『スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学』の読書感想

うーん,正直どう感想を述べたらよいのかわからない.たぶん僕はこの本の想定読者層に入ってないから.

経済学の院生として述べると,著者の吉本佳生さんの名前も聞いたことないし,研究業績を見ても,海外学術誌に業績(英語論文)が一本も無い.なので,研究者としての著者は残念ながら一流とは言えない.が,本(日本語)はたくさん書いているようで,経済学の研究者というよりも,経済学の啓蒙者という感じか.そういう観点から本書を眺めると,経済学のことをまったく知らない一般人(主婦や高校生など)が主なターゲットなのだろう.タイトルもそれを意識してか,上手につけられている.

で,内容は,「コストと言っても,お金だけじゃなくって手間隙(=労力&時間)とかもあるんだよ」という(当たり前の)ことを何回も繰り返し述べている,という感じか.このことが軸にあって,その他の経済学の重要概念(比較優位,機会費用,規模の経済,範囲の経済,価格差別etc)がちらほら紹介される,という感じ.

スタバの話は,たくさんある章のうち,一つの章で扱われているに過ぎない.で,タイトルの意味するところは「スタバからしたらグランデ売ったほうがmarginal profitが大きいから儲けられるし,消費者からしたらコーヒーの単位当たり価格が安く買えるからグランデ買ったほうがお徳感が大きいね」ってことでしかない.

ある程度経済学を知っている人間は読んでも時間の無駄だと思う.しかし,日々の生活に直接関係あるトピックばかりを取り上げ,簡単な経済学を使って分析している本書を読んで「経済学って本来,もっと身近にあるべきものなんだよな」と思ってしまった.院生やってると数式と戯れているだけで現実経済から遠ざかってしまうので,この点は現実経済に目をちゃんと向けている本書はなかなか偉いなとも思う.それに,著者の洞察はあたり前のことばかりだけど,たまにけっこう深いなと思わされることもあった.

高校3年生の春休み(=大学入学直前)の自分に読ませたい.

サブプライム;Let’s see what the smart guys are doing…

The Subprime Primer

タイトルがお上手ね.スライド8「Let’s see what the smart guys are doing…」あたりを読んで,smat guysに騙されないよう気をつけよう♪と思いました.いや,ほんとに.自分の資産は自分で守るのだ.

あ,ちなみにこれはマンキューのブログで紹介されてた.MankiwやらCampbellやらの講義を受けられて,ここの学生はほんとに幸せね...

(参考)
『サブプライム問題について少し分かってきた気がする』

サブプライム問題について少し分かってきた気がする

『サブプライム問題』ってエントリーを書いてから,また少し自分で勉強した.

1)アメリカで資金はジャブジャブあって,貸付先を探していた.
2)貸付先の一環として,サブプライムローンに資金が行った.
3)住宅価格が上昇局面では,サブプライムローン債務者が返済できなくなっても,担保となってる住宅を売れば返済できた.
4)返済できるどころが,売買益すら得られることが分かった.
5)サブプライムローンはその定義上,通常ローンよりも金利が高い(=貸し付ける方からすると利回りが高く,おいしい貸付先ということ).にも関わらず,2),3)のような状況だったので,貸し倒れリスクは低いように見えた.
6)調子に乗って,サブプライムローンをどんどん貸し付けた.かなり強引な手法で低所得者層に,サブプライムローンを買わせた.
7)証券化すればリスク分散できるので,証券化した.
8)証券化したものを,さらに繰り返し証券化したりした.その結果,米格付け機関(ムーディーズなど)が、サブプライムローンを組み込んだ住宅ローン担保証券を正しく評価できない状態となった(実力よりも高く格付けしていたということ).
9)この証券化された住宅ローン担保証券を誰が保有したかというと,商業銀行や投資銀行などの金融機関.証券化された資産は安全なので(特に繰り返し証券化されたことによって,サブプライムローンが組み込まれていることが分かりにくくなって安全だとカンチガイしたってこと.実際,8)でも書いたとおり,米格付け機関も安全だとカンチガイしてしまったわけで),安全資産を持ちたいという気持ちの強いアメリカの商業銀行なんかは,住宅ローン担保証券に手を出してしまったというわけ.
10)さて,住宅価格が上昇している局面では問題はないことに注意しよう.なぜならば,返済が滞るサブプライム債務者がほとんど出現しないためである.
11)ところが,住宅価格上昇率が2006年に入って以降急速に鈍化!ここから問題が表面化する!
12)サブプライムローン債務者の返済が滞るようになる.住宅ローン担保証券が紙くずになったりするわけ.住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行は損失を計上するようになる.
13)金融機関は,貸出基準をきつくするので,追加融資を切望するサブプライムローン債務者のもとに資金は回ってこない.
14)サブプライムローン債務者の返済が滞りがさらに増える.より多くの住宅ローン担保証券が紙くずになったりするわけ.住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行はさらに損失を計上するようになる.
15) 12)~14)をループし,結局,住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行は莫大な損失を計上してしまう.(ゴールドマンサックス以外,軒並み損失を計上したってニュースや,Citiにアラブが出資したってニュースや,メリルリンチにみずほが12億ドル(約1300億円)出資したってニュースが記憶に新しい.)
16)金融不安発生!
17)株安,ドル安などになり,アメリカ経済先行きが怪しくなってきており,さらに世界株安などを引き起こし,世界経済を不安に陥れている ← 今ここ

