学問(learning)

インフレとデフレ

昔、インフレとデフレに対する人びとの捉え方は、対称ではないんじゃないかって書いたけど、クルーグマンも似たようなこと書いてる。

Inflation Perceptions

What’s happening, I suspect, is that sharp price rises in some things catch peoples’ attention, while declines don’t.

インフレとデフレを、単純に物価変化率がプラスかマイナスか、という算数として、人間は認識できないのかな?って思う。

ところで、僕はインフレを知らない。まぁ、経済に興味を持ち始めた頃(大学入った頃、つまり2001年頃)、物価は上がっていなかった。僕はデフレしか知らない。だから、「お前インフレの怖さ知らないんだろう」と言われると、正直知りません。それでも、何の根拠あっていってるんだと言われてしまうような、僕の直感的な意見で言うと、デフレのほうがインフレよりやばいと思う。

例えば、最近テレビでよく労使交渉のニュースやってて、ベア見送り、定昇見送り、って話があるけど、デフレ下では、名目賃金を維持すること=賃上げ。すなわち、この不景気に、実質賃金ベースで見れば、ちゃんと賃金は上がっているわけだ。

ところが、これ、なかなか理解しにくい。何度いっても理解できない人もいると思う。そういう人のことを「こういうバカはほうっておこう」とするのか、「現実に理解できない人が多いのだから、それを考慮に入れないといけない」とするのか?経済学者は、どちらかというと、前者だと思う。でも、それって現実を向き合っていない態度じゃないか?

労使交渉の時にデフレが悪さをして、賃金水準を均衡より高めに設定してしまうことによる、資源配分の歪みというのは、無視できないと思う。

物価変動の本質的な問題はそのボラティリティだと僕は思う。ボラティリティがすごく小さければ、ほぼ問題ない。ただ、それはインフレの時のお話であって、デフレの時は、上にあるような問題が発生するので、やばいと思う。ただでさえ、人びとはいろいろな経済変数を実質変数化するときに攪乱するのに、デフレの時にはその攪乱の度合いが大きくなると思う。そしてそれが、ものすごく大きな資源配分の歪みをもたらすと思う。

このデフレのコストは十分大きいので、なんとしても退治しないといけないと思う。ただ、この主張を実証的に裏付けろと言われたら、まぁ、出来ません。僕の感覚としか言いようがないな。これでは政策提言としては赤点だな。でも、本心でそう思う。

(参考)
デフレデフレというが、実際物価ってどれくらい下がっているの、って考えるとき、当然、物価指数の上方バイアスの話も考えないといけない。上方バイアスについては、以下が分かりやすい。

物価の安定を巡る論点整理 by 白川方明 門間一夫

ミクロ経済学的な基礎を持つ理論的概念としての物価指数は、商品やサー
ビスへの支出から得られる人々の効用をベースにして定義されるものであ
る。具体的に考えてみよう。代表的な消費者がある年に100万円の消費支出
をしたが、翌年は同じ効用(満足度)を得るのに110万円かかったと想定す
る。このケースは、人々にとって貨幣の価値が10%下落した状況にほかなら
ないため、「物価が10%上昇した」状況であると定義することができる。逆
に、同じ効用を維持する金額が90万円で済むようになった場合や、100万円
という同じ支出額から得られる効用が10%増大した場合は、いずれも「物価
は10%下落した」状況であると定義できる。このように、「同額の支出から
得られる効用が増大(減少)する」ことを、「物価が下落(上昇)する」と
いう。(p7)

以上、理論的概念に対応する物価指数を作成することに伴う現実的な難し
さについて述べてきた。ところで、新たな商品やサービスを生み出す企業努
力や、それらを取捨選択する消費者行動は、企業や消費者が合理的である限
り、消費者の効用を高める方向で作用するはずである。したがって、物価指
数が経済の実態を完全にはトレースしきれないということは、現実の物価指
数が効用の増加分を過小評価するバイアスを持つことを意味する。逆に言え
ば、現実の物価指数の上昇率には上方バイアスが存在することになる。(p12)

ここで物価変動を、ミクロ経済学を基礎に厳密に定義している。当然、ミクロ経済学で登場する変数なので実質変数を想定していると思うが、「名目変数と実質化する」作業が、デフレ時のほうが、インフレ時より困難なんじゃないかなぁ、と改めて思う。