『たった1%の賃下げが99%を幸せにする』の読書感想

するどい!格差問題にとてもするどく切り込んだ本。格差問題についての議論や報道を聞くとき、いつも違和感があるが、その違和感にするどく切り込んだ本。本書の主張に、概ね同意。ちょっと長くなるが、いくつか引用。

問題は、正社員の側ががっちりロックされているため、非正規雇用の側に回される人件費原資が生産性以下でしかないこと。そして、あらかじめ「切り捨て」前提で単純作業ばかり割り振られるため、いったん非正規雇用の側に入ってしまうと、技能・職歴が身につかず、階層が固定化されてしまうことなのだ。
「切り捨て」前提で使われる部材であるため、今回のような不況時には真っ先にクビを切られることになる。一方で好況時には、正社員労働組合にベアをもっていかれる。日本労働組合総連合会(以下、連合)はしばしば「労働者同士、対立ではなく連帯を!」と呼びかけているが、いま行われている大量の「派遣切り」の陰でこっそりベアを要求しているところからも、既得権を譲る気はサラサラなさそうである。(p20)

だが、労働市場に対する改革を求められた連合が、中小企業の正社員を引っ張り出してきては、「見て!正社員もこんなに苦しんでいるの!」と反論するのには強い違和感をおぼえる。ついでにいえば、製作会社やフリーライターにコスト負担を押しつけつつ、日本一の高給を維持しつづけている大手メディアについても、筆者は何ともいえない居心地の悪さを感じている。(p25)

たしかに、「一人で上場企業5社から内定」という学生もいたが、秋まで引っ張っても内定ゼロという若者もいた。要するに、企業側の採用ハードルがあまり下がらず、評価される学生とそうでない学生に二極化が進んでいるのだ。(p82)

根本的な対策としては、正社員と非正社員の格差是正、および世代間の格差是正を実施し、20代、30代に回すリソースを増やす以外にはない。(p110)

「朝まで生テレビ!」の格差特集では、いつも貧困側の代表が連合と社民・民主両党だが、これなどはもはやジョークとしかいいようがない。「格差がなくなってほしくない人たち」が貧困代表として顔をそろえているのだから。 (p187)

老若男女問わずお薦めな本。雇用問題をめぐる、こういう冷静な議論を頭に入れておくべき。キャリアパスをどうしたらいいか悩む学生なんかも、本書を読むと参考になるかも。

『銀行とのつきあい方 銀行がホイホイお金を貸したくなる社長になる方法! 』の読書感想

『社長さん! 銀行員の言うことをハイハイ聞いてたらあなたの会社、潰されますよ! 』の続編。前作と内容が重複するところも少しあったが、読む価値あった。というか、こっちのほうが大分いいと思う。どちらか一冊だけなら、絶対こっちを読むべき。

主張は一言でいうと「銀行融資を引き出す小手先テクニックなんかなくって、要は、ちゃんと経営して優良企業になりましょう」という、まぁみもふたも無いことになる。が、そこがいい。結局、それが一番いいに決まってる。で、当然それってつまり、ちゃんと経営するためには、結局、経営者として日々、本を読むなり、いろいろなセミナーとか研修会にいくなり、経営やら簿記やら語学やらの勉強をするなり、努力しなくてはいけませんね、ということになると思う。

良い経営者になるのに、王道なし。ってところか。

『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』の読書感想

読書とか速読は重要テーマなので、たまにはそういうことが書いてある本も読むようにしているんだが・・・本書から得たものは少なかった。本によって読み方を変えるべき、とか、速読は重要なところだけ読めばいいのだから要はいかに「どうでもいい部分を捨てるかが重要」とか書いてあったが・・・要するに、ある程度本を読む人にとっては、そういう当たり前なことしか書いていなかった。

ビジネスマンでぜんぜん本を読まない人もいるが、そういう人はとりあえず月一冊からでいいからとにかく読む習慣をつけよう、と書いてあったが、本書は、そういう人がターゲットに書かれているのかな。

お薦め本が60冊挙げられていてが、必ずしもそれらが全て良い本とも限らない、とも思った。僕はそれお薦めしないけどなー、という本も、60冊の中に入っていた。大体、どういう本を読むべきか、というのは、人によるし。同じ人でも、タイミングによってどういう本を薦めるべきかも違ってくるし。一概に「この60冊」と言われても・・・。しかも、著者が昔書いた本が、4冊も入っているし。

京大かっこよすぎ

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news5/2009/090520_2.htm

京都市・京都府から休校も要請されているが、京大の専門家が医学的・生物学的見地から対応を考えた結果、それほどのことではないと判断し、休校にしません、と。

この対応はしびれるわ。

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news5/2009/090521_3.htm

薬局やスーパーでディスポのマスクが手に入らなくても悲しむ必要はありません。昔風のガーゼ・マスク(手製でもOK)を一日の終わりに洗い、熱湯かアイロンをかけて消毒すれば何度でも使えます。

