『ユーロ・リスク』の読書感想

 

 200ページ程度のボリュームで、欧州危機に関する事実を淡々と学べる良書であった。読んどいてよかった。
気になった点を少しだけメモ。
1)欧州国家を2つの軸で、4つに分類している。2つの軸とは、「政府債務残高の対GDP比率が高いか」と「純対外資産残高の対GDP比が高いか」。これは、リスクの程度を機械的に見る簡便アプローチ。
2)米中のグローバルインバランスと、欧州圏内のインバランスへの対処のしかたが異なる理由について、あたまがとっても整理された。長くなるけど引用。太字は杉山による。
第1章では、グループ間で「国家の債務返済能力」と「(政府・民間を含む)純対外債務規模」
で大きな違いがあることを示してきた。通貨ユーロとユーロ圏経済の安定を実現するためには、これらの格差を縮めなければならない。国家の債務返済能力を改善するには、財政赤字を減らして政府の借金減らしに向けた努力をしなければならない。純対外債務規模を減らすには、経常収支の赤字幅を減らしていかなければならない。
つまり、ユーロ圏に内在する「二つの不均衡」―― 「財政収支」の格差と「経常収支」の格差―― をともに縮小させることができれば、 ユーロ・リスクを減らしていくことができるのだ(図5 13を参照)。それによって、ユーロ安定への道筋が見え始めるだろう。そうなれば、「本当」の経済的な実力を伴ったユーロの復活も夢ではない。
そこで問題になるのは、そうした調整をより多く負担すべきなのは高リスク・グループなのか、それとも低リスク・グループなのかということである。あるいは平等に痛み分けをすべきなのか。
これまでの章を読み進めてきた読者には、その答えが頭に浮かぶ方も多いであろう。そう。高リスク・グループがより多く調整を進める必要があるというのがその答えだ。ここで、読者のなかには「ちょっと待って」と思われる方もおいでかもしれない。なぜならG 20サミットでの議論は、これと逆方向に向かっているように見えるからだ。
G 20サミットでは「グローバル・インバランス(世界的な不均衡との名のもとに各国間の経常収支の大きさを縮小しようと議論が進められている。グローバル・インバランスとは一言でいえば、米中の経常収支の不均衡を指している。それぞれ世界最大の経常収支の赤字国と黒字国であり、それらの赤字と黒字をいかにして減らしていくかという問題に集約できる。
G20に属する多くの諸国で広く共有されている見解は、世界的な不均衡の原因のひとつが、中国が自国通貨・人民元を米ドルに対して安定化させている為替制度(事実上のドル・ペッグ制)にあるというものだ。したがって、この制度を改めさせて、経済実態を反映したより「適正」な為替相場を実現すべきであるというものである。
つまり、経済調整の負担は大幅な経常収支の黒字を計上している中国側が、膨大な赤字を抱える米国よりもなすべきだとの見方が広く浸透している(コラム3を参照)。
ユーロ圏では経常収支の「赤字国」が、G 20では経常収支の「黒字国」が中心となって経済調整をすべきだという正反対の見解がそれぞれ中心を占めている。その違いはどこにあるのか。
最大の違いは、ユーロ圏では共通通貨を採用しているため、為替調整は(ユーロ圏を離脱しない限り)ありえないということだ。したがって、国際価格競争力を改善するには、直接、賃金や物価を抑制しなければならない。ユーロ圏では価格競争力を失っているのは経常収支の「赤字国」であることから、赤字国の経済調整が中心となるべきとの考えが支配している。
一方、G20諸国では各国が異なる為替制度を採用しているために、そのことが世界的不均衡の一因となっているとの認識がある。
(p164-166)

3)国際競争力とは何だろうということについての理解が、混乱してきた。pop internationalismに書いてあったように「国と国が競争してるなんて妄想」。だけどこの本を読むと、普通に「国と国が競争している」かのような印象を受ける。何がおかしいのかもよくわからない。混乱した。国際経済学に強い偉い人、教えて。

『THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書』の読書感想

 3月の鉱工業生産指数の下落(速報値ベースで-15.3%)がまじ凄まじくって、え、そんなに下がるもんなの?って思って、ほんと驚愕した。なんでそんな下がるんだろう、製造業についてもっと学ばないと、と思って読んでみた。日本経済について語ろうと思ったら、製造業のことを知らないと何も語れないじゃん、って痛感したってこと。現状、ニュースとかで「製造業のサプライチェーンが~」とか言われてもさっぱりわからない。
 
町工場とか中小零細企業の現実が垣間見える。大企業の景気変動リスクのヘッジのために存在している側面があるようだ。そういえば、『経常利益率35%超を37年続ける 町工場強さの理由』でも、下請中小企業は悲惨だみたいな記述があった。原発処理でも協力企業(という名の下請企業)が駆りだされて、立場上断れないってニュースはけっこう見たし。
これが現実経済。教科書では学べない。

国債が暴落したらどうなるか

最近、国債バブルという言葉が流行している美しい国、日本で皆様、いかがお過ごし?

国債が暴落したらどうなるかということを考えていたのだが、よく考えたら株が暴落したとき以上にやばいよね。いや、別によく考えなくても。

銀行の自己資本規制で8%とか4%というのがあるけど、あれの計算式

自己資本比率 = (TierⅠ+TierⅡ+TierⅢ) / リスクアセット

において、リスクアセットのところで国債のウェイトって0%ではなかったっけ。要はリスクアセット扱いされていないということですね。ということは安全資産ということですか、そうですか。こんな財政赤字の国の国債が安全資産だなんて大笑いなわけですが。

で、話は国債がもし暴落したらどうなるか、ということだけど、有価証券含み損として(これってTierⅡだよな?てぃあナントカって何回聞いても覚えられない)処理されて分子を減らす。一方、分母は変わらず。国債はそもそもリスクアセットじゃないもんね。

もちろん、普通にバランスシート上では含み損は左右両方に登場する。貸方では自己資本が減って、借方では資産が減る。でも、上記定義式で考えるときは、分子だけ減って分母は変わらない。だから比率の減り方が大きい。だから、金融システムへの影響が大きいと思う。ちなみに、株式はウェイト100%で分母の入っているので、昨年の年度末に株安で含み損で自己資本比率下がるとか騒いだところで、分母と分子両方下がるから、減り方は国債暴落に比べたら大きくなかったのでは。

そうなると8%を死守しようとする銀行の合理的行動は貸し渋り貸し剥がしということになるわけですが。さてそこで、「貸出ではなく、国債を買え、国債を買え、国債を買え~」と思ったところで頼みの綱の国債は暴落しているわけだから、どうするのだろう。ウェイト50%の住宅ローンでもやりまくるのかな。(金融庁のHP参照。)というわけで、いまは不景気な建設産業、住宅産業、その関連産業に飛び込みましょう。

ぜんぶ、もし国債が暴落したらどうなるか、という妄想。本当に国債って暴落するの?みたいな話は、あんまり考えたくないことだよね。だけど、最近の政治を見ていると現実味を帯びてきた気がする。

話はちょっと逸れるが、この前、経済のことはぜんぜん分かっていない人に国債バブルとか量的緩和とかの話を教えてあげていたら、「ふーん、金融政策って要するに、国債を中央銀行と普通の銀行の間で行ったり来たりさせたりすることってことね」と言われて何も言い返せなかったのだけど。

(参考)
国債についての迷信

財政の「破綻確率」

団塊の世代は逃げ切れるか

日銀が国債を引き受ける日

新興国バブル

Debt Is a Political Issue

Roggof が日本経済について語っている

mankiw blog経由で知った。

http://www.project-syndicate.org/commentary/rogoff66/English

dressed in better clothing that one typically sees in New York or Paris.

