『坊っちゃん』の読書感想

1ページ読み進めるのがもったいない,なにしろこの本はたった132ページしかないのだ,こんな風に思ったことはこれまで一度もないが,傑作とか名作とか呼ばれる名高い本というのは,きっとこういうものなのだろう.文章自体はおそらく子供の頃の読んだころがあるに違いない,ところどころストーリーが記憶にあったのだが,大人になってから読むと不思議なもので一味違った読後感が得られているように思える.
漱石の書く文章が小気味良く軽快で,しかもストーリー展開も天才的で読者に自然と読み進ませ不思議とあっという間に小説の中の時間が過ぎ去っていく.つい先刻まで子供だった坊ちゃんが気が付いたら大人になり就職し四国で教師になっていて,その間の時間の流れの滑らかさといったら吃驚仰天,まるで人間の一生の儚さを表現しているようにも思えるが,これを文章で書き表せている漱石を心底尊敬する.いまさらながら旧1000円札のあの人って偉人だったのかと気付かされる.
ビジネス本やアカデミック本ばかり大量に読んで自分の脳味噌に知識を植えつけようとしてみたところで,結局こういう名著一冊を読んだほうが遥かに高い効用が得られるように感じる.と,今はこういう風に言いつつもどうせ今夜寝て明日にでもなったら,また話題のビジネス本を開こうとするに決まっている.人間なかなか変らないものとは分かっているが,これからは少しは意識して漱石などの文学作品もやろうと思う.とにかく25歳時点での自分に相当な影響を及ぼした一冊.