貴重な知識をありがとう、京大。

GDP(実質季節調整済)、1-3月期は、年率-15.2%

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe091/main1.pdf

「日本経済は予想以上に悪いから、2009年1-3月期のGDPはきっとかなり悪いだろうし、それが発表される5月中旬は、多くの企業決算発表と重なって、きっと赤字赤字赤字って発表ばっかりだろうから、日本株安&円安が進むでしょう」、とか誰かが言っていた(そして私もそんな気がしていた)のに、株はどちらかと言えば上がっているし、為替はどちらかと言えば円高。なんででしょう・・・全然わかりませーん。あぁ無知な私。

GDP減については、いやはやびっくりですね。でも、実感が伴っているといえば伴っているが、伴っていないといえば伴っていない。なんというか。働き始めて一年目でいきなりリーマンショックから世界的金融危機から世界的同時不況になってしまったので、比較観がなくって、なんとも言えない。

上場企業の決算発表をいろいろ眺めていると、製造業はガタガタ、食品は悪くない、という印象。将来業績の見通しが急激悪化して、繰延税金資産を計上できなくなって資産を取り崩した、とかいうニュースがあって最初言っている意味分からんかったけど、あれって税効果会計の話か?(間違っていたら教えて、誰か会計士さん。)今回打撃を受けている製造業は特にダブルパンチ。今期赤字を出した上に、税効果会計を適用できず、繰延税金資産を取り崩すために費用を計上、その分、当然、自己資本は悪化。特別損失でさっさとウミを出して来期以上はV字回復・・・というシナリオを描いているところもあるんだろうけど、そううまくいくかどうか。

ところで・・・

2009 年1~3 月期の実質GDP(国内総生産・2000 暦年連鎖価格)の成長率は、▲4.0%(年率▲15.2%)となった。

とあって、ためしに年率計算自分でしてみたんだけど、何回やっても計算が合わないのね。年率計算の方法は、こことか参照。少し悩んで、ようやくわかったんだが、「▲4.0%」ってのが近似なわけね。原型列からデータとって計算したらピッタリあった。厳密には、-0.040386165で、これを使って計算すると、-0.152019233とかになるってこと。

『カラー図解 鉄と鉄鋼がわかる本』の読書感想

面白かった。知らないことだらけでの分野の本を読むのって、楽しい。鉄すごいよ鉄。目次。

第1章:「世の中の材料」を俯瞰し、「鉄」がどのような存在なのかを探る
第2章:幅広い性質を発現する「鉄」の特徴や可能性を探る
第3章:高強度の最先端をいく「線材」
第4章:高強度と高機能を実現する「棒鋼」
第5章:鉄の磁性を活かした「電磁鋼板」
第6章:錆に負けない鋼「ステンレス鋼」
第7章:「鉄に願いを」をテーマに、さまざまな分野で鉄に関わる8名の方々か
らのメッセージ

中学校くらいの社会の授業を思い出した。鉄鉱石とかを高炉で還元して銑鉄をつくる、とか。鉄は自然の状態では酸素を結びついていてサビているので、この酸素を取り除かなくてはいけない、とかいうお話。早い話、コークスとかを入れて炭素を酸素と結びつかせて二酸化炭素などをつくることで、酸素を取り除くらしい。

その他、いろいろと合金の話とか。鉄を主成分とした合金を鉄鋼と言うらしい。鉄鋼の中で一番有名なのは、ステンレス。ステンレスは、鉄のほかにクロムが入っているもの。ステンレスというと、磁石にくっつかないので鉄成分なさそうなイメージあるが、鉄も入ってるんだってさ。クロムの他に、ニッケルとかモリブデンとかが入ったりすると、ステンレスとしては高級なものになっていくらしい。

新日鉄のこのページにけっこう詳しくかいてある。本書を読まなくても、このページ読むだけでもけっこう面白いかも。

(追記)
今回僕が読んだのは、『カラー図解 鉄の未来が見える本』ではなくって、『カラー図解 鉄と鉄鋼がわかる本』でした。間違えました、すいません。『カラー図解 鉄の未来が見える本』の方もそのうち読んでみます・・・。

『なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学』の読書感想

けっこうためになった。現時点で、日本語で書かれた、今回の金融危機に関する、一番よい本だと思う。

投資銀行などでは、運用に成功したら多額の報酬がもらえるけど、失敗して多額の損失を出してもクビになるだけなので(結局サラリーマンでしかないので)、結果的にリスクを過剰にとってしまっていた、という非対称性があった、とか。今回の危機で、資本主義は終わった、とかいう議論があるけど、それは浅はかすぎる、とか、経済学者=市場に任せれば全てうまくいく人たち、という批判があるけど、それって的外れ、とか。あと、30年前のマクロ経済学しか知らない人が、ケインズ的政策を言ったりしてる、とか。「資本主義終わった」「傲慢強欲ウォール街のせい」みたいな感情的本が大量出版されている中、こういう冷静な議論が出来ているのは、すばらしいと思う。