1)のところで,どこから資金がジャブジャブ出てきたのか,ということを考えてみたんですが....「各国中央銀行が資金を供給しまくった」と下の参考にあげたIMFのページにはあったんですが.僕は,日銀の低金利や量的緩和みたいな金融政策によって,金がジャブジャブアメリカに流れた,という影響も大きいのかな,と思う.日米間の金利格差がある上に,量的緩和でジャブジャブ資金を垂れ流したので,日本からアメリカに資金がジャブジャブ流れていったのかな,ということです.

某外資系金融機関に勤める人も,「2008年は,過去数十年の中で一番つらい年の一つになる」と言っていたな.大変ですね.自分とその家族の資産は自分で守るために,これからも世界経済のお勉強はちゃんと続けよう.

なんかコメントあったら,適宜ツッコミ希望.

(参考)今回さんこうにしたページをいくつか.

経済,金融,国際情勢,ぜんぜんわかりません,って人は,以下を見るとよいでしょう.漫画のようによめて,それなりに正しいことが書いてあると思います.

やる夫で学ぶサブプライム問題

あと,ウィキペィアの記述が,やっぱりけっこう参考になります.

サブプライムローン@ウィキペディア

それから,これは以前のコメントで知ったやつですが,けっこう参考になりました.

Lessons from Subprime Turbulence @ IMFSurvey Magazine: IMF Research

特に,

Investors have placed excessive trust in rating agencies’ approach to
structured credit. The ratings methodology for corporate credit risk is
fundamentally different from that used for structured credit and yet
the ratings that result are placed on the same scale, implying similar
potential losses. To avoid future confusion, ratings for the different
types of obligation should be clearly distinguished and investors
should never just rely on ratings to determine investment policy.

というところが,なかなか鋭い指摘だと思った.structured creditとは,マクロリスクのことで,corporate credit risk や個別のサブプライムローンのようなミクロリスクとは,分離してかんがえないといけない,ということだろう.格付け機関や,住宅ローン担保証券を保有していた米の金融機関が,サブプライムローンが証券化されて組み込まれた住宅ローン担保証券というstructured creditを正しく評価できなかった,ってことだろう.

また株下げてるけど

もうこのエントリー書いてから1年近く経つのか(去年の株安のニュースは2月28日のことだった).最近また株下げているけど,ちょっと頭が整理されていない状態なので,自分自身用のメモとしていくつか箇条書き.時間もないのでデータを探したりもしていないので,変なことかいてたらツッコミ希望.

1)円高→日本株安

円高→株安という経路があること自体,よくわかりません.日本は輸出国なので,円高になると輸出してる企業の業績が悪化して,株安になる,というのがいちおうの説明ですが,日経平均のような株式指数がどの程度,為替市場の影響をうけるものなのか,よくわかりません.個別の企業が影響を受けるのはよくわかりますが.例えば以下にあるように,トヨタの例.

外国為替市場では円相場が一時、1ドル=105円台後半まで上昇し、トヨタは下落率が7%を超え、2営業日ぶりに昨年来安値を更新した。
ソース:日経平均、終値752円安の1万2573円・2年4カ月ぶり安値 @ NIKKEI NET

2)最近の日本の株安の原因はなに?

原因として考えられる仮説はたくさんあります.

