『1997年――世界を変えた金融危機』の読書感想

竹森先生、筆がたつなー。読まされた。面白い。

さて、「ナイトの不確実性」とは何か、というと・・・。通常、ファイナンスや経済学で不確実性というと、確率分布の分散のことを言う。この世界では、不確実性=リスク=ボラティリティ=分散(標準偏差)という感じで、これら用語はほぼ同義で使われる。一方、「ナイトの不確実性」は、「確率分布を推測することが不可能な不確実性」のことである。 

まとめると・・・・

リスク:確率分布が推測できている場合の、その確率分布の分散
ナイトの不確実性:そもそも、どんな確率分布をしているのかが推測不可能なこと

ナイトの不確実性は、データが十分蓄積していないような状況や、一発限りの経済イベントに直面したときに起こる、ってことになる。サブプライム問題で、劣悪な金融商品がトリプルAになっていたことも、ナイトの不確実性で説明できる、って。

ひとたび格付け機関などの評価の誤りが分かると、サブプライムを組み込み、さらにほかの資産まで織り込んだ複雑な債券の「底値」はいくらかということが取引のデータが少ないために推測しがたくなった。こうなると、「ナイトの不確実性」がサブプライムに汚染された債券の市場価格をどこまでも引き下げる(p235)。

まぁ「ナイトの不確実性」とかっこいい言葉を使ってはいるが、要は「ぜんぜんわかりませんーん」って単純なことでしかない。簡単な概念を難しい用語にするのって、経済学者の得意技。

この本を読んだ一番の収穫は、p114~128あたりにあった。「不確実性・プレミアム」って言葉、初めて聞いたよ。これは、ナイトの不確実性に直面したときに、経済主体が要求するプレミアムのことで、リスク・プレミアムに対応する概念なんだが。おもしろかったよ。それと、フリードマンが、伝統的な古典的統計学ではなく、ベイズ統計学に立脚したシカゴ大学サベージの理論を根拠に、「ナイトの不確実性」を否定していた、という件もおもしろかったよ。詳しくは、p114~p122あたりを。

読む価値大。

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