状態が激変しているとしても不思議ではありません。さらに、抗菌グッズなどについてもネガティブな情報が載っていました。この本はコロナ禍の前の本なのですが、コロナ禍が落ち着いたら、あまり抗菌しすぎないほうがいいようです。
腸内細菌を育てるために、発酵食品が良いとのことでした。納豆、キムチ、ヨーグルト、はちみつ、フルーツ、ベリー、ぬか漬け、味噌、ザワークラウト、など、多岐にわたる発酵食品をなるべくバランス良く食べるとよいみたいです。
孤独
「孤独」について。これは、けっこう、ヘビーな話です。原始的な生活をしている狩猟採集民との比較をしながら、「瞑想(マインドフルネス)」や「ブッダの悟り」について触れつつ解説が進むのですが、かなり読み応えがありました。とくにこれが印象に残りました。
狩猟採集民のタイムフレームは、あくまで「いまここ」がメイン。現代人のように 数年先を思い描くようなことはないため に、未来の感覚が生じないわけです。
鈴木祐. 最高の体調 ACTIVE HEALTH (p.73). 株式会社クロスメディア・パブリッシング. Kindle 版.
豊かになりすぎたことで、遠い未来のことを考える余裕ができてしまったがために、「ぼんやりとした不安」を抱くようになり、これが「孤独」につながっている、という考察は、おそらくその通りでしょう。ブッダも、小さな王国の王子で、何不自由ない暮らしをしていたがために、「ぼんやりとした不安」を抱くようになったはずです。今日のことで精一杯、という原始人は、そのような贅沢な不安感を抱くことができないわけです。
話はそれますが、「ホンマでっか」で有名な植木理恵さんの講演で、うつ病の人には2タイプあるという話をしていたことを思い出しました。タイプ1が、年収が300万未満の人で、このひとたちの不安はすごく具体的で現実的な不安らしいです。タイプ2が、年収3000万以上の人で、この勝ち組のステータスを失ったらどうしよう、という、漠然とした不安を抱えているとのことでした。オチは「みなさんは、大丈夫そうですね」で、会場が笑いに包まれたのを思い出しました。(※優良中小企業の経営者を対象とした講演会でした)
話をもとに戻して。この、「ぼんやりとした不安」に対処することこそが、ベストコンディションを整える上で、もっとも大事だと僕は思います。ついつい心は迷走してしまいます。目先の具体的な不安ということではなく、「ぼんやりとした不安」は、本当に厄介です。目先に食べるものがあるし、コロナ禍でも、なんだかんだで餓死することはありません。それでも心に住み着く「ぼんやりとした不安」は、やばいです。「ぼんやりとした不安」とは、例えば、こんな感じです。
- 将来病気になったらどうしよう
- 大切な人が死んだらどうしよう
- いまもっているお金や資産を失ったらどうしよう
- 年老いたくない、衰えたくない
- いつか自分も死ぬのかな
こういった不安は、先進国の人間ならば絶対に心のどこかに住み着いています。そして、ベストコンディションを整える邪魔をします。その対処方法の鍵は、さきほど引用した、狩猟採集民の時間感覚にあります。コンゴのピグミー族の時間割引率を調査した結果、異常に高かった、という事実を引用して、
近代化された住民の時間感覚にくらべて、ピグミー族は徹底的に目の前の「 いま」に集中し続けているのです。
鈴木祐. 最高の体調 ACTIVE HEALTH (p.75). 株式会社クロスメディア・パブリッシング. Kindle 版.
という記述があるのですが、「いまここ」にいかに集中するかは、まさに瞑想(マインドフルネス)や悟りの境地の話と同じだと僕は思いました。
瞑想(マインドフルネス)は、そんなに簡単にはできません。どうしても雑念が浮かびます。本書では、それに近い効果が手軽にえられる方法としてマインドフルネス・イーティング(Mindfulness Eating)を推奨していました。テレビやスマホをおいて、自分がなにをたべているか、口の中の感覚に集中して食べてみよう、ということです。そうすることで、いやでも「いま、ここ、このたべもの」に集中できるので、こころがさまよい、雑念が浮かぶことがないということです。
また、筋トレなどをしているときにも、どの筋肉を鍛えているのか、口から空気がはいって出ている感触などに集中することで、似たような効果が得られるとも書いてありました。「どの筋肉を鍛えているか意識することで、筋トレの効果はあがる」は、ライザップでも教えられたことなのですが、確かに、筋トレ中、本気でやっているとき、徹底的に筋肉を絞っているときは、何も考えられない時間がやってくることがあります。あれには、瞑想に似た効果があったのか、と思うと、ちょっとびっくりしました。あの心地よい疲労感は、単なる筋肉痛や達成感だけではなく、心身ともに望ましい状態なのだと思います。筋トレ万歳。
さて、ここまで「いまここ」にいかに集中するかという話でしたが、結局未来はやってきます。結局、未来と向き合わないといけません。本書によると、「未来と現在をいかにつなげるか」が大事ということなのですが、これも非常に説得的でした。
僕の言葉でのべると、こんな感じです。
- 未来と現在を近づけるためにために、明確な目的・価値観を持つ
- 例としては、迫害に耐えた難民の話がとりあげられていました
- 会社経営で言えば、よくないことがおこっても(たとえば、コロナショックで未曾有の経済危機)この先にはものすごい、どうしても僕たちが成し遂げなくてはならないことがあるんだ、と思っていると、つらいことも耐えられる、ということだと思います。
- 未来を細かく切り刻むことで、未来を近くに感じる
- これは単純で、中間目標を立てておけば、まずはその中継地点にいけばいいのだね、と思って、頑張れる、ということです。マラソンでいうと、いきなり42.195kmと考えるのはしんどいのと同じです。
- スケジュール管理でいうと、非常に細かく、具体的に小刻みに予定を入れるべし、という話につながっていました。
- 著者は”if~then~手法”と呼んでいました。「10:00になったら書類を決済をする」、「12:30になったら昼寝をする」というルールをこまかく決めよ、というのは、実は僕もやっている手法なので、とても共感できました。
- ルールをつくっておくと、意思決定の回数が劇的に削減できるので、ストレスも減ります。オバマさんがスーツを2種類しかもっていなかったのと同じですね。実は、僕もスーツを2種類しかもっていません。濃紺とグレーのスーツです。朝、どのスーツを着よう?と思う数秒すらもったいないと思っているからです。
- スケジュール管理で僕は、「お風呂」「食事」なども書いています。だから、本当にびっちり埋まっているのですが、「暇でなにしよう」という時間は1秒もありませんし、不安を感じる暇もありません。
これらの手法を使うと、とにかく忙しくって、「悩んでいる暇はない」という状態になります。それこそが、一番幸せな状態だと僕は思います。やりたいこと、やらなくてはならぬことがたくさんあって、朝起きてから夜寝るまで、びっちり埋まっていますから。あぁ、まだまだやりたいことがあるのに、もう寝なくてはならない、寝る時間がきてしまった、くそ!と思って毎日ベッドに入る人生は、どれほど素晴らしいことでしょうか。
ぜひ本書を呼んで、ベストコンディションを整えて、最高のパフォーマンスを引き出して、素晴らしい人生を送りましょう。
最後に
『RIZAP×北斗の拳 史上最強の肉体改造術』も合わせて読んでみてください。
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