『快適睡眠のすすめ』の読書感想

いかに睡眠の質を上げるかが最近の僕の重要テーマの一つ。というわけでこんな本を読んでみたわけだが。内容は、それなりに説得的で、今後の睡眠を考える上で勉強になった。しかし、本書は致命的なミスを一つ犯していて、それが心から気に入らない。

致命的なミスとは、引用している論文について、ソースを明示していない点。例えば、冒頭のp3に載っている「図1.1 脳波と意識水準」のソースは、「ペンフィールドら,1954」と図の下に書いてある。では、この「ペンフィールドら,1954」という論文は、どういう学術雑誌の何巻目に載った論文なのだろう?あるいは、著者のフルネームは?「ペンフィールドら」とあるが、共著者の名前は何だろう?普通、そういう情報が巻末なりにまとめて詳細に書いてあるのだが、そういう情報が一切本書にはない。

一般の人は、このミスをそれほどの事とは感じないかもしれない。しかし僕は、大学院でちょっとだけだが研究をしていたので、こういうミスは、二つの意味で許せない。

一つに、referしている論文のソースを明示しないと、読者に必要な情報を提供していないから。論文といっても、その質にはピンからキリまである。どの学術雑誌(ジャーナル)に載ったのか?これによって、その論文の価値、信憑性、レベル、質は大きく異なる。例えば経済学の場合、同じ論文でも「Econometrica」と「三田学会雑誌」では、月とスッポンなわけだ。

二つに、その論文を書いた人に失礼。一つの論文を仕上げてpublicationに結びつけるまで、どれだけの労力をかけているか、想像してみてほしい。その労力を踏みにじった。

最低なミスだと思う。

...さて、内容のほう。いかに快適睡眠を確保するか。これについては、僕の個人的なtipsと本書で知りえた情報を箇条書きにしておこう。

  • 体温が下がっていくときに寝付きやすい。故に、風呂からあがって20分くらい経過した時点で汗が引き、体温が下がっていくタイミングで寝るべし。
  • 多量のアルコールを飲むな。酔っ払って眠たくなるのは、一種の麻酔。麻酔が覚めると、逆に目がさえて眠りに戻りにくい。飲みすぎたら、明け方起きて目がぱっちりしちゃうでしょ?
  • コップ一杯の水を、睡眠直前の飲む。飲みすぎてもダメ。トイレ行きたくなるから。飲まないのもダメ。寝汗で随分人は水分を失うから。
  • 騒音を遮断する。我が家はかなり静かな好立地なので、これを気にすることはない。今のところ、子供もいないし、静かに眠れている。うるさい環境に住んでいる場合、耳栓をお奨めする。
  • 自分にあったベッド、枕を買う。これ、重要。実際に家具屋にいって、寝てみて決める。睡眠は一生の健康にかかわることなので、新婚生活を開始するにあたって、僕たちも割と高価なマットレスを買った。
  • 寝る前にタバコ、コーヒー、紅茶などはやめる。僕はタバコ吸っていないし、普段、水しか飲まないので、これも僕は気をつける必要はないけど。
  • 寝具を清潔に保つ。パジャマ、シーツなどを頻繁に洗う。精神的な効果もあるのか、ぐっすり気持ちよく眠れる。
  • 生活リズムを乱さない。寝る時間、起きる時間、食事の時間、などを規則正しく。これも当然だけど、出来てない人多いでしょ?休日もなるべく平日と同じ生活パターンを維持する。週末、ついつい夜更かし、ってのがいけない。それが月曜の午前中の体のだるさの原因。
  • 睡眠時間を切り詰めるのは、6時間までにしよう。それより切り詰めるのは、体に無理が来るらしい。出来れば、7、8時間くらいは寝よう。6時間以内睡眠の人は、年をとった後、若い頃の無理がたたってツケを払うことになるんじゃないか。
  • 朝起きたら、朝日を浴びよう。冬はまだ暗かったりするけどね。

こんな感じかな。

『P&G式 世界が欲しがる人材の育て方―日本人初のヴァイスプレジデントはこうして生まれた』の読書感想

P&Gの友達にすすめられて読んでみた。が、正直言ってつまらなかった。理由を整理してみたら、三つあった。

一つは、カタカナ英語が多すぎて、分かりにくい読みにくい疲れるから。想定読者は誰なの?「いい人材どうやって育てよう」と悩む日本の経営者、人事担当者などではないの?そういう人たちが本書を読んで、読みやすいだろうか?読者の視点に立って執筆していないでしょ?P&G社内ではそんな調子でカタカナ英語連発してOKでも、普通はわけが分からんよ。

二つは、自慢話が多いから。そんな話が聞きたいのではない。世界が欲しがる人材の育て方を知りたいのだ。余計なことにページを割かないで、世界が欲しがる人材の育て方にページをもっと割いて欲しかった。

