『日本再興戦略』の読書感想

これも相当面白い。

目次は下記の通り。

第1章 欧米とは何か

第2章 日本とは何か

第3章 テクノロジーは世界をどう変えるか

第4章 日本再興のグランドデザイン

第5章 政治(国防・外交・民主主義・リーダー)

第6章 教育

第7章 会社・仕事・コミュニティ

おわりに:日本再興は教育から始まる

一番面白い(全部面白いけど)のは、「第4章 日本再興のデザイン」。少子高齢化と人口減少という社会変化は一般的にはネガティブに捉えらがちだけど、著者は「チャンス」と説く。その理由は3つ。

理由1=機械化、省力化に対する打ちこわし運動が起きない。

理由2=少子高齢化への対応を世界に先駆けてやれるので、少し遅れて少子高齢化が起こる中国などに輸出できる。

理由3=子供は少なくて大人が増えるので、見方を変えれば、子供一人にたいして複数の大人が、たくさんの教育コストをかけてあげることが出来る。

理由1の根本を支えるのは、機械化・省力化を推進するテクノロジーの発展。「ラッダイト運動」なんて発生しない、だって、人手不足で困っているわけだから、むしろテクノロジーの発展は、むしろ社会から大歓迎されるから心配ない、と。AIとかロボットとかによって、いろいろな業務にオートメーション化が進むということに対して、社会の反発はない、と。

無人のコンビニとか、自動運転とか、顔認証による改札の「(文字通り)顔パス」とか、あちこちで無人化、省力化が進むのは、もう自然の流れ。テクノロジーが発展すれば、人手不足が解消されるだけでなく、余暇時間を増やし労働時間を減らし、より満足感の高くて幸福な社会が実現できるんじゃなかろうか?というところまで著者は踏み込んでいる。

脱線するが、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 』によれば欧米で資本主義が発達した背景には、宗教改革でプロテスタントが「予定説」を説いた結果、「神様にあらかじめ決められた職業をまじめにまっとうすることで、自分は天国にいけるとあらかじめ決められた人間なのであるとの確信を強めることができるとプロテスタント信者が考えたから」だけれど、AIやロボットで労働を省力化し、余暇時間を増やしてのんびりするなんて発想、プロテスタントに受け入れられるのだろうか?

日本はプロテスタントが少ないので、これがネックにはなりえないと思うけれど。(ちなみに、杉山家はプロテスタントなんだな、実は。)

話をもとに戻すと、少子高齢化や人口減少という空前の減少が日本にこれからやってくるのは、今後数十年のことを考えると大チャンスだ、と。ちょうどテクノロジーがありえない速度で発展しているので、AIとロボットで省力化しまくって、人手不足という問題を解消しよう、と。ラッダイト運動は起きない、むしろ歓迎されるぞ、と。

そして少子高齢化という社会現象に取り組まざるを得なくなった日本がテクノロジーでソリューションを見つけたら、それと海外に売りまくれるという話だが、世界各国の人口推移の予想を調べてみると、下記の通り。

世界の人口推計(人口予測)と人口ランキングの推移 - ファイナンシャルスター

中国やロシアなんかは2050年まで、ほぼ人口が変わらないらしい。ということは、日本に遅れて確実に少子高齢化が進むのだろう。確かに、そこに日本の成功ビジネスモデルを輸出するというのは有り得そう。「単にロボットを輸出する」とかだけではなく、「ロボットやAIをつかったコンサルを売る、ついでに装置システムも売る」みたいな感じで。

あと、教育について今後の人材が必要なことは、著者が主張するには、下記2つとのこと。

  1. ポートフォーリオマネジメント能力=一つの職業だけで一生を終えるのではなく、職業のポートフォーリオを組む必要があるということ。
  2. 金融的投資能力=何に「張る」かのセンスを磨くこと。

前者については、日本人は古来から百姓ばっかりだったが、百姓とは、農耕社会で100コの細かい別々の仕事をしていた、という意味にかけて、「これからの日本人はみんな百姓になる」と独特の表現をつかっている。1コの仕事じゃないのね100コなのね。そして百姓は仕事(ワーク)がストレスなく生活と一致しているから、仕事のオンとオフを切り分ける必要もない、そういう(ワークライフバランスならぬ)ワークアズライフな人生が幸せな状態だ、と説いている。

 

僕自身は、2048年を意識して日々生活しているのだけれど、この本を読んで、またいろいろなことを感じた。

2048年。僕は65歳で社長を退き、会社は100周年。日本の人口は1億人をちょうど割る。子供は37歳(長男)、35歳(次男)、33歳(長女)、31歳(三男)。同時通訳AIが当然のように安価に使われている時代だからこそ、2018年時点の知識人が無駄にフランス語を喋れたみたいに、子供たちは英語くらいは出来る。同時翻訳に頼らないと会話ができないようだと、国際社会では逆に信用をなくすから、英語くらいは出来る必要がある。身体的弱点を補完してくれるロボットスーツもみんな着ているので、逆に身体を鍛えることが一部では流行っている。健康長寿社会になっていて、保険会社も日々の個人の生活データから、「今月の保険料」をtime-varyingかつ個人別に値付けして販売している。平均寿命は100歳を軽く超えていて、僕の両親は95歳でまだまだ健康に生活できている。親からも65歳で引退するなんて何考えてるの、と言われる。でも多様な人生があっていいんじゃないの、と言って、65歳で引退し、余暇時間を楽しむ。プロテスタント的に、勤勉に労働しないといけないとかgod father(90歳超え)に言われる。

こんな感じでしょうか。あぁ、東アジアのパワーバランスはどうなってるんだろう。食生活とかは、どう変化しているのだろう。どういうエンターテイメントが出てきているのだろう。想像するだけでワクワクする時代に生きられて、ほんと、ラッキー。

 

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