『日本「半導体」敗戦』の読書感想

 良書、もっと早く読んどくべきだった。

 

 
で、著者の答えを簡単に僕なりの言葉で要約すれば「技術には高品質高機能化のための技術と、低コスト化のための技術があるのだけど、日本半導体メーカーは技術といったら前者だけだと思っていて後者は技術だと思っていなかった。そこへきて、韓国・台湾の半導体メーカーが後者の技術を身につけて(破壊的イノベーション)、前者の技術をレベルアップさせるだけの日本メーカー(持続的イノベーション)をたたきのめした。」
 
『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』の分析の枠組みを半導体業界に適用しただけなんだが、とっても分かりやすかった。今後もイノベーションのジレンマはいろんなところでお目にかかるんだろうな。合理的な経営をすると負ける、ってあーこわ。関連本で、『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する』でも、いかにムダな機能をなくして安くするか、という戦略の重要性が描かれていたけど、「低コスト化をするのも技術がいる」って視点は、どちらの本でも指摘されていなかった気がする。そしてものづくりの場合、設計段階から低コスト設計を意識しないといけない、というお話につながっていた。なるほどね。そうすると設計部門の人材には相当なスキルが求められることになるのね。
あ、あとこれからはアジア・新興国・BRICsの時代だ、ということで、肌で感じるために世界一周したらしいです、この著者。例えばインドで車を売ろうと思ったら、

 

 

サイドミラーは1個しかない(インド人はミラーなど見ない)、エアコンはない(暑いのは当たり前)、オーディオ設備ももちろんない(とにかくうるさい)、エンジンは600cc(道が混んでいてスピードが出せない)、およそ快適とは程遠いクルマである。(p194)

 

 

ということを理解しないとダメだ、とか書いてあった。日本メーカーは高品質高価格のものを売っているけど、これから新興国の中間層がhuge marketになるんだから、そこで儲けようと思ったら、こういう事情を理解しないとダメでしょ、ってことで。そういや、ちょっと前に話題になったこの記事でも同じようなことが書かれていた。ガラパゴスはケータイだけじゃないってことか。
ちなみに、インドで車を借りようと思ったら、エアコンありタイプはラグジュリアスタイプで、標準はエアコン無しだった。値段は5割くらいは違った記憶が。思い出しついでに、タクシーのボッタクリ方が半端ない。倍とかじゃない。ケタ一つ違う金額。思い出してむかついてきた。
なにはともあれ、この本、読んでよかったです。
あ。あと、本筋から離れるけど

 

 

社会科学者(特に権威者と呼ばれてる人たち)の中には、私の論文を認めず、同じようなテーマで論文を書いているにもかかわらず、リファーをしない方が多い。(p55)

 

 

論文不引用問題はどの分野にもあるんですねー。

 

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