三つは、P&Gで働くその友達から既に割とP&Gについて話を聞いていたから。その友達とはけっこう仲がいいんで。まったく知らなかったら、けっこうびっくりすることが多かったかもしれないけど。

・・・と、けっこう悪く書いてしまったが、あくまでもこの本に対する感想ね。P&Gという会社そのものは、いい会社なんだと思う。この著者も、「I love P&G」という気持ちがにじみ出ているし。僕の友達も楽しそうに生き生きと自発的に働いている。この会社で働く人に対する印象は、かなりいい。

P&Gに就職を考えている学生は読むと良いかも。

『人は見た目が9割』の読書感想

今年読んだ本の中で、一番時間の無駄だった。かなりひどい。けっこう売れているようなのだが、それはタイトル勝ち。タイトルに惹かれて買った僕の負け。畜生。くやしいですっ!

内容はタイトル通りで、p18ー19に以下のようにある。

アメリカの心理学者アルバート・マレービアン博士は人が他人から受け取る情報(感情や態度など)の割合について次のような実験結果を発表している。

○顔の表情 五五%
○声の質(高低)、大きさ、テンポ 三八%
○話す言葉の内容 七%

話す言葉の内容は七%に過ぎない。残りの九三%は、顔の表情や声の質だというのである。実際には、身だしなみや仕草も大きく影響するだろう。

ついついコミュニケーションの「主役」は言葉だと思われがちだが、それは大間違いである。演劇やマンガを主戦場としている私は、人は能力や性格もひっくるめて「見た目が九割」といっても差し支えないのではないかと考えている。

非常にまずいと思うよ、これは。「事実」と「意見」を混同してしまっている。アルバート・マレービアン博士は、「感情や態度に関して話しているときに限って、言葉は7%」と言っているだけなのに、著者はこれを勝手に一般化して、「話す言葉の内容は七%に過ぎない」と自分の思い込みの意見を書いている。その結果、ミスリーディングなタイトルをつけている。

念のため、アルバート・マレービアン博士本人は何と言っているか、確認してみよう。この著者の言うことはぜんぜん信用できないから。

http://www.kaaj.com/psych/smorder.html

Total Liking = 7% Verbal Liking + 38% Vocal Liking + 55% Facial Liking

Please note that this and other equations regarding relative importance of verbal and nonverbal messages were derived from experiments dealing with communications of feelings and attitudes (i.e., like-dislike). Unless a communicator is talking about their feelings or attitudes, these equations are not applicable. Also see references 286 and 305 in Silent Messages — these are the original sources of my findings.

というわけで、やっぱり、感情や態度以外についての語るときには、この等式は適用できません!とアルバート・マレービアン博士本人も、はっきり言っている。

また、本書では、「こういう研究がある」と紹介するとき、ちゃんと引用元をリファーしていないのも問題だと思う。ちゃんとその論文を読んで中身を正しく理解し、引用するべきだ。それをしないから、こういうミスリーディングな本を書くんだ。

随分悪く書いてしまったが、一応、いいところも書いておこう。著者は、週間マガジンの「哲也-雀聖と呼ばれた男」の原作者らしく、マンガに詳しい。マンガ家が、登場人物の感情を読者に訴えかけるのに、いかに台詞以外の工夫をしていたのか、という下りは興味深かった。タイトルを「読者に訴えかけるマンガの技法」とかにして、それに焦点をあてた内容にすればよかったのに。

これは無いわ。

(参考)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%B3

http://yeemar.seesaa.net/archives/20060107-1.html

モンティ・ホール・ジレンマ

人間の直感にはすごい力があると思う。証明なしに、「ただ、なんとなく正しそうだから」「直感的にそうっぽいから」というだけで、真理を射止めてしまうことがよくある。

ところが確率に関して言うと、途端に人間の直感は信用できなくなる。その良い例が、モンティ・ホール・ジレンマ。wikiから引用する。

プレイヤーは、3つのドアを見せられる。ドアの1つの後ろにはプレイヤーが獲得できる景品があり、一方、他の2つのドアにはヤギ(景品がなく、ハズレであることを意味している)が入っている。ショーのホストは、それぞれのドアの後ろに何があるか知っているのに対し、プレイヤーはドアの後ろの様子はもちろん知らない。
プレイヤーが第1の選択をした後、ホストのモンティは他の2つのドアのうち1つを開け、ヤギを見せる。そしてホストはプレイヤーに、初めの選択のままでよいか、もう1つの閉じているドアに変更するか、どちらかの選択権を提供する。プレイヤーは、選択を変更すべきだろうか?