はファッションに金かけるほど豊かになったといいたいんだろうが、なんとなくイラっとした。それは蛇足として。

ここ一年かそこら、日本経済はもう落ち目でこの後もどんどん落ちていくしかないのかな、って考えていたけど、Roggofを読んで改めてそう思った。正直、気分が相当沈んだよ。知識人たちが、いろいろ提言していて、例えば「起業家の支援体制を整えろ」とか「学生はもっと勉強して高度に専門的な知識を身につけろ」とか「国際的人材を育成しろ」とか。だけど「こうなるべきだ」と「実際そうなるか」は別物で、もうダメなんじゃないかな、日本経済。起業家の支援体制は整いそうにないし(むしろ目立つと猛烈に叩かれる)、学生は遊んでばっかりだし(大卒と高卒って、何が違うの?両者でムダに所得格差が大きすぎる)、ドメスティックな人材が大量生産されているし(それでここまで経済成長したんだから、すごいよ)。

そういえば、大学院の就職難の問題を考えていたら、日本経済の問題の縮図だということに気づいた。閉塞感の原因の一つ、少子高齢化については多分、こうなるんだろうな。あぁ恐ろしい。多数決で負けた時の戦略を考えておかないと・・・。

日本の問題は地方から解決したほうが良い

東京と地方の格差って問題がよく議論されているけど,実は東京と世界の大都市の間の格差も開いているんじゃないか,という印象がある.ソウルと東京の差はどんどん縮まっている印象があるし,ロンドンと東京だとロンドンのほうが物価遥かに高かったし.2006年の夏にUK旅行したときはあまりに円が弱くって,自分が発展途上国からきた旅行者なんじゃないかって錯覚に陥った.

日本の一人当たりGDPが世界18位に転落したってニュース,あんまり報道されてないけど,危機感持ったほうがいい.90年初頭は2位だったのに,この18年で日本は一人負けしてるってことだ.

で,これまでみたく地方が東京に依存する状態のままだではいけない.この状態から脱せないと,日本全体が沈没しちゃう.東京は,もはや地方の面倒をみつつ世界と戦えるだけの戦力はない.

地方は地方で自立発展しつつ東京を追い抜くくらいでないといけない.日本の問題は地方から解決したほうが良い,と最近思っていたら,はてなが京都移転するってニュースが.

米国から京都へ はてな近藤社長の真意は

東京から離れ、大勢から距離を置いた京都。ネットの力を信じる人が集まり、ここが日本のシリコンバレーのようになれば面白い。

近藤さん,かっこいい.

(補足)
「東京の戦力」って何ということについて,ちょっと自分でも思考が浅いなと思います.一人当たり実質所得とかってことを言いたいのかな.

『経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには』の読書感想

経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)

阪大の大竹文雄先生が,一般向けに書いた本.「経済学ではこうやって考えるんだよ」ということが,身近な例を使ってわかりやすく書いている.経済学の啓蒙書としてオススメできる.

経済学的な思考といってもいろいろあるが,本書では,以下の二点に焦点を当てている.

  1. 人はインセンティブに反応して行動する
  2. 相関関係と因果関係を区別する

1.について,例えば,プロゴルファーの賞金が高いと,プロゴルファーのスコアが良くなるという事実が計量分析の結果明らかになっている話を紹介している.一般に,「労働者は,賃金が高いと,努力の度合いが高くなるだろう」,ということが推測されるが,現実にデータがないので分析が困難.ところがゴルファーの場合だと,賞金(=賃金)と,スコア(=努力の度合い)というデータが入手可能なので,「人はインセンティブに反応して行動する(=賞金が高いとより努力する)」ということが実証分析できる.

この例はあんまり面白くないけど,もっと極端な例というと,「遺産相続税の節税政策が発表されると,その政策が施工された前後で,急に高齢者の死亡が増える」って話.子供にたくさん相続させようと,税が安くなるときまでがんばって寿命を延ばしている,ってこと.データを見ると,こういう事実が浮き彫りになるわけで,人間ってけっこう合理的なのねってことが分かる.

