『金持ち父さん貧乏父さん』の読書感想

有名すぎてこの本の内容は大体知っていたんだが、自分で読んでみた。なので、特に驚かされるようなことは書いていなかった。

僕なりに、本書の内容を超簡単にまとめてみる。

  1. お金のために働くのが貧乏父さん。お金に自分のために働かせるのが金持ち父さん。
  2. (資産/負債)は、あなたのポケットに(プラス/マイナス)のキャッシュフローをもたらす。この定義では、持ち家は実は資産ではない。30年もかけて住宅ローンを返済しかないといけないわけで、それは負債でしかない。それって銀行の奴隷人生。
  3. 金持ち父さんは、ファイナンシャル・インテリジェンスが高い。この能力は、①会計(決算書が読めるか?)、②投資(リスクを取れるか?)、③市場(経済学の知識があるか?)、④法律(合法的な節税方法を知っているか?)、という四つのこと。
  4. 自分のビジネス(会社)を持て。

で、いくつか僕が思ったこともメモしておく。

  • リスクを取れるかどうかは、自分が持っているお金の量によってかなり影響されるだろう。リスク選好パラメータは、保有する資産量についての、なんらかの関数になっていそう。(例えば、何か株を買うとき、お金持ちほど、その株が紙切れになったときにも大丈夫、なぜならお金持ちだから、ってこと)
  • 資産になりうるモノは、カスタマイズすればするほど市場価値が低下し、資産ではなくなってしまう。例えば車。自分専用に変な色に塗ったり変ななマフラーをつけたりすれば、中古車市場では売れにくくなる。自分の選好を重視して効用を高めようとすれば、市場価値が低下して資産価格が毀損しちゃう。自分の効用は多少我慢すれば、市場価値は維持できて中古車市場で将来良い値で売れる。結局、現在と将来時点で効用のトレードオフの直面する。異時点間効用最大化問題を、経済主体は適切に解いているか?あまり将来のこと考えていなさそうな人もいる。例えば、僕の目からは、主観割引率が0.1くらいしかないんじゃないか、というような人もいる。(主観割引率が0.1とかなのか、そもそも合理的行動をとっていないのか。どっちなんでしょう。前者とするのは、無理があるのかな?)
  • 上の2.の定義に従って資産を増やそうとすると、あまりカスタマイズはしないほうがいい。現在時点での消費はなるべく抑えて、将来時点を重視せよ、とも言える。が、この教えは、多くの人が過剰に現在時点を重視しているからこそ、心に響くのではなかろうか。
  • とにかく資産をつくっていくことが重要。なるべく早くから。住宅ローンとかは、APAPで返せるようにしたい。10年くらいとか?が目安かな。いまの日銀のスタンスが続けば、たぶん、むこう10年間で見たら物価はほとんど変わらない超低金利時代が続くだろうから、フラット35などの固定金利ではなく、変動金利でさっさと返すことにした。
  • 著者が金持ちになれているのは、単に保有しているハイリスク資産のリスクが実現化しなかったからで、たまたまラッキーだったからでしかない、かもしれない。リスクは実現するまでは気づかないものだから。もちろん、実現して失敗した投資もあるだろうが、全体としてうまくいっているのは、運がいいだけ、かもしれない。だから、本書を読んですぐにすぐにリスク資産に走るのは危険。
  • 分散投資が基本、なんてウソ、とか書いてあったが、著者はよっぽどこれまで運が良かったのだろう。あるいは、お金持ち過ぎて、失敗してもいいや、と思って投資している額がよほど大きいのだろう。僕は、(少なくとも今の自分の状態では)分散投資が基本だと思う。

金融オンチの日本人には刺激が強い本ですね。ほとんどの人が「貧乏父さん」なんで。悲しい。

コメント

  1. uncorrelated より:

    株式投資でインサイダー情報を利用しろと書いてあったり、住宅ローンの負担を強調する一方で家賃のことを無視していたり、色々な意味で大雑把な本だった記憶があります。
    著者はかなりこの本で儲けたでしょうけどね。この手の執筆活動を見ていると、情報商材の提供者を連想してしまいます。蓄財したノウハウを提供するのではなく、架空かそれらしいノウハウを提供する事で蓄財をするわけです。

  2. daniel より:

    いつもコメントありがとうござます。
    インサイダーの話は、開き直りのような印象も受けましたねー、正直。
    ファイナンシャルインテリジェンスとか、そういう力が重要だ、というのは、その通りだと思いましたが。
    あんまりこの本を真に受けて真似しようとしてもいいことないと思いますね。本文の方でも書いたことですけど。

  3. 『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』の読書感想

    金融日記の人の本。効率的市場仮説が主なテーマの、非常にいい本。市場は大変に効…

  4. […] 10年ぶりくらいに読んだのですが、いま読み返してみても、やっぱり痛快ですね。楽しい時間を過ごすことが出来ました。原著で読もうとおもったのですが、日本語で読みました。根性ありません。   ハーバード卒の数学者(アメリカ人)とか、お医者さん(イギリス人)とか、名画を扱う画商(フランス人)とか、イギリス貴族とかが、成り上がりのアメリカ人大富豪のビジネスマンに、合法的に合計100万ドル奪われるところから物語はスタートする。途方にくれる4人。しかし、どうしようもない。だって、相手は合法的にお金をうばっていったのだから。で、4人が知恵を出しあって、100万ドルを合法的に奪い返す策を練って、実行していく。その過程を克明に描く爽快ストーリーの小説。   4人ともすごい社会的地位も高いエリートなのに、簡単に金融詐欺にひっかかってしまうあたりが、面白い。しかも相手は、生まれも学歴も無いなりあがりビジネスマン。ただし、マネーリテラシーは半端ない。社会的地位&知的水準とマネーリテラシーは相関しないんですね、みんな『金持ち父さん貧乏父さん』でも読んだらどうか、とか思いながら読み進めていたよ。     原著はこれ。   タイトルがすき。”not a penny more, not a penny less.” おれたちは一円たりとも譲歩しない、という姿勢が現れている、この素晴らしいフレーズ。     […]

  5. […] 『金持ち父さん貧乏父さん』に近いと言えば近い。でもこの本の方が読みやすいし、感動が大きかった。もっとストレートに言うと、『金持ち~』はうさんくさいと感じてしまうところがちょっとあったが、この本ではあまりそうは感じなかった。たぶん違いは、『金持ち~』は具体的な投資(投機?)方法の例を紹介しているけど、この本はそういうことはしていない点。この本では、金持ちになるための意識の持ち方というか、哲学というか、気の持ち様に焦点を当てている。 […]

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