『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』の読書感想

この本を読んだので、Google関連はこの3冊が面白いよ、と人から聞いていた3冊全てを読んだことになる(1冊目2冊目)。

3冊読んでみて思ったのだが、どうもGoogleの登場によって世界が変わるようだ。パソコンの登場も世界を変えた。インターネットの普及も世界を変えた。でも、Googleの登場は、世界を劇的に変えてしまうようだ。そして、経済も変わるようだ。

なんというか、IT革命という言葉は、Googleのために本来はある言葉なんじゃなかろうか。紀元前の農業革命が人類の一つ目の革命であった。イギリスで18cに起こった産業革命が人類の二つ目の革命であった。そして第三の革命が、これからGoogleが起こす情報革命なんじゃないだろうか。

そんな状況の中、経済学を勉強している人間として感じたことを5点記そう。

1.Googleの登場で、経済学的な資源配分、所得分配はどのように変化するのだろうか?

中小起業、地方といったこれまでのロングテールが、大企業、都市といった胴体にラリアットを食らわす時代が来たようだが、そんな経済構造の劇的変化を分析する理論を理論経済学者は考えてください。その結果、経済学的な資源配分、所得分配はどのように変化するのだろうか?これはけっこう重要だと思うので、理論経済学者はたまには現実で起こっていることに目を向けて、世間の役にたってもらいたいと思います。

そもそもITの発達によって、格差が拡大するのか縮小するのか、ということすら、実証的にしか分からないことだと思う。『良い経済学 悪い経済学』の読書感想でもチラっと書いたけど。

2.経済学の「完全情報の仮定」は崩れるか?

経済学では、情報は遍在する(どこにでも存在する)という仮定をよくおく。完全情報の仮定、とか呼ぶ。でも、実際にはそんなことはもちろんない。Googleの登場によって、情報はさらに偏在する(偏って存在する)ようになるのではないか?検索エンジンさえあれば、いつでも欲しい情報を欲しいときに得られる、ということは、裏返せば、欲しいと思わない限りその情報は絶対に得られない、という世界を意味する。どうやって「欲しいかどうか」を人間が決めるかは、その人特有な(characteristic)要因である。つまり、情報はいつでもaccessibleという点では遍在する(どこにでも存在する)が、本当に全ての情報を全ての人間が得るかどうかという点では、情報は偏在する(偏って存在する)のではないか。

そもそも経済学における「完全情報の仮定」とはいったい何を指しているのだろう?Googleの登場は、この経済学の主要な仮定を、どのように崩すのだろう?これが根本的に崩れたら、この仮定を前提に演繹される理論的帰結は何の意味もなくなる。

3.制約付最適化問題化

この本で、価値判断の基準がいま劇的に変化している、とあった。これまではあるモノの値段というのは、例えばどれだけの生産要素を投入したか、とか、費用から逆算する、という発想があった。ところが今後は、「いかに人々のアテンション(注目)を得るか」に変わっていく、と。つまりは、Googleの検索結果の上位にいかに食い込むか、ということが、モノの価値を決める、とあった。

これ自体若干異論がある。というのは、Googleの検索結果の上位に表示されるためには、やっぱり生産要素をちゃんと投入しないといけない。例えば、時間や手間ヒマ、アイディア、つまりはウェブサイトならウェブサイトのコンテンツそのものを充実させないといけない。その結果として、Googleの検索結果の上位に表示される、という権利を得ているのではなかろうか。

とりあえず、このことはおいといて、先を書く。このアテンション(人々の注目)は有限である。ところが、情報は無限に増殖中である。無限の情報を有限なアテンションのもとで処理する方法として、最適なアテンションの配置問題の解、という問題を考えることが出来そうだな、と思った。

4. Googleが複数あったら、政治力に屈することはないんじゃないだろうか?

Googleがやろうとしている市場を「Google市場」と仮に呼ぶことにしよう。このとき、Google市場が完全競争市場だったら、「政治力に弱いテクノロジー企業」というGoogleの汚名を返上できるだろうか?国家機関が情報コントロールのため、「Googleさえ抑えればよい」と現状では考えているかもしれない。しかし、Googleが複数ある世界を考えてみよう。仮にそれをGoogleとKoogleとDoogleと呼ぶことにしよう。その場合、Googleが暴走したら、KoogleとDoogleがそれを監視できる、そういう相互監視システムが出来るんじゃないだろうか?そっちのほうが望ましい世界といえるのではないだろうか?

5. 理論経済学者が理論を作りっぱなしの時代は終わって、計量経済学者が理論を検証しまくる時代がくるんじゃないだろうか?

Googleが全ての情報をデジタルデータ化してくれれば、あとはいくらでも統計処理できる。Googleが大量にデータをとってきてデータベースを作ってくれれば、計量分析しほうだいになるんじゃないだろうか?
理論経済学者が、ようやく「検証に耐えうる理論を考えないといかんなぁ」と思う時代がくるんじゃないだろうか?

コメント

  1. […] 『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』を書いた佐々木俊尚さんが昨年末に出版した本.佐々木俊尚 ジャーナリストの視点 も面白い. ウェブ2.0という言葉がタイトルに入っているが,ネットの今後の展開についての将来予測を偉そうに書いているわけではない.むしろ,これまでのパソコン・インターネットの歴史を解説した上で,今後のネットはどうなるのか自分も分からない,という率直な苦悩が綴られている.というより,ネットvsリアルの戦いがどういう展開になるか,この本に書かれている事実を踏まえてあなた自身が考えてみてね,という印象を持った. 尚,グーグルの話題はほとんど出てこないので,『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』の続編という感じでもない. 佐々木さん自身,ネットvsリアルの戦いが今後どういう方向に進むのかわからない,という悩みが伝わってくる.たとえば,pp149には, […]

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