草野厚(SFCの看板教授)の著作。
中曽根政権以降のみ読んだ。「経済政策全データ」と言っているが、外交政策にも紙面を割いているし、「データ」は最初の方にグラフが載っているだけ。でも、事実をたんたんと記述してくれているので、これまでの日本の政治経済の歴史を俯瞰するにはちょうどよかった。
文章は、政治学者が書くものより、経済学者が書いたもののほうが、理路整然としている印象を受けた。やはり数学やるかどうかの違いが現れるものなのか。ちなみに、理工学系の人が書いた文章は、もっと理路整然としている印象があるな。
日本のいまの政治システムだと、首相が「正しい経済政策」と取ることは難しい、という趣旨のことが書かれてあった。「あの首相はアホだ」とかいう書き方をしてストレス発散するのは簡単だが、そういうことをしない著者に好感を持った。日本のいまの政治システムとは、議員内閣制で、内閣が与党(つまり自民党)に支えられた政党である、ということ。首相になるには与党総裁になる必要があって、そのためには与党内の最大派閥の長になるか、最大派閥とつるむか、どっちかしかない。いずれにしても、与党内の多数派の意向を無視できず、彼らは選挙で当選するために有権者に耳障りの良いことしか言わないので、「正しい経済政策」をとることが難しくなる、ということ。
経済学部出身だが、あまりにも自分が経済政策決定過程について無知すぎると悟らされた。
コメント