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『世界を変えた10冊の本』の読書感想

 

池上彰さんの本。とっても勉強になった。10冊とは、以下の本のこと。

目   次

はじめ に
第 1 章   アンネ の 日記
第 2 章   聖書
第 3 章   コーラン
第 4 章   プロテスタンティズム の 倫理 と 資本主義 の 精神
第 5 章   資本論
第 6 章   イスラーム 原理 主義 の「 道しるべ」
第 7 章   沈黙 の 春
第 8 章   種 の 起源
第 9 章   雇用、 利子 および 貨幣 の 一般 理論
第 10 章   資本主義 と 自由
おわり に

池上 彰. 世界を変えた10冊の本 (Kindle の位置No.15-18). . Kindle 版.

 

以下、それぞれコメントをば。

第 1 章   アンネ の 日記

なぜこの本が、「世界を変えた10冊」の1番目か?著者は冒頭に書いている。

なぜ、 この 本 が「 世界 を 変え た」 のかと 疑問 の 方 も いらっしゃる こと でしょ う。 中東 問題 の 行方 に 大きな 影響力 を 持っ て いる から、 という のが、 私 の 答え です。

池上 彰. 世界を変えた10冊の本 (Kindle の位置No.80-81). . Kindle 版.

と書いている通り。

  しかし、 イスラエル 政府 によって 壁 で 包囲 さ れ て いる パレスチナ に 住む 人 たち の 中 にも、 日記 を つけ て いる 少女 が いる のでは ない でしょ う か。

その 少女 は、 イスラエル 軍 の 行動 に 怯える 自分 たち の こと を 日記 に 語りかけ て いる かも 知れ ませ ん。

『アンネ の 日記』 によって、 中東 世界 は 大きく 変わり まし た。 ところが、 それ によって 苦しむ 子ども たち が いる のも、 事実 なの です。

池上 彰. 世界を変えた10冊の本 (Kindle の位置No.309-312). . Kindle 版.

とも書いている。ユダヤ人の少女の悲惨な日記が世界的ベストセラーになったが、パレスチナ側では同じようなベストセラーがないので、心情的にイスラエル側に強く出にくい、ということらしい。他の要因もあると思うけど、人間って感情で動くから、こういう書物で心の底に心情的な何かが植え付けられると、どうしても援助したくなるのかもしれない。そのことの是非は別として、世界を動かした一冊には変わりがない。

第 2 章   聖書  &  第  3章 コーラン

聖書とコーランはまとめて表にした。

旧約聖書 新約聖書 コーラン 神(一神) 預言者
ユダヤ教

 

◯(ユダヤ教では「律法」) ヤハウェ
キリスト教

紀元前後

ゴッド イエスは預言者で神の子
イスラム教

AD.6C

◯(「声に出して読むもの」という意味) アッラー イエスもムハンマドも人間の預言者
言語 ヘブライ語 ギリシャ語 アラビア語
備考 信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼
イスラム法(シャリーア)

コーランでは金利をとることが禁止されているので、イスラム金融には金利がない。でも、商売は金利されていないので、「投資」という形になっている。これがイスラム金融。

第 4 章   プロテスタンティズム の 倫理 と 資本主義 の 精神

有名な「プロ倫」の解説。免罪符を売るなど堕落した教会(カトリック)に対して宗教改革が起こったあたりから丁寧に説明してくれている。

カルバンが宗教改革で「予定説」を唱え、免罪符を買っても買わなくっても、天国にいけるかどうかは予め決まっている、と教会(カトリック)を批判する。この予定説に基づいて、自分は天国にいける人間なんだ、神様から選ばれた人間なんだ、という自己確信を強めるための手段として、職業労働に従事するように信者たちに教え込んだ結果、プロテスタントは勤勉に働くようになった、と。

プロテスタントにとって、職業は「天職(=神から与えられた義務)」であり、これに勤しむことが神の命に叶うことになる。だから、せっせと働く。生活していける以上の富を得られても、せっせと働く。生活するために働くのではなく、自分は選ばれた人間なんだという確信を強めるために、勤勉に、どこまでも働く、ということになった。

生きるために、これ以上はもう働かなくてはいいという状態になっても、「天職を全うしなさい(=働け)」という神の命令には、貧しい者同様に従わなくてはならない、という暗示がかけられた、ということ。一生懸命働いて富が十分溜まったら悠々自適で過ごしたり、牧歌的な生活態度は、これで一蹴されてしまう。こういうマインドが一蹴されたことこそが、資本主義の精神ということ。

考えてみれば、年収何十億円も稼ぐウォール街とかグローバルCEOとかが強欲資本主義の象徴とか言われても、使い切れないほどのお金を稼いでいるのに、さらに働こうというマインドって、こういう宗教的な何かが背景にないと、発生しないのかもしれない。何が原動力だろうと、そういうモチベーションをもたないと経済は動いていかないと思うので、”Greed is good!”とかいうけれど、”Faith is good!”というべきなのだろうか?

