『プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く』の読書感想

面白かった。プロパガンダとか広告とか宣伝とか洗脳とか説得とか、そういった感じ。読む価値あるよ。特に今みたいに情報過多の時代では。で、著者たちが本書を執筆した目的は、プロパガンダとか広告とか、そういう各種「説得」から人々が自分の身を守れるようにするため、だって。著者たちは有名な心理学者らしく、心理学に興味あるんだったら、是非この本を。

で、目次をアマゾンから引用してみる。

第1章 日常生活のなかの説得
第2章 説得のお膳立て―効果的な説得を行うために
第3章 伝達者の信憑性―本物とまがい物
第4章 メッセージ―それはどのように伝達されるのか
第5章 感情にアピールする説得
第6章 説得の戦略を打ち破るために
第7章 情報戦略が失敗するとき―プロパガンダと社会

話題は非常に多岐にわたる。ざっとあげてみるとこんな感じ:カルト的な宗教、政治家の選挙活動、テレビをはじめとする各種メディア、ダイレクトメール、ヒトラー、セールスマンの営業トーク、などなど。日常は説得するかされるかという場面で溢れていて、情報はそこら中を溢れている。

さて、例によって印象に残った点をいくつかメモ。

他のすべての条件が等しければ、たいていの人は、多量の統計データよりも、一つの鮮明で身近な事例の影響を強く受けるものなのである。(p151)

人間なんてそんなもんだと思う。

人びとの心を揺さぶる鮮明なテレビの訴求力が、小説のような単なる感動的な物語りに取って代わられることはないだろう。(p155)

「小説」を「ネット」に置き換えてみると面白い。

歌やその他の娯楽は、受けてが反論を間が出すことを妨害するという点で大きな影響を与えるらしい。(p163)

要は気を逸らしたいということ。

信頼できる送り手の場合には、送り手が唱道する意見と受け手の意見の間の食い違いが大きいほど、受け手が説得される程度は大きい。一方、送り手の信頼性が疑わしい場合には、食い違いが中程度のときに最大の意見変化が生じる。(p172)

この本では様々な心理学の実験結果が紹介されている、そのどれもが超面白いのだが、これはその中でも一番面白い結果だと思う。

かつてBBC会長が述べたように、テレビニュースは一種の娯楽番組なのである。(p263)

ニュースという番組名がついた、バラエティ番組ってことか。ってか、そんなことをBBC会長が言ったことがあるなんてびっくり。

ヒトラーは、『我が闘争』で次のように書いている。

宣伝効果のほとんどは、人びとの感情に訴えかけるべきであり、いわゆる知性に対して訴えかける部分は最小にしなければならない。われわれは大衆に対して、過度な知的要求をしてはならない。大衆の受容性は非常に限られており、彼らの知性は低い。しかし、忘れる能力は非常に大きい。これらの事実に基づき、宣伝を効果的にするには、要点を絞り、大衆の最後の一人がスローガンの意味するところを理解できるまで、そのスローガンを繰り返し続けることが必要である。(p292)

これを読んで、小泉さんを連想したのは、僕だけじゃないと思う。

いやー、かなり面白かったよ。非常的に「説得」的な本だった。完全にこの本読んで、「説得は危険」と見事に「説得」されてしまったよ。

(追記)

ちなみに、本書は

悪用厳禁!「プロパガンダ」
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経由で知った。リンク先のブログは、僕が読む本を選ぶときにたまに参考にしているブログで、けっこう良いブログだと思う。

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