2.について,例えば「いい男は結婚している」という切羽詰った20代,30代女性の嘆きが正しいかどうか検討している.「結婚すると男はいい男になる」から,結果的に,「いい男ってみんな結婚してるよね」という印象をもつだけじゃないのか?という議論をしている.「いい男」の定義は難しいが,とりあえず,「収入の高い男」と定義してデータを分析すると,結果,「結婚すると,収入が高くなる」という因果関係があることが明らかになる(「収入が高いから結婚する」のではない,ってこと!).その解釈はいくつかある(例えば,結婚すると家族のためにがんばって働くから,とか,結婚している男は社会的に信頼ができるから,とか).しかし,「結婚する男は,収入が高くなる」のではなく,「結婚するような男は,女性にもモテ,会社でも評価できるような人間的魅力があり,だから収入も高くなる」のではないか?という疑問も残る.しかしこの疑問が間違っていることも,双子を使った分析で明らかになっていて,おもしろい.一卵性の双子のペア136組のデータで,ペア同士で比較すると,結婚してない場合より,してる場合のほうが,賃金が26%高くなるんだってさ.これは面白い.双子ならば,「人間的魅力」も同じだろう,という前提で分析してる.もちろん,双子といっても性格は違うわけだが,なかなか面白いね.

「いい男」と「結婚している男」の相関関係について,どちらの方向に因果関係があるのか,ちゃんと考えるのが,経済学的思考ということ.一般には,「いい男」→「結婚している男」という因果関係だが,データを分析すると,「結婚している男」→「いい男」という因果関係が明らかになったよってこと.

まぁ,けっこう身近な例をつかって,「経済学者ってこんな風に考えるんだよ」ということを楽しく書いてます.目次はこんな感じです.目次をみるだけで,けっこうそそられる.しょっぱなの「女性はなぜ、背の高い男性を好むのか?」という分析は,かなり説得的です.ちゃんと経済学的な理由があって,大人になってから無理やり慎重を伸ばしても,モテないよ,ってことも書いてあります.

プロローグ   お金がない人を助けるには   
Ⅰ    イイ男は結婚しているのか?   
        1 女性はなぜ、背の高い男性を好むのか?        
        2  美男美女は本当に得か?   
        3 太るアメリカ人、やせる日本女性   
        4 イイ男は結婚しているのか?     
        5  自然災害に備えるには?         
        6  人は節税のために長生きするか?  
 Ⅱ    賞金とプロゴルファーのやる気   
        1  プロ野球における戦力均衡                                     
        2 プロ野球監督の能力   
        3 大学教授を働かせるには?   
        4   オリンピックの国別メダル予測                     
        5   職務発明に宝くじ型報酬制度   
        6  賞金とプロゴルファーのやる気 
  Ⅲ    年金未納は若者の逆襲である   
        1   日本的雇用慣行は崩壊したのか             
        2   年功賃金は「ねずみ講」だったのか?   
        3 年功賃金と成果主義   
        4  年功賃金はなぜ好まれる?                            
        5   賃金カットか人員整理か?   
        6   失業がもたらす痛み   
Ⅳ    所得格差と再分配   
       個人の格差と世帯の格差          
        見かけの不平等と真の不平等   
        所得格差と「小さな政府」  
 エピローグ  所得が
不平等なのは不幸なのか   
        誰が所得の不平等を不幸と感じるのか                          
        所得の平等か機会の均等か    
        経済学的思考のセンス

日経平均225銘柄のマップ

http://n225.jp/

これはすごい.

  • 日経225銘柄の株価の様子を視覚化したもの.
  • 5分おきに約20分遅れの情報を表示しているらしい.
  • セルの大きさは, 時価総額をあらわす
  • 色が前日比で上昇か下降かを示している(赤は下降,緑は上昇).
  • 業種ごとに区画にまとめられている.

たとえば,このエントリーを書いている時点では,全体的に真っ赤.株価は下降局面ってことが一瞬で分かる.トヨタの存在感の大きさもわかる.

