『日本人が知らない恐るべき真実 ~マネーがわかれば世界がわかる~』の読書感想

ロスチャイルドが現在の金融システムを作った、という下りとか、面白いなって思う部分もあった。でも、著者が最後に提案している新しいお金のあり方については、大反対。まともに感想を書くのも、時間の無駄のような気もするけど、一応。

著者の主張は要はこんな感じ。「金利があると、お金持ちはもっとお金持ちになり、貧乏人はもっと貧乏になってしまう。金利が、諸悪の根源であり、現在のお金のシステムを変える必要がある。」それで、著者が提案するのが以下の二つ。

(1)お金の使用料金をとること。つまり、時間の経過とともに、お金が減価するようなシステムにすること。たとえば、毎月、一万円札に100円分のスタンプを貼り付けていかないと、それが使えなくなるようなシステム。お金が時間経過とともに減価すれば、お金を貯め込まず、すぐに使うからお金が世の中に回るように出来るから。
 (2)必要であればなんらかの財と交換できるような、地域通貨を発行すること。これによって、お金の価値は財に裏づけされる。

仮に、著者の言うお金を「新しいお金」と呼んでおこう。

 まず(1)についてだが、これを実行すると、誰もお金を貸す人がいなくなる。だって、誰もが手元の「新しいお金」を「なるべく今すぐ使い切りたい」って思うのだから。すると、お金を借りる必要がある人が、借りることが出来なくなる。金融とは、資金の融通のことだか、誰も融通してくれなくなるわけ。例えば、住宅ローンなんて絶対成立しなくなる。車のローンも同じ。企業も借り入れできなくなるから、経済は活性化しない。要するに、異時点間での最適なお金の使い方の計画を実行できなくなる。稼いだ「新しいお金」は、今使ってハイ、オシマイ、という窮屈な世の中になる。

 このシステムの問題は、「新しいお金」が「貯蔵の手段」にならないこと。普通の人間だったらば、ある程度は使って、ある程度は残したいはず。その際、「新しいお金」が貯蔵の手段にならないならば、別の手段を使うだけだと思う。たぶん、ゴールドとかプラチナとかを使うと思う。で、そのうちこれが「新しいお金」に取って代わって通貨としての役割と担うようになる。ところが、ゴールドとかプラチナとかは重たいしかさばるので、これの所有権の紙切れが使われる日がくる。そのうち、ゴールドとの交換権がなくなって形骸化した紙切れが、通貨として認められる日がくるだろう。これこそ、現在のお金なのである。結局「新しいお金」は駆逐されてしまうだろう。

 で、(2)について。実行可能性が低い。「財」として、何を選ぶの。金本位制ではゴールドだった。具体的に、何を使ったらいいのか皆目検討がつかない。金本位制が崩壊しても、現在の通貨は通貨として問題なく機能している。「みんなが通貨に価値があると信用していてば、財の裏打ちがなくとも、通貨は問題がない」ということ。

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