  • 1)で述べたとおり,円高→株安という経路が強いという仮説.
  • 日銀の追加利上げ観測があって,株安を誘発している(債券保有比率を高め投資家がポートフォリオを再構成するから),という仮説.さらに日銀の追加利上げ観測は,円高要因ともなるわけで(内外金利差を小さくするから),現状の円高はこれによって引き起こされている面があるんじゃないか,ということまでいえそうかな.
  • サブプライム問題がやばすぎるという仮説.しかしこれもよくわからんのだが,サブプライムの端を発する世界同時株安が,「根拠なき熱狂」なのか,「経済の実態を反映した結果」なのか,よくわからない.サブプライムって実際,どの程度日本の株式市場に影響をもっているんだろう?(心理的な影響じゃなくって,実物面で)
  • その他のいろいろな不安要素があって,根拠なく下落してるだけ,という仮説.サブプライムも含め,原油高騰,与党も野党も頼りない現状,年金不安や医療不安だなんだと,いろいろ心配ごとが多いから,なんとなくみんなリスク回避的になっているのかな,ということ.
  • 日本の経済の実態を反映しているという仮説.実態とはなに,ということがあるが,日本の企業の業績なり将来の合理的な見通しが,本当に悪いから日本は株安になってる,という仮説.

3)じゃ,円高はなんでおこってるの?

  • 2)の最初の二つ目の項目で書いたように,日銀の追加利上げ観測があって,円高に進んでるって仮説.
  • 円が高いというより,ドルが勝手に転落しているって仮説.
  • 日本の企業のファンダメンタルが高くってそうなっているよって仮説.これは2)の4つ目の項目の反するが.

4)為替と株価の関係ってどうなってんの?

円安→株高→円高→株安→円安→・・・・

ってなってるんだろうか?相関関係と因果関係を混同してしまいたい誘惑に勝てない.

ああわからーん.もっと国際経済学,国際金融あたりを勉強しときゃよかったかな....まぁどうせ正しく理解してる人なんてほとんどいないからいいか.

 

自転車修理屋さんはなぜつぶれないか

三田キャンパスの東門から地下鉄三田駅にいく途中、自転車修理屋さんがある。あまり目立たないけどファミマの隣あたりにある。慶應の学生なら分かる人もいるんじゃないか。

で、ずっとあれを眺めながら登下校していて、あのお店で自転車の修理をしてもらっている一般客を見たことがほとんどない。一度もないかも。自分自身、自転車が壊れても修理店にいったことがない。

で、疑問。なんでつぶれないの?

某先生と話をしていて、なぜか分かった。きっと大口の固定客がいるんだ。郵便局とか新聞配達店とか、自転車を恒常的に使うお店はすべて、あの小さな自転車修理屋さんで請け負っているんじゃないか、と。別にそういう契約があるわけではないんだろうが。おそらく一つの自転車修理屋があったら、一定の半径Rキロの円の中には、他の自転車修理屋はないに違いない。郵便局とか新聞配達店とかの分布状況と自転車の壊れる頻度、一回あたりの修理料金など、いくつかを仮定すれば、「一定の半径Rキロ」を推定することが可能だろう。逆に、実地調査で「一定の半径Rキロ」がわかれば、逆算して自転車の壊れる頻度を推定することも可能だろう。というわけで、これはフェルミ推定の練習問題としておもしろそうですね。

仮に「一定の半径Rキロ」内に新規参入したとしても、あのお店が昔馴染みの店で、地元で顔の知られらた主人がやっていたら、固定客を奪うのは相当難しいんだろうな。きっとそういう絶妙な均衡が成立するように、「一定の半径Rキロ」が決まっているに違いない。

そしてどうせ修理するスペースが必要なのだから、常時お店を一般客向けにも開けておき、一般客が入ってきたらラッキー、という感じで営業しているんだろう。

今回のエントリーのタイトルは、以下の本のパクリです。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

上限金利規制を巡る論争:大竹文雄 vs 池尾 和人

上限金利規制を巡る論争。直感的には、「法外な金利を認めるなんてよくない!法律で規制すべき!」という意見が人の気持ちに強く訴えかける。が、経済学的には、「規制すると、非常に高いリスクのある借り手に資金が供給されなくなるから、金利規制はよくない」ということが言える。

さらにグレーゾーン金利がよくない経済学的な理由は、リスクの程度に適切に対応した金利で借り入れができなくなるから。上限金利を法律で規制することで、その上限に集中してしまうということ。(某教授の受け売り)。

