『一勝九敗』の読書感想

ユニクロの柳井さんの本。かなり感銘を受けた。この人、すげーな。山口県の田舎から始まったカジュアルクローズの小売店が、いまやNY、パリなどの世界主要都市を押さえるグローバル企業になった。その成長を振り返りつつ、次の目標を語っている。

「計画して、必ず実行すること」とか「商売の基本はスピードと実行」とか「失敗したらすぐそれに気づくことが重要」とか「失敗してすぐ撤退して、失敗から学ぶべし」とか「とにかく実行、失敗してもすぐ軌道修正して成功に結びつけるべし」みたいなことが繰り返し繰り返し記されていた。

一直線に成功ということはほとんどありえないと思う。成功の陰には必ず失敗がある。当社のある程度の成功も、(中略)実態はたぶん一勝九敗である。十回やれば九回失敗している。この失敗に蓋をするのではなく、財産ととらえて次に生かすのである。致命的な失敗はしていない。
(中略)
もうひとつ大事なことは、計画したら必ず実行するということ。(中略)頭のいいと言われる人に限って、計画や勉強ばかり熱心で、結局何も実行しない。商売や経営で本当に成功しようと思えば、失敗しても実行する。また、めげずに実行する。これ以外にない。(p199)

この人が言うと説得力がある。この人からしたら国内で調子の悪い産業も以下のように見えるらしい。

ドメスティクな産業、例えば流通業、金融業、建設業などは全部企業マインドが内向きで、自己改革の兆しすら見えない。自己改革どころか不況にその責任を転嫁している。(p187)

柳井さんが商売始めた頃って、繊維の小売は衰退産業だったみたいだけど、それをここまで持ってきたんだから、説得力がある。

経営者が書いた本ってけっこう読んでいると思うけど、これはかなり上位に来る。

日本の製造業はダメにならない

・・・というポジションで論陣を張ろうと思います。

ちなみに、時の政権にアドバイスしているinfluential economictsの考え方をざっとまとめると・・・

昨年のリーマンショック以降の円高について、円高円高とみんな騒ぐけど、実質で見たら円高じゃないし。2000年代の日本はデフレ脱却すべく超金融緩和政策を行っていたため、実質で見たらば超円安になっていて、それを運よく利用できて輸出で稼いだ製造業が調子良かっただけだよ。これからはそうはうまくいかないよ、外需依存じゃなくって内需成長を考えよう!

こんな感じか。で、これ、僕は間違っていると思っていて、himajinaryさんに概ね同意。

http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20091023/takarabe_on_export

(参考)
今の1ドル90円は、実質で見たら円高ではない、という主張について

経済・物価情勢の展望

日経の以下の記事が目にとまった。

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091023AT3S2201I22102009.html

日銀が30日公表する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、消費者物価(除く生鮮食品)上昇率の予想が2011年度まで3年連続でマイナスになる
見通しであることが22日わかった。(中略)デフレ脱却の遅れを踏まえ、日銀は景気への悪影響を阻止するため、事実上のゼロ金利政策を当面継続する見込みだ。

『はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術』の読書感想

いい本。薦めてくれた人、ありがとう。

『七つの習慣』『ビジョナリー・カンパニー』とを抑えて一位をとったらしい。この二冊も相当な良書なのだが、それを抑えるなんてすごいね。でも、それだけのことはあるかも。

パイ屋の経営に行き詰っているサラに著者がアドバイスを送るという形式で物語は進む。印象に残ったところをメモ。

私は、事業を立ち上げようとする人はみんな三重人格者だと思っている。「起業家」「マネジャー(管理者)」「職人」の三つの人格をもっていて、どの人格も主役になりたくてうずうずしている。(p33)

 

君が現場で働かなければならないのなら、それは事業を経営しているとは言わないんだ。(p56)

 

あなたの人生の目的は、事業という生き物に奉仕することではない。反対に、事業という生き物は、あなたの人生に奉仕するはずである。(p117)

優良企業は、はっきりとした将来像をもち、それを実現するために何が必要かを知っている。(p154)

いったい「価値」とは何だろうか?
商品とは、顧客が店を出るときに、実際に手に持っているものである。
価値とは、顧客が店を出るときに、感じるものである。(p167)

多くの起業家は、スモールビジネスを通して世界を変えようという高い志をもちながらも、自分だけは変わろうとしないのである。(p263)

この本も、折を見て読み返すと思う。

金融政策の出口戦略について

クルーグマンの以下のエントリが面白かった。面白いといっても、テイラールールについて書いてるだけなんだが。

When should the Fed raise rates? (even more wonkish) @ Paul Krugman Blog

結論だけ引用すると、以下。

In other words, even with a really strong recovery (which almost nobody expects), the Fed should keep rates on hold for at least two years.

