『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』の続編。感想は、前作と同じく「わくわくして楽しい気持ちになった」というところか。両方ともいい本っす、お薦めできます。
で、内容。まず原著のタイトルに触れる必要がある。前作は、”Build to Last”つまり「永続するように作られた企業」について語っていた。そういう卓越した企業(BTL企業)と、普通レベルの優良企業に違いは何か?というのが、前作のテーマだった。ところが、「”Build to Last”を読んでも、どうやったら良い企業からBTL企業にできるか分からない」という批判を受けたらしい。その批判を受けたのが本書。だから、今回、原作タイトルは、”Good to Great”ということで、普通レベルの優良企業(Good company)が、どうやったら結果偉大な企業(great company)になったのか、ということがテーマで、11社が分析対象になっている。
で、二つの本の関係だが、結果的に、”Build to Last”の方こそ”Good to Great”の続編のようなものだと著者は言っている。”Build to Last”で紹介した企業は、創業者が”Good to Great”の方法をとっていたのである。”Build to Last”で紹介した企業は、その上で、greatnessを維持できているという意味で卓越した企業だったのである。そして、いかにしてこれを維持しているかを分析しているのが、”Build to Last”の分析内容だった、と後になって振り返ると分かった、ということ。そして、”Good to Great”の方法も、”Build to Last”の方法も、かなり重なる部分がある、ということが分かった、と。
で、本書の分析の結果わかったことをメモ。
1.第五水準のリーダーシップ:
“Good to Great”企業では、カリスマCEOを社外から招いたりはしない。”Good to Great”企業のトップは謙虚で、派手な生活はしない。しかし確固たる意思を持っている。
2.最初に人を選び、その後に目標を選ぶ:
「まずは目標があって、その目標に共鳴する人を選ぶ」のではない。「まずは適切な人を選び、その後に目標を設定する」のである。「適切な人」とは、”Build to Last”でいうところの「基本理念(ビジョン)」が共有できている人のことだと思う。
3.厳しい現実を直視する:
現実、真実、統計データを客観的にちゃんと見る。厳しい現実も直視する。その上で、勝利の確信を失わない。根拠なき自信は持たない。
4.針鼠の概念:
次の三つの円の交わる部分に固執する。「世界一になれる分野はどこか?」「情熱を燃やせる分野はどこか?」「その分野は儲かるか?」
5.規律の文化:
三つの円の交わる部分にとどまれるような規律を持つ。
6.促進剤としての技術:
新しい技術にとびついたりしない。振り回されない。三つの円の交わるところと関係なければ、どんなに世間が騒ぐ新技術もスルー。
7.弾み車と悪循環
“Good to Great”企業では、「このときが転換点だった」という時期は特に無い。重たい大きい車輪があって、それを人手で推し進める場面を創造しよう。ゆっくりと回転して加速度的にスピードがあがっていく車輪。この車輪、どの点で「急に勢いづいた」のだろうか。そんな問い自体が無意味で、車輪を押し続けたことが重要。はたからみたら「ある時」を境に急にスピードが上がったかもしれない。「あの時、どんなマジックを使ったんだ」と聞くのはナンセンスということ。
・・・という感じ。特に、「三つの円」の考え方は気に入った。
あと、「どうしてgreatを目指さないといけないのだろう」という質問が出るとしたら、たぶん、あたなはその仕事を十分好きではないのだろう、というのもするどい指摘。本当に情熱を燃やしているものの場合、そんな質問すらでない。大好きなサッカーをやってる子供が、ワールドカップで優勝したい、と素朴に思うのと同じことで、本当に好きな仕事をやっている場合は、どうしてもgreatになりたい、と感じるものだと思う。
とりあえず、分析の方法とか細かいところは、突っ込みだしたらきっとキリがないと思うんだけど(詳細は書いてないからわからんが、なんらかの統計分析をしているはずだし)、とにかく前作と同じく「わくわくして楽しい気持ちになった。」
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