『ウェブ進化論』の読書感想

印象に残ったキーワードと一言だけ残す。

1.キーワード:「情報自体が自然淘汰される」
文脈:Google社内のメンバー5,000人での情報共有をどうやるの?という文脈で出てきた言葉。
意味:大事な情報はみんなによってreferされたり読まれたりするので、勝手に生き残る。他方、不要な情報はみんな読まないしreferしないから勝手に消えていく。
感想:これはつまりは、「生き残ったということは、大事な情報だった」という発想。ベイズ統計学の発想に他ならない。ひょっとして、検索エンジンではベイズの法則を適用しているのか?とか思った。

グーグル、インテル、MSが注目するベイズ理論

こんなところで隠れマルコフって言葉を見るとは思わなかった。

ベイジアンフィルタ、ベイズ理論 – Google、MSNの検索エンジン

でもよく考えると、「ある程度の情報探索能力があれば、大事な情報は勝手に自分の手元に転がり込んでくる」という表現に落とし込むと、別に新しいことでもなんでもない。今も昔もこの表現は真だろう。変わったのは、「情報探索手段」でしかない。昔だったら、井戸端会議で人伝い経路のみが情報を仕入れる手段だったかもしれないけど、それが今ではGoogle活用能力に変化しただけってことか。

そう考えるとすごい。無限にある井戸端会議に匹敵するだけの価値がGoogleにあるってことかな。

2.「高速道路の先は大渋滞」
文脈:将棋の羽生さんの言葉。
意味:将棋を強くなるための情報がネット上に転がっている。しかも大量の情報を整理する手段(Google)もある。したがって、「将棋を強くなるための情報が整理された形でネット上に転がってる」。つまり「将棋を強くなるための高速道路が整備されている」。しかし、この高速道路は無料でみんな乗れる。だから、「すごく短時間で、あっという間に高速道路を走り抜けてある程度まで強くなることはみんな出来る」が、「そこから先に進んでより強くなるところでみんなまごつく」から「そこで渋滞が発生している」ってこと。これは将棋以外でも分野でも起こる。
感想:学問の世界ではどうだろう?Google Scholarには”Stand on the shoulders of giants”と書かれている。”Stand on the shoulders of giants”とはすなわち「高速道理に乗る」ことである。あ、ってか梅田氏の本に影響されてるなぁ。「高速道理に乗る」とはすなわち”Stand on the shoulders of giants”というべきだった。だから、別にこの考え方自体は新しくはない。ただ、これからはありとあらゆる分野で高速道路が整備される、しかもその高速道路はよく整備されデコボコがないすっげー走りやすい道路、という点が重要。そしてその先の大渋滞から一人だけ抜け出すところが大事なステップ。大渋滞するところまでのステップが省略できていいんじゃない、と思う。本当は、学術研究とは「新しい知識の創造」なわけだから、つまり「大渋滞から抜け出すこと」なんだもんねぇ。これで盗作した人間は一発でばれる。ってゆうか盗作しようがない時代が来る。ドイツ語で発表された文献を、ただ日本語に翻訳して、あたかも自分が書いたかのように論文を発表した、という不道徳な学者の話を聞いたことがあるけど、そういうことが、高速道路が整備されると出来なくなる。

いままでは、「この研究分野は、こういう系譜になってます」みたいな研究分野の紹介とか、研究の流れの紹介のみを目的とする文献を書くことも、学者の仕事だった。これからは、そういう非効率な仕事をしなくてよくなる。

学者が、本来の仕事である、「新しい知識を創造する」という学術研究に専念できる時代が到来する予感がする。非常に喜ばしい。

3.「あちら側とこちら側、オープンソース」
文脈:MSのゲイツは、PCの私的保有に感動した世代。Googleのペイジとかは、あちら側の無限の可能性に感動した世代。両者は決定的に異なる。
意味:HDD内でごちゃごちゃやる世界が、「こちら側」。全部ネット上の仮想世界で大規模にやるのが「あちら側」。
感想:計量ソフトは、Rがその他すべての計量ソフトを駆逐する、と確信した。