週刊東洋経済で大竹文雄先生と池尾和人先生のお二人が議論しているのは知ってはいたが(おれは読んでない)、なんか、大竹先生のブログのコメント欄でかなり議論を戦わせている模様。

興味がある方は以下を参照。

http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2006/10/post_f3e4.html

サブプライム問題

これ、今までスルーしてきたんですが、それは何がなんだかよくわかっていなかったからです。というかいまだによく分かっていません。分かる方がいたら、少し知恵を借りたいところなんですが、これって一体なんなんでしょう。このままだといつまでたってもこの問題を考える気にならなそうなので、とりあえずブログで書いてしまおうかと。

気になる記事は以下。

Wake up to the dangers of a deepening crisis by Lawrence Summers

ラリー・サマーズによれば、米国はこれから景気後退局面に入るとのこと。サブプライム問題でゆれた8月に比べて、アメリカ経済の現状は遥かにやばくなっていると。そんなに深刻なんですかね、これ。そういえば今朝の円ドルレートみてびっくらこいた。108円とか。あれ、いつのまにこんなにドル安くなってるんだろう。

そしてついでに言うと、日経平均いつのまにこんなに安くなってんの。11月にはいってから急降下。1万5000割った日もあるじゃーん。ところで、今年の2月の株安の時には、ドイツの武者さんは、年末には2万2000くらいいくと強気予想してたな(参照)。ネット上では、「ということは、今年は下げだなw」という論調が多かった記憶があるが、その通りになってきているんでしょうか。

10月半ばくらいに、日経平均の収益率をGARCH推定したときは、直近時期はそれほど日経平均はボラタイルにでていなかったような気がする。あと、Ito Sugiyama論文の手法で市場効率性の指標を計測してみたが、やはり直近時期に別に異常な水準にはなかった。

話は逸れましたが。。。そう、サブプライム。どう捉えたらいいの、これ。

某教授がサブプイムについて、(1)平蔵が政権から去り日本の銀行がキャリートレードするようになった(2)米国の証券会社がマクロリスクとミクロリスクの違いを区別できなかった(3)米国の制度的問題、とまとめていたのだが。

もう少し自分なりに理解したいんだが、うー、わからん。

”Freakonomics Intl Pb: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything”の読書感想

Freakonomics Intl Pb: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything Freakonomics Intl Pb: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything
Steven D. Levitt Stephen J. Dubner

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はっきりいって、伝統的な経済学者からすれば、「こんなものは経済学じゃない」と思うだろうし、経済学のことを知らない素人からすれば、「え?経済学ってこんなこと学ぶ学問なの?」と思うような内容だ。でも面白い。経済学を勉強している人も、そうでない人も楽しめるはず。
いくつかの「conventional wisdom(社会通念)」が本当に正しいか、データに基づいて実証している。データはウソをつかないというのが著者のスタンスらしく、僕はもうこの著者の流儀に心酔してしまった。現実のデータに目を向けて注意深く分析した結果が、あまりに「ヤバイ」ので、邦訳版は『ヤバイ経済学』と訳されている。
例えば「アメリカで90年代に犯罪率が急落したのは、経済が回復したからでも、警察の犯罪捜査能力が上がったからでもない。中絶を合法化したことで、潜在的な犯罪者がそもそもこの世に生まれなくなったからである!(中絶をするのは、低所得、十代の若者など、育児能力がない人に多く、そういう恵まれない子供は将来犯罪者になる可能性がとても高いことに触れている)」みたいなことが書かれているから。
もうひとつ例を挙げると、相撲の八百長の存在も立証している。まず著者は7勝7敗で千秋楽を迎えた力士がすでに8勝を確保している力士と勝負すると、「統計的に見て勝ちすぎる」ことを示す。さらに、この同じ二人の力士がその次に(勝ち越し、負け越しに関係ない場面で)対戦すると、7勝7敗だったほうが「統計的に見て負けすぎる」ことを指摘する。つまり、星の借り貸しがあることを統計的に洗い出している。
伝統的な経済学者というのは、データと向き合わず、紙と鉛筆と数学モデルで世の中のことが分かった気になれる幸せな人たちの総称なんだが、この本の著者はあまりにもそういう伝統的な経済学者とはかけ離れている。
とは言え、著者のLevittは、Harvard卒、MITでPhD、Chicagoの教授、ジョン・ベイツ・クラーク賞(ノーベル賞より難しいといわれることもある経済学の栄誉ある賞)受賞、という学界でも高いポジションにいる経済学者。Levittの影響で、これからの経済学はようやく「現実に目を向ける」という方向に向かうのかもしれない。なんせLevittは、たとえば、親が子供の将来にどういう影響をもつか分析する話題で、

we are less pesuaded by parenting theory than by what the data have to say. (我々は、子育てに関する理論よりもデータを信頼している。)

