これ、良書。確率論、統計学などの一般向け啓蒙書といった感じ。この分野にあまり馴染みのない人が最初に読む一冊として適している。「大学で統計学勉強させられたけど、あれってなんの役に立つの」って人にもおすすめ。
目次
1 世界は不確実性に満ちている(ツキに法則ってあるの?
確率法則ってなに?
確率だって使いよう)
2 データの眺め方ひとつで世界は変わる(統計も見方ひとつでとっても面白い
標準偏差で統計の極意をつかむ
確率の日常感覚はゆがんでいる)
3 確率と意思決定(ビジネスに役立つベイズ推定
人は、観測できない世界を見落とす
真似することには合理性がある)
不確実性下における選択の正しさとは何か
数式やグラフもちょっとだけ登場するけど、基本的に文章のみで確率論・統計学を説明しようとしている。確率には主観的な捉え方と客観的な捉え方の二つがあるという哲学的な話から、サイコロを振って円周率を推定する方法(モンテカルロ法)のような知的におもしろい話も紹介されている。さらにデータを注意深く見る事で、おもわず「へぇ」と言ってしまいそうなトリビアも出てくる。(たとえばスポーツ選手は3月生まれが少ないという発見や、誕生月の一ヶ月前より一ヵ月後のほうが死亡する割合が多いという事実が、人間はおめでたいイベントまで気力で生きながらえることができることを示唆している、など。)
スパムフィルターなんかで使われるなど、最近ビジネスでも重宝されているベイズ推定についても触れている。ベイズ統計学は古典的統計学と根本的に考え方が違うのだが、本書の解説は非常に分かりやすい。というか、数式をほとんどつかわずにこれだけ簡潔にベイズについて説明できているのは、素晴らしい。
(補足)
著者の小島寛之先生は、数学科出身の数理経済学者らしく、経済学にも話題がすこし振られている(参照)。
(補足2)
終章「不確実性下における選択の正しさとは何か」はたった数ページだけど、読み応えがあった。不確実性における「合理的な選択」が必ずしも「正しい選択」とは限らないよ、というお話。ここで「合理的」とは期待利得最大化という意味で、「正しい」の定義は、曖昧にされているのだが、だからこそ、読者それぞれの考える「正しさ」とは何ですか?と問われているような印象を受けた。
コメント
[…] 終わってみれば、あのときああすればよかった、とか、もっと早く、厳しい措置をとっておけば、と、あらゆる場面で人々は口にします。完璧はないのだから、ベストを尽くしたと思えるような、後悔を最小化するためのプロジェクト管理をするべきだと僕は思います。データサイエンティストの言葉で言えば、ベイズ統計学的な意思決定をするべき、ということでしょうか。ベイズ統計学について関心のある人は『使える!確率的思考』がすごくわかりやすいです。すこし古い本ですが、特に「第3章 ビジネスに役立つベイズ推定」だけでも読むととっても勉強になります。 […]