Bear in mind that I’m using entirely standard, conventional analysis here. It’s the people saying that the Fed should start tightening in the near future who are inventing some kind of new, unspecified framework to justify their views.

クルーグマンの専門は国際貿易であって、金融政策ではないのだけれど、やっぱり Nobel Prize winnerなので彼がどう考えているかはつい気になってしまう。

「そろそろ出口戦略を」という話を聞いたとき、いったい何の話をしているのか僕にはまったく理解できなかったんだが・・・。そう感じた僕がおかしいわけではないらしい。

『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行』の読書感想

いい本。薦めてくれた人、ありがとう。投資、世界旅行ってキーワードにビビっと来たらmust read。著者(ジム・ロジャーズ)の紹介をアマゾンより引用。

1942年生まれ。イェール大学卒業後、オックスフォード大学ベリオル・カレッジ修了。米陸軍に従事した後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスと共同で
国際投資会社クォンタム・ファンドを設立。10年で4000%を超える驚異的なリターンを実現(同時期のS&P500株価指数は50%)し、天才
投資家としてその名を轟かせた。37歳で引退し、世界中を旅して回る

これ読んだだけでそそられる。彼が世界旅行をする中で感じたことを、歴史、政治、経済などいろいろな視点から分析して、その国は「買い」なのか「売り」なのかを記している。そんな彼がいろいろつづっている中、特に名言だと思った以下の点をメモしておく。

次のチャンスが来るまで、金を銀行に預けてじっと待つべきなのだ。それなのにすぐまた飛びついてしまう。なんたる傲り!投資のコツはいかにして金を失わないかということにあるのだ。これが最も大事なことだ。(p291)

アルゼンチンは私の二つの投資基準に合致していた。第一に、変化が起こりつつあること。この国に数週間滞在し、それをこの眼で確かめることができた。そして第二に、投資対象がまだ頗る安かったこと。(p341)

『営業の魔法―この魔法を手にした者は必ず成功する』の読書感想

アマゾンで「営業」で検索すると一番上に出てくる。レビューでの評判も非常に良い。 という理由で読んでみた。確かに、かなり良い本。読書で感動したのは、久しぶりかも。

内容は、ダメ営業マンが、営業の師匠に指導されながら成長していく物語。最後は感動のフィナーレが待っている。たくさんいい言葉があったけれど、特に、

営業とは、お客様の問題を解決するお手伝いをすることです。そして、お客様と成長の感動を共有する使命を持っています(p106)

が心に刺さった。この本も、たまに読み返すと思う。実際に営業が得意な人が読んで、この本をどう思うか知りたい。

ちなみに、『ユダヤ人大富豪の教え』にしろ『金持ち父さん貧乏父さん』にしろ、営業の重要性を説いている。

母集団とサンプルの間の関係を忘れるとひどいことになる

たとえば、社内で起こる不具合に関してデータを集めたとしよう。ものづくりで不良が起こった、とか、誰かが会議に遅刻した、とか、ウェブサービスでエラーが見つかった、とか、なんでもいい。こういうデータが目の前にあるとする。

こいつを分析したいとする。記述統計で調理しようか?推測統計で調理しようか?なんとなくかっこよさそうだから、推測統計を使いたくなる。回帰分析でもしたくなる。あ、t値が有意だ。なるほど、こういう因果関係があったのか。

いやいや、この分析はいったい何をしているのだろう?目の前にあるデータは、社内で起こった全てのデータだ。全てのデータがあるのに、いったい推測統計を使うなんて、いったい背後にどんな母集団があると考えているのだろう?「母集団=いま使っているサンプル」なのだから、記述統計すればいいんじゃないか?

日本には都道府県が47しかないのに、都道府県データを使って回帰分析してt値が有意だといって喜んでいるのは、いったい何を分析しているのだろう?人口は1億3千万いるが、全データをとれない。だから、とりあえず3000人分くらいのデータをもってきて、推測統計を使う。これは分かる。というか、そんなときにために推測統計がある。

なんでもかんでも推測統計で調理しようとするのは間違っている。記述統計はsuper elementaryだが、(統計学が疎い人にとっては朗報なことに)それで十分なケースも多々ある。そういうケースで推測統計をつかってあーだこーだ分析するのは、いったいどういう母集団を想定しているのだろうと質問したくなる。手元にあるデータこそが母集団なのに、推測統計つかって「この分析は一致性を持つ」って、なんのギャグですかと思う。