とはっきり書いているのだから(pp.157)。

株安について

株安ニュースを見て,中身が完全に対立する二つのレポートをテキトーに書いてみる.
Bull(強気)の立場
今朝起きたら,ダウ平均が下げている,というニュースが飛び込んできた.その余波は日本にも来るだろうとみんな考えたはずだが,実際そのとおりになった.今日の日経平均の下落が,「みんなが思ったことは実現する」,という心理的要因に過ぎないのか,あるいは,実際にファンダメンタルが下げているのかは明白.前者に過ぎない.これは市場参加者の根拠なき弱気でしかない.根拠はないのだ.その証拠に,為替相場は,世界同時株安を受けて円高に動いた.これは米国と比べたときの相対的な日本の先行き期待感を示している.よって,この下げは一時的で,むしろいまこそ「買い」だ.すぐに回復する.
Bear(弱気)の立場
今朝起きたら,ダウ平均が下げている,というニュースが飛び込んできた.グローバリゼーションのご時世,世界中のマーケットは繋がっている.ダウ平均に続き,日経平均株価も連鎖的に下げた.ただしこれはきっかけでしかない.先日の日銀の利上げニュースおよび追加的利上げ観測がその本質である.これによって債券などの株式以外の証券の相対的な魅力が高まるだけでなく,企業の投資コスト増から来る景気先行き不安感から,潤沢な資金は株式市場から引き上げつつある.さらに日銀および安倍政権に対してその能力の欠如を不安視する声が高まることが予測されることから,この下げはしばらく続くものと思われ,いまこそ「売り」だ.
テキトーに書いたつもりだけど,それなりに説得的な気もするが,どうでしょう.ところで,今朝,テレビ東京でドイツ証券の武者さんが株安についてコメントしていた.強気の予想だった.今年の終わりには,日経平均は,2万2000円くらいいくって予想だった.ネットでこの人の評判を調べると,「この人は悲観論者」「この人の分析は当たらない」という感じの意見多数.悲観論者が強気ということは,今年は下げるのであろうか?
http://onimanju.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_f52e.html
http://blog.livedoor.jp/ken122876/archives/50211571.html
http://live9.2ch.net/test/read.cgi/stock/1085824538/
http://www.asyura2.com/2002/hasan13/msg/485.html
で,実際に武者さんのコメントが書かれている記事がこれ.
http://www.nikkeibp.co.jp/style/life/money/savvy/061016_musha1/

もう少しくわしく解説しましょう。2000年代、世界経済を牽引(けんいん)する先進国企業は非常に恵まれた環境にあります。この環境をつくり出しているのが、低い労働コストとインターネット革命。インドや中国など新興国の台頭により、先進国企業は、優秀な労働力を安価で利用できるようになりました。これに加えてインターネットの普及が、労働コストと資本コストを抑えることに大きく寄与しています。生産性の向上に牽引された経済成長が世界的に持続している状態です。

経済先行き期待感の根拠を,部分的にではあれインターネット革命に帰するのは,慎重に考えたほうがよいと思う.インターネットの登場で,これまでには考えられ無かったくらい大幅に仕事の効率性があがって経済が成長する,という考え方は,なるほど尤もらしい.でも,本当かな?
これまで,人類はすごい発明はいっぱいあった.鉄道,自動車,電話,ファックスなどなど,あげればきりがない.いままでのこれらのすごい発明に比べて,インターネット革命がどの程度すごい発明かというと,いくらネットがすごいとは言え,「それほど突出したものではない」のではないだろうか.そうであれば,少なくとも,「過去に経験したことがないくらいの経済成長がインターネットによって可能,とは考えられない」というべきだと思う.
とは言え,ネットの進展と,経済成長を結び付けたいのは分かる.ネット大好きな僕も,結び付けたい.けど,実際にどの程度寄与しているのかは,慎重になったほうがいいと思う.

休日明けは株価は動きやすい?