でも、マクロ経済学がいまどうなっているのか、普通の人は知らないでしょ。それって、ちゃんとした経済学者が啓蒙をちゃんとしなかったことに大きな原因があると思うから、むしろ被害者だと思うけど。日本の経済学者の怠慢だと思う。一方で「財政政策すると、45度線って理論があって乗数効果があるんだ」と言っていたり、また一方では「財政政策したって、クランディウングアウトして民間投資を相殺するから、効果はないんだ」って書いてある。いったいどっち、と専門家以外が混乱しても全然不思議じゃない。そういう僕自身も、そんなに財政政策の有効性とかをめぐる議論は、学識が高いわけじゃないけど。(でも、ちょっとそういう話も知ってる範囲で書こうかな。その話は長くなるんで、根気がないと書けないんだが。)

あと、p242で、

池尾 実は私自身は、林=プレスコットと少し違う見方をしています。

とか書いているが、自分の主張があるならば、論文として国際的舞台で主張したらどうでしょう、って思う。日本語で書いた本で主張したって、世界を相手に聞いてもらえないでしょう。特に、hayashi prescottみたいな有名論文を相手にするならば、トップジャーナルで主張しないと、誰も相手にしないのでは。幸運にも林先生は日本語が出来るけど、プレスコット先生は、池尾先生がこんなところで何か言っているなんて、永久に知らずじまい。それでは、活発な議論は出来ない。国内レベルではなく、世界レベルでちゃんと学問的業績を出してほしい。(時短&RBCで日本のlost decadeを説明できる、なんて、そんな単純な説明はさすがに無理があるだろう、という気持ちは分かるが。。。)せっかく超一流経済学者が(それも二人も)、日本経済に興味を持って研究しているわけだから、それと議論するために同じ土俵で勝負してもらいたい(hayashiは日本有数の経済学者、prescottは2003年ノーベル受賞)。

帯に『「世界標準」の経済学講義。』と書いてあるが、世界レベルで研究活動をしていない人がそんな風に言っても、普通に考えれば説得力はない。ただ、僕が本書を読んでみた結果、「現時点で、日本語で書かれた、今回の金融危機に関する、一番よい本」というのが素直な感想。さすがに、この二人がトンデモということは絶対に無いのだが、せっかく高い学識を持っているのだから、世界的な学問的業績もきっちり出して、実力を証明していただきたい。

『人を動かす』の読書感想

まいったね、こりゃ。読書中ずっと反省しっぱなしだったわ。超名著。不朽の名作とは、こういう本のためにある言葉だろう。

 

アマゾンの商品説明が非常に秀逸なので、内容についてはこれ以上は書かないけど、「絶対読んだほうがいい」と誰に対してもお奨めできる本。学生でも、社会人でも。職種に関係なく。良書。いかに自分の人間が出来ていないか、ってことを痛感させられる。この本ほど、自分を人間的、人格的、器的に成長させてくれる本はないかもしれない。

いわゆる「自己啓発本」の中では、一番いい本なのではないだろうか。ちなみに、今まで僕が読んだことある「自己啓発本」は、

あと他にもいろいろ読んでるかもしれないが、とりあえず記憶に残っているのは、この3冊くらい。ここに挙げた本は全部良書だと思うが、個人的には『人を動かす』が一番気に入った。

これらの本に共通する教訓を一つだけ僕があげるとすれば、「原因は、自分にある」ということ。周りが悪い、環境が悪い、上司が悪い、部下が悪い、先生が悪い、家庭が悪い、住まいが悪い、政府が悪い・・・・悪い悪いと不平不満は人間みな持っているが、「原因は、自分にある」と考えることで、人生幸せにすごせるよ、とか、まぁそういうこと。そういう発想でいると、運も良くなって直感も冴えてくる。気がする。

「経済学的思考が身についた」って喜んでいるのって、なんて反経済学的な喜びだろう

「僕の人生のdiscipline(規律)は、経済学」と、この前何気なく考えていたんだが、それって変なことだよね、と気づいてしまった。

「経済学部で経済学を学んで、経済学的思考が身についた」と喜んだ事があるが、これも同じように変なことだよね、と気づいてしまった。

経済学では、合理的な経済主体を想定する。合理的とは、コストとベネフィットの相対的関係を比較して意思決定することを言う。経済学では、個別の主体がそうやって行動した結果として、経済があると考える。だから、「僕の人生のdiscipline(規律)は、経済学」とか、「経済学部で経済学を学んで、経済学的思考が身についた」というのは、そんなのは経済学によれば、人間であれば、by definition成り立っているはずのことなのである。つまり経済学によれば、「すべての人間の人生のdiscipline(規律)は、経済学」であり、「経済学部で経済学を学んでいなくても、生来、人間はみな経済学的思考が身についているはず」なのである。

「経済学的思考が身についた」って喜んでいるのって、なんて反経済学的な喜びだろう。

誰かこのジレンマから救ってくれ。

福岡正夫教授って、QJEに業績あったんだ!

ついこの前知ったんだが。

http://www.jstor.org/pss/1884848

伝え聞くところによれば、ご本人はこういうのをあまり自慢したがらなかったらしい。すごい。学者の世界って、学問的業績が決定的に重要なんで、本当に尊敬します。