『大暴落1929』の読書感想

伊藤先生に薦められた本。けっこう面白かった、読む価値あったかな。アマゾンから引用。

これ読んで、やっぱ金融ってわけわからんわーって思った。金融投資で儲けた金って、正体不明。社会的にどれほど付加価値を生んでいるのかまったく分からなくなった。正体が分かるという人は、納得できる説明を是非教えて欲しい。

経済学では、金融はあまり経済の本質だとは考えていない。金融専門の人は、メインストリームじゃない。ど真ん中にいるのは、消費者行動とか生産者行動とかをみて資源配分について研究している経済学者だし。効用を生み出す財を生産したり消費したり、というのが経済の一番の本質なのであって、金融なんてものは異時点間の予算制約線のちょこちょこっとした移動を可能にしてくれるに過ぎないのである、と。

そもそも金融商品というのは、経済学が定義する財ではない。財(goods)とは、something good for someoneと定義され、それを消費することで効用が得られる何かである。金融商品は、それ自体効用を与えてはくれない。われわれが金融商品を買うのは、消費(財を購入し使って効用を得る行為)のタイミングを将来に遅らせたいから、ということ。

なんだかこう書くと金融なんて実体経済に比べたら屁みたいなもの、という感じになってきたが、それも違う。「金融なんてものは異時点間の予算制約線のちょこちょこっとした移動を可能にしてくれるに過ぎないの」だったはずが、実は研究対象としてはいろいろとやることがあった。それでいろいろな新しい金融技術が発達して、複雑な新しい金融商品が開発された。これが金融工学。

金融工学は高度な数学を使い、普通の人には理解できるものではない。(PhDクラスの人ではないと理解できるものではない。)それを、普通の人が扱って、ただでさえ正体不明な金融投資を、よりわけ分からなくした。それで当の金融実務家は、自分たちが何をやっているかちゃんとわかっていると思い込んでいた。そりゃ、クラッシュするわ。というのが、今回の金融危機に対する、僕の素朴な考え方。

金融投資で儲けた金って、正体不明。社会的にどれほど付加価値を生んでいるのかまったく分からなくなった。正体が分かるという人は、納得できる説明を是非教えて欲しい。

あれ、この本の読書感想はどこかに吹き飛んでしまった。

(追記)
ちなみに、僕の大学院時代の専門は計量経済学とか計量ファイナンスとか呼ばれるもので、金融工学と近いといえば近いが、金融工学を腰を据えて学んだことはないので、僕も金融工学についてはあまり深い学識はない。

それと、実体経済と金融のどちらが偉いか、というのは、同じコインの表裏の話なのでどちらも同じくらい偉いと思う。が、最近の雰囲気として、「金融の方が偉い」という空気を感じるので、それは違うだろう、と思う。学生の人気就職先も金融が多いが、実物経済やってる人がバカを見るとしたら、経済全体にとって非常に不幸なことだと思う。

金融サイドで頭がいいはずの人が実はたいして頭がよくなかったせいで始まった今回の金融危機、結局実体経済にまで皺寄せがきて、正直ふざけるな、と言いたい。しかもわが国の場合、たいした学問的業績もないだけでなく、経済学の博士号すら持たない人が中央銀行の総裁になっている。バーナンキに任せてダメだったら仕方ないと納得できるが、白川総裁に任せてダメだったら、仕方ないでは感情的に許せないと思う。(それでもなんだっけ、あの人、総裁になりそこねたあの人が総裁になるよりは、経済学の修士まではやっている白川総裁のほうが100倍良かったとは思う。)

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