株価などの金融資産価格の変動を説明するとき,経済学者はある種の情報を考える.ある情報があったとする.この情報を使って,株で大儲けすることが可能だとしよう.そんな情報はあるだろうか?もしそんな情報があるとすれば,その情報を使って,とっくに他の誰かが大儲けしているはずである.しかし現実に誰もまだこの情報をつかって大儲けしていないということは,この情報を使って株で大儲けできないことを示しているのだ,と経済学者は考える.
この経済学者の考え方を巡って,有名なジョークがある.

道端に1万円札が落ちていた.ある学生がそれを拾おうとすると,経済学の教授は言った.『やめたまえ,もしそれが本物ならば,とっくに誰かが拾っているはずだ.それは偽者だよ』.

経済学者の考え方が正しいとすれば,必死に世の中のいろいろな情報をつかってファンダメンタル分析なりテクニカル分析なりを行っている証券アナリストと呼ばれる金融機関のバックオフィスで働く頭脳を否定することになる.だから,これは金融実務家が経済学者を笑うときによく言われるジョークらしい.
現実に,そんな情報がそこらへんに落ちているのだろうか?この問題を巡って,経済学者たちは大量に論文を書いてきた.しかし結論は出ないまま,みんな飽きちゃった,という感じ.学者も人間なので,新しい面白い研究テーマが出てくると,古い研究テーマの結論は出さないまま,そちらへ飛びつくものだ.
さて,僕の考えを書くと,「そんな情報はほとんどない.でも,たまに落ちている」という感じか.どれくらいの頻度でそんな情報は落ちているのだろう?きっと,金融実務家が思うよりははるかにレアで,学者が思うよりははるかにたくさん落ちている,というのが僕の考え方.
カンタンな話だ.道端に1万円はまず間違いなく落ちていないが,1円玉,5円玉はよく落ちている.10円玉もよく見かける.50円玉はどうだろう?100円玉は?500円玉ともなると,落ちていることはほとんどない.
10円玉を拾うコスト(=株の場合,売買コスト)まで考えると,もうほっとんどそんなおいしい話は落ちていない,というのが現実だと思う.
10円玉を少し拾ったって小銭を稼ぐ程度だが,塵も積もれば山となる,ということで,大量に拾いまくって大儲けしたのがLTCMだったと僕は考えている.ここら辺のことは,過去のエントリーでも書いた.
そんな情報は落ちていないのが現実,ということになる.そういう市場のことをよく,「市場はあらゆる情報を織り込み済み」とか言う.それならば,情報量が多ければ,株価変動も多いはずだ.そして休日を挟んだほうが溜まる情報は,平日よりも多いはずだから,休日明けのほうが,株価変動は大きいのではないだろか?また,休日を挟めば,その間に得られた情報は月曜日の朝まで,株価に反映されないから,月曜の朝の最初の数秒,市場にゆがみが訪れて,儲けることが出来るのではないだろうか?休日に得たある情報があって,その情報を使えば株で儲けられるのだが,市場は開いていないから,月曜の朝をみんなが待っている.獲物を静かに狙うサバンナの猛獣のようなたくさんの投資家たちが,日曜の夜に息を潜めているのが想像できる.
現実には,月曜の朝を狙ったとしても簡単には儲けられないだろう.同じことを考えている人がたくさんいるわけだから,あっという間に株価はその「ある情報」を織り込んでしまうだろう.結局,一人当たりの儲けはたいしたことはない,という状況になってしまうだろう.利ざやは常に有限で,こういう獲物を狙う猛獣の数はたくさんいるから,一人当たりの儲けは,どうがんばってもたいしたことなくなってしまう.
さて,長々と書いたが,休日明けの株価変動は,平日に比べて,大きいのだろうか?休日が株価変動(ボラティリティ)に与える影響を研究した論文はけっこうある.あまり詳しくは知らないけど,本当にこういう研究をしたければ,ティックデータ(秒単位の株価データ)を使うべきなのだろう.日次データ「ごとき」でその特性をあらわにしてしまうほど,株式市場はヤワはないのでは,と思っている.
今年になってからの,日経平均の日次終値のグラフを描いておこう.休日のところで,折れ線グラフ途切れている.
これを目視する限り,休日明けには株価変動が大きい,とかそんなことは言え無さそうじゃない?「日次データごときで俺の分析しようなんて甘いんだよ,学者先生!」という株式市場の声が聞こえそうだ.
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