というわけで、「世界を動かした10冊」に選ばれている。

第 5 章   資本論

マルクスの「資本論」。労働価値説とか、大学1、2年の授業で習ったような。

マル経はとっくに死んだ学問だけれど、ロジアと中国で共産党革命を起こしたのは事実だし、歴史を動かしている。現代においてすら、格差が拡大したり、リーマンショックで世界同時不況とかを引き起こしたりすると、再注目されるのは、分かる。

労働力の価値=労働力の使用価値(労働力によって生み出された付加価値)+労働力の交換価値(=給料)

という数式を出され、

  • 「労働力の使用価値の部分は、資本家に搾取されている!」
  • 「労働力の使用価値の部分を生み出している労働時間は、『剰余労働』である!」
  • 「『剰余労働』の分だけ、資本家に搾取されている!」
  • 「資本家の目的は『利潤のやすみなき運動』だ!」
  • 「そのために、長時間労働もさせるし(絶対的剰余価値)、最低限の生活コストで生かさず殺さず(相対的剰余価値)、労働、生産させるのだ!」
  • 「資本家にとって労働力とは、消費することで価値が増えるという特殊な商品である!(使うほど剰余価値を蓄積できるもの)」

などと言われたら、つい心理的に頷いてしまう。共産党や社会党が日本からもなくならないのは、自然なことなのかなと思ってしまう。

さらに機械化で労働力の必要性が薄れ、失業率が高まり労働力の交換価値も低下し、しかし資本はどんどん蓄積され格差が拡大し、最終的には労働者による革命が起こる、というのがマルクスの予言。

別のロジックだけど、「利潤のやすみなき運動」とはまさに「プロ倫」における「資本主義の精神」に似ている。

 

第 6 章   イスラーム 原理 主義 の「 道しるべ」

これはオサマ・ビンラディンに影響を与えた本ということで、「世界を変えた10冊」にランクイン。

ムスリム同胞団のメンバーだったサイイド・クトゥブが書いた本。クトゥブ自身はエジプトのナセル大統領の暗殺未遂で逮捕されたメンバーの一人で、獄中で執筆したらしい。執筆したけれど、発禁処分にされた上、国家反逆罪で再逮捕され処刑された。

サダト大統領を暗殺したのも、クトゥブの思想を受け継いだ人だったらしい。

この本で書いたあることをざっとまとめると、下記の通り。

  • 人間主権ではなく、神の主権。だから、人間主権と言っている国家は、全て無名社会(ジャーヒリーヤ)。
  • 偶像崇拝をするのは、全て無名社会(ジャーヒリーヤ)。だから日本も無名社会(ジャーヒリーヤ)。
  • 三位一体(父と子と聖霊は三位一体)論を唱えるキリスト教も全て無名社会(ジャーヒリーヤ)。
  • 真のイスラム教徒は、無名社会(ジャーヒリーヤ)をイスラム社会にしなくてはならない
  • ジハード(聖戦)が必要だ!(※ジハードの元来の意味は、「努力」。イスラムの教えを守る努力、という意味)

パレスチナのハマスも、アフガニスタンのアルカイダも、この思想を受け継いでいるらしい。

第 7 章   沈黙 の 春

これは現代が”Silent spring”といって、環境問題に世界の関心を向けた初めての本。農薬の環境へのマイナスなんかを初めて論じた本。

第 8 章   種 の 起源

ダーウィンの進化論。「社会ダーウィニズム」も引き起こした。適合した生物が生存できるのと同じで、もっとも効率的な企業が市場を独占し、もっとも優れた資本家が富を独占するのは当然だ、という思想を生んだ。

さらに欧米列強による植民地支配や人種差別の理論的根拠とのなりえてしまったらしい。

第 9 章   雇用、 利子 および 貨幣 の 一般 理論

ケインズの古典的名著。

新古典派 ケインジアン
フィッシャー(1867-1947) 1929年の大暴落と世界恐慌を説明出来ず名声を失う、貨幣数量説 ケインズ(1883-1946) 財政政策で有効需要を創れる
*ハイエク(1899-1992) 大恐慌でも自由放任を主張
*フリードマン(1912-2006) ハイエクの弟子、ケインズを批判、マネタリスト、リバタリアン(完全自由主義、自由至上主義)、シカゴ学派
 キーワード 小さな政府  大きな政府

*はノーベル賞受賞

※最近は、新古典派(というかマネタリスト)の考えも取り入れたニュー・ケインジアン(マンキュー、ローマー)もあったりして、ケインズか新古典派かみたいな区分けはあんまり無い気がする。僕が大学院にいたときも、誰がケインジアンで誰が新古典派かなんてあまり考えなかった。

※「フィッシャー的リフレ派 VS シュンペーター的生産主義(創造的破壊)」を扱った『経済論戦は甦る』もおすすめ。※シュンペーターはポールサミュエルソンの先生。

https://diamond.jp/articles/-/109379

http://d.hatena.ne.jp/yuki_takao/20111229/1325125369

https://cruel.org/econthought/essays/keynes/counterattack.html

 

 

 

第 10 章   資本主義と自由

ノーベル経済学賞をとった、フリードマンの本。ケインジアンの勢力が強かった頃に、リバタリアンとマネタリズムを主張。いまでは普通に受け入れられている学説だけれど、かつては異端児だったらしい。

9章でケインズの本を紹介した上で、今度はその強力な対抗馬のフリードマンの本を紹介し、アメリカの2大政党の思想も比較している。

民主党(オバマ) 共和党(Tea Party)
政府の役割 大きな政府 小さな政府
課税、財政政策 ケインズ的財政出動 重税反対
理論的根拠 フリードマン

政治の話はおいといて、経営者に対する下記の言葉が胸に刺さったかな。

企業経営者の使命は株主利益の最大化

(途中、略)

一企業の一介の経営者に、何が社会の利益になるのかを決められるのだろうか。

位置2270

これを読んだら、「経営の本業のみに心血を注ぐことこそ、最大の社会奉仕」という思いが(もともと持っていたけれど)さらに強くなった。(でもちょっとくらいは寄付したりしてもいいんじゃないかな。?)