『人は見た目が9割』の読書感想

今年読んだ本の中で、一番時間の無駄だった。かなりひどい。けっこう売れているようなのだが、それはタイトル勝ち。タイトルに惹かれて買った僕の負け。畜生。くやしいですっ!

内容はタイトル通りで、p18ー19に以下のようにある。

アメリカの心理学者アルバート・マレービアン博士は人が他人から受け取る情報(感情や態度など)の割合について次のような実験結果を発表している。

○顔の表情 五五%
○声の質(高低)、大きさ、テンポ 三八%
○話す言葉の内容 七%

話す言葉の内容は七%に過ぎない。残りの九三%は、顔の表情や声の質だというのである。実際には、身だしなみや仕草も大きく影響するだろう。

ついついコミュニケーションの「主役」は言葉だと思われがちだが、それは大間違いである。演劇やマンガを主戦場としている私は、人は能力や性格もひっくるめて「見た目が九割」といっても差し支えないのではないかと考えている。

非常にまずいと思うよ、これは。「事実」と「意見」を混同してしまっている。アルバート・マレービアン博士は、「感情や態度に関して話しているときに限って、言葉は7%」と言っているだけなのに、著者はこれを勝手に一般化して、「話す言葉の内容は七%に過ぎない」と自分の思い込みの意見を書いている。その結果、ミスリーディングなタイトルをつけている。

念のため、アルバート・マレービアン博士本人は何と言っているか、確認してみよう。この著者の言うことはぜんぜん信用できないから。

"Silent Messages" -- Description and Ordering Information

Total Liking = 7% Verbal Liking + 38% Vocal Liking + 55% Facial Liking

Please note that this and other equations regarding relative importance of verbal and nonverbal messages were derived from experiments dealing with communications of feelings and attitudes (i.e., like-dislike). Unless a communicator is talking about their feelings or attitudes, these equations are not applicable. Also see references 286 and 305 in Silent Messages — these are the original sources of my findings.

というわけで、やっぱり、感情や態度以外についての語るときには、この等式は適用できません!とアルバート・マレービアン博士本人も、はっきり言っている。

また、本書では、「こういう研究がある」と紹介するとき、ちゃんと引用元をリファーしていないのも問題だと思う。ちゃんとその論文を読んで中身を正しく理解し、引用するべきだ。それをしないから、こういうミスリーディングな本を書くんだ。

随分悪く書いてしまったが、一応、いいところも書いておこう。著者は、週間マガジンの「哲也-雀聖と呼ばれた男」の原作者らしく、マンガに詳しい。マンガ家が、登場人物の感情を読者に訴えかけるのに、いかに台詞以外の工夫をしていたのか、という下りは興味深かった。タイトルを「読者に訴えかけるマンガの技法」とかにして、それに焦点をあてた内容にすればよかったのに。

これは無いわ。

(参考)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%B3

きょうのことばメモ
飯間浩明のブログです。 新聞や雑誌、書籍、テレビなどから拾った日本語と、 それに関する短いつぶやきを記します。

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