株安とか

日経平均874円安、円急騰が株安に拍車
高校,大学時代に比べたら,経済ニュース(特に株だの為替だの金利だのといったファイナンス関連のニュース)を読んでいて,だいたい内容を理解できるようになった私,経済の大学院生.新聞読んで,株安とかの現象についての説明を読んで,納得できるようなところもあるし,「いや,資本市場ってそんなカンタンに理解できるはずなかろう」という気持ちをもつこともある.計量ファイナンスずっと勉強してきたわけだから,当然だけど.
今回の株安ニュース見てて,自分がなんでファイナンスに興味持ったか,分かった気がした.まず,政治にしろ経済にしろ映画にしろなんにしろ,「見てて面白い」からそれを見ているわけだけど,経済の中でも特に金融ニュースは,「日々必ずニュースになって,しかも正確なデータが豊富に無料で手に入る」から,ファイナンスに興味もったんだろうな,と.金利,株価,為替,政局など全てが互いに関係しながら動いていて,しかもデータが豊富にある.そのデータの背後にあるメカニズム,人間心理を想像するのが楽しい.さらにその向こうにある真理を想像(創造?笑)するのが楽しいから,ファイナンスに興味もったんだろうな.GDPデータなんか3ヶ月に一回しか手に入らないし.家計の消費データや個別企業の生産データみたいなミクロデータはレアだし.結局データが豊富な世界がファイナンスだったということでしょうか.ティックデータは高いけど,最低でも日次データは手に入るし.
結局,映画やドラマ見てるのと変わらんのだよな,ファイナンス現象を観察するのって.しかも,今週の株安みたいな面白い展開をたまに見せるし,先が読めるようで先が読めないし.そういう現象についてアレコレ書き立てる記事を読むのも楽しいし,ブログでいろいろな人がいろいろ言っているのを読むのも楽しいし.株ニュースを巡って正反対のことを言っている人たちがわいわいがやがやしているネット上の雰囲気も楽しいし.自分でも何言ってるかあんまりよくわかってなさそうな自称エコノミストがテレビで解説しているつっこみごころ満載のコメントを聞いているのも楽しいし.僕自身,株式投資はやってないし,勉強した知識をつかって株で儲けようって考えたことないし.結局,暇つぶしでしかないということかな.

『ランチタイムの経済学』の読書感想

ランチタイムの経済学 ランチタイムの経済学
スティーヴン ランズバーグ Steveno E. Landsburg 吉田 利子

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経済学とはどんな学問かを、まったく経済学を学んだことがない人が読んでもよくわかる本。経済学とは「費用と便益の相対的大きさを比較する経験科学」と言えると思う。ある行為をとると、それが社会全体ではどれくらいマイナスで、社会全体でどれくらいプラスか、を計算して比較する。マイナスが大きければこの行為はとるべきじゃないし、プラスが大きければこの行為はとるべきである。経済学者の考え方はたったこれだけ。具体的な例を挙げて経済学者の思考回路が垣間見れる本。
グラフも数式も一切登場せずに、「ランチタイムのおしゃべりのように」つらつらと綴っている。読みやすい。話題は多岐にわたる。

異地点で同時に意思決定すれば状態は改善されうる

有名な行動ファイナンスの話.以下のどちらが良いか?
A:24億円確実にもらえる.
B:100億円を確率25%でもらえるが,確率75%で何ももらえない.
はい,きっとみんなAを選んだね.
それじゃ,以下のどちらが良いか?
A’:確実に75億の損失が出る.
B’:100億円の損失が確率75%で生じるが,確率25%で何も損失が生じない.
うーん.今度はB’を選ぶ人が多いんじゃないだろうか.
さて,AとB’の組み合わせを選んだあなたは,儲けは確実に出したいが,損は確実に出したくないという人です(利得に対してはリスク回避的だが,損失に対してはリスク愛好的な人です).そんなあなたは,経済的に損しています.A’とBを選んだほうが良いのです.以下,説明.
AとB’の組み合わせ=76億円を確率75%で損するが,確率25%で24億円もらえるクジ
BとA’の組み合わせ=75億円を確率75%で損するが,確率25%で25億円もらえるクジ
であることに気がつけば,
BとA’ > AとB’
であることに気づく.BとA’のほうが明らかに良いのに,AとB’を選択してしまったあなたは,損するタイプ.
ある会社が,東京支店ではAとBの問題に,NY支店ではA’とB’の問題に,それぞれ直面しているとしよう.それならば,支店ごとに意思決定しないで,二つの問題を同時に意思決定することで,会社全体としては経済的に改善されうる,というお話でした.