『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』の読書感想

金融日記の人の本。効率的市場仮説が主なテーマの、非常にいい本。市場は大変に効率的だが、完全に効率的ではなく、仮説があってるか間違っているかを議論することが間違いで、「どの程度」効率的か議論すべき、という考えらしい。僕の考え方に非常に近い。「この仮説は白黒つけようとするのは意味ないよ、市場の効率性は時変する」、ってのが、Ito and Sugiyama(2009)の主張なので。

一応、本書の主張についてざっくりと、僕なりの言葉で書いてみる。金融のプロ(投資銀行とか証券会社とかヘッジファンドとか)は、日夜血眼になって、儲けるチャンスを探している。でもそんなチャンスはめったになくって、たまにあっても、すぐにチャンスは誰かに拾われ、消滅してしまう。結果、現実の資本市場は、非常に効率的になる。だから、素人が勝つなんてかなり無理な話。儲かったとすれば、それは運がいいだけ。サルにダーツ投げさせて運用しても、サルがたくさんいれば勝ち続けるサルが登場するが、それと同じこと。ちょっと儲かったからといって、調子に乗るな。だから、インデックス・ファンドとかに投資するのがいいでしょう。投資信託とかも、インデックス・ファンドでも、サルのダーツ投げでも、市場は効率的なのだから、どれもどんぐりの背比べ。ただ、投資信託だとプロが高収入を要求する分、手数料をたくさんとられる。だから、インデックス・ファンドに平均すると負けてしまう。プロのトレーダーに支払う給料というコストの分だけ、かならず市場に負ける。平均すると。だから、やっぱりインデックス・ファンドを買いましょう。ただ、もし仮にみんなが同じように思ってインデックス・ファンドばかりを買ったらどうなるか?投資信託を買う人がいなくなって、日夜血眼になって儲けるチャンスを探している金融のプロが、血眼にならなくなれば、市場は効率的ではなくなっていく。人は過剰に自信を持つので、投資信託を買うなり自分でいろいろと分析してなんとか市場を出し抜こうとするなりするので、金融のプロは血眼になって働き、おかげで市場は効率的になり、それを知り冷静にインデックス・ファンドを買う人が恩恵を受けているのです。

効率的市場仮説をめぐっては、有名どころではシラー(“Irrational Exuberance”)が攻撃している。他方、擁護の立場ではマルキール(『ウォール街のランダム・ウォーカー』)が有名。シラー本もマルキール本もかなり有名だが、中身が濃くて分厚い。じゃぁ、もっと軽くて読みやすい本は?となれば、効率的市場仮説の擁護の立場の本としては、本書をお薦めする。攻撃の立場としては、『金持ち父さん貧乏父さん』あたりをお薦めしとこうかな。まぁ両方の立場の本をよく読んで、自分なりにどっちが正しそうか、良く考えましょう。自分のカネつっこんで実際に金融市場で投資するわけだから、他人が言うことを鵜呑みにしないほうが。効率的市場仮説の是非も含めて、自分の頭で判断したほうが。

(参考)

お奨めの本~金融編

コメント

タイトルとURLをコピーしました