こんなペーパーを発見。
What Does Performance in Graduate School Predict? Graduate Economics Education and Student Outcomes
アメリカのトップ5(Harvard, Massachusetts Institute of Technology (MIT), Princeton, Stanford or the University of Chicago)の経済学の大学院生に関するデータを使って計量分析している。院生時代の成績や国籍・性別などが、PhDコース在籍中の成績やPhDコースを終えた後の研究者・学者としての就職に対してどのような影響を持っているのか、ということを分析している。
例えば、こんな結果が得られている。
・1年目の成績がよい学生は、PhDコースを完了する確率が高い(注:アメリカでは大学院に入ると最初にミクロ・マクロ・計量という経済学の主要三科目を死ぬほど勉強させられ、テストにパスできない学生はクビになる)。
・マクロ・ミクロの成績がよいと、よい就職をする傾向にある(注:例えばHarvard大学のAssistant Professorになれるのが良い就職)。
・マクロ・ミクロ・計量という主要三科目の間の成績は相関している(マクロが出来るやるはミクロもできるし計量もできる確率が高い、とかそういうこと)。
・アメリカ人でないほうが良い成績をとるが、だからといってよい就職をするわけではない(アメリカがPhDを与える態度ってダブルスタンダードってことなんですかね)。
・入試時点で提出するGRE scoreの中では、Analytical GRE scoreが一番、大学院に入ってからの成績をよく予想する(その学生の脳味噌の基本スペックが一番現れるということでしょう、きっと)。
大体こんな感じ。さ、データをいろいろと計量分析した結果このようにいろいろなことが分かったわけでございます。通常、個人的な経験や直近に人から聞いた印象に残っている情報、あるいは情報源の怪しい噂話をもとに「○○って○○らしいよ」のようなきわめて信頼度が低い情報が世の中に大量にあるが、計量経済学ってけっこうすごいでしょう?ここに列挙した分析結果は、実に科学的手続きによって得られた、かなり信頼度の高い情報であります。
いま、信頼度という言葉を使ったが、上に列挙した結果は、信頼度100%の分析結果ではない。しかし、「この結論は99%以上の確率で正しい」といったような、「紛れの度合い、不確実性の度合い、ウソを言っているかもしれないという自覚、信頼度」をちゃんとコントロール(いや、有意水準を通常なんの根拠もなく5%に設定し、リスク関数をベースに主観的に決定していないので、コントロールという言葉は間違っているかな?)、把握している。これが計量経済学であって、実に学問に真摯な態度だと思う。
さぁいろいろと分析した結果このペーパーのconclusionを見ると、一番最後の文章がこれでございます。
Our results suggest that there is not an easily recognizable star profile or single path to success for an economics graduate student.
さんざん分析して結論は、こんなにあたりまえなことかい?!・・・と。一般人には難解な言葉と数式を使って導かれる専門的な論文の結論というのは、往々にしてこのように結論で笑いをとる、ということを示した好例と思った。
あぁ、経済学のジョークを思い出してしまった・・・。
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