ドアを変更したって、確率は変わらないっしょ!って普通は思うでしょう?それが普通の人間の直感。でも、その直感、間違っている。

一番分かりやすい解説は、おそらくこれだろう。

http://ishi.blog2.fc2.com/blog-entry-182.html

カード(ドア)を10枚にして考えたら、分かりやすい。「自分が選ばなかった9枚のうち、はずれの8枚はどれか」を司会者が教えてくれているのがポイント。いきなり二択だと確率は50%だが、『こういう設定で、こういう経緯で、(司会者によって)こういう情報がアップデートされた』という情報をあなたがもっているので、一見二択だが、確率は10%vs90%になるのである。

更新情報を有効活用すると、意思決定は改善できるという、当然のことでしかないのだが。確率に関する人間の直感の不正確さに付け込んでいる人は存在するに違いない。相当頭がよくないと出来ない芸だが。

『国語算数理科しごと―子どもと話そう「働くことの意味と価値」』の読書感想

本書は、dankogaiが絶賛していたため随分前に購入。やっと読了。これもすごい本。最近、いい本ばっかりに出会えている幸運に感謝。

小学5年生の娘が「お父さんの仕事って何?」と聞いてきたところからお話はスタート。いつかこんな質問されるんだろうな、と妄想しつつ読み進める(まだ子供はいないよ、念のため)。

p23でお父さんが娘に言った以下の一言がすごい。

「仕事とは、「仕事を守ること」だと思っているんだ。」

当たり前なのだが、すごい定義だと思う。さらにp25で、

仕事における「約束」は、「会計」で表現される

と続け、その後のお父さんと娘のやりとりを読むだけで、会計の仕組み(=複式簿記)が理解できるように書かれている。「会計」で表現される「約束」とは、要するに、株主に対する「ちゃんと利益を出しますよ」という約束と、銀行に対する「借りたお金はちゃんと利子をつけて返しますよ」という約束の二つのことでしかないわけだが、PLとBSの概念がきっちりと説明されており、分かりやすい。というわけで、会計に弱いビジネスマン向けの会計入門本としても本書は十分活用可能。

本書では、娘がケーキ屋さんになったと想定してお話を盛り上げるのだが、p118にあるお父さんの以下の言葉も印象に残る。

「だから、ケーキ屋さんと仕事をする人々は、約束した日に約束した量の、約束した品質の商品を納め続けなければならないんだ。ケーキを取り巻く多くの人々が、ひとつひとつの約束を守ることによって、はじめてケーキができるんだよね。この、日常的な約束を守り続けることが仕事のスタートで、それができることによって、はじめて、会計の約束も守ることができるんだ。この、日常的な約束が守れなければ会計の約束は絶対に守れないんだよ。」

ここで「ケーキ」をあなたの会社が生産している財(製品)に置き換えてみれば、この文章は、公務員を除くすべての職業人に訴えかける文章となる。

さ、連休明けの明日からもきっちり約束を守ろっと。

“The Luck Factor, Changing Your Luck, Changing Your LIfe: The Four Essential Principles”の読書感想

This book is amazing. 著者の研究のやり方について、ちょいちょい疑問を感じることがあったが(注)、概ね著者の主張は説得的で同意できる。自分が運の悪い人だと感じている人に、激お奨め。 ちなみに、邦訳版もある→運のいい人、悪い人―運を鍛える四つの法則

本書では、「Lucky people」「Unlucky people」「どちらでもないpeople」の三つのグループについて、どのような差があるのかを研究している。その結果、

Luck is not a magical ability or a gift from the gods. Instead, it is a state of mind—a way of thinking and behaving.
(pp.165)

Scientific research has revealed that the real explanation of luck lies in four basic phycological principles.
(pp.192)

ということを明らかにしている。ではfour basic phycological principlesとは何かというと、以下。僕なりの解説も付与する。

  1. Maximize your chance oppotunities:「luckは人が運んできてくれるものだから、人との接触を増やしなさい」ということ。
  2. Listen to your lucky hunches:「直感には、いまだに解明されていないすごい力があるから、直観力を磨きなさい」ということ。
  3. Expect good fortune:良いことを期待すると「ウソから出た真」になるよ、ということ。
  4. Turn bad luck into good:運の悪いことに直面したら、そこから得られる教訓を引き出して今後に生かしなさい、ということ。

細かいところでツッコミを入れたくなったが、大きな議論の道筋は説得的。特に「3.Expect good fortune」が「ウソから出た真」になることの説明は、非常に論理的で好き。

運がよくなるためのexcerciseも紹介されている。運が悪い人はお試しあれ!本書の内容が説得的だと感じたならば、excerciseのやる気も高まるはず。

(注)気に入らなかった点は、大きく二つある。一つは、”Luck”という言葉の定義を明確に与えていないこと。これはいまだにむかつく。定義も満足に出来ないのに、Scienceといっていいの?二つに、統計的有意かどうかを本文で報告していなかったこと(でも、巻末のNotesにp-valueが報告されていることに、読み終わってから気づいた)。

『仕事の思想―なぜ我々は働くのか』の読書感想

那須で子供と一緒に暮らす生活をしている友達に勧められた。これも相当な良書。既に社会で成功した人、いま猛烈に働いている働き盛りな人、社会に出たばかりでちょっとお疲れ気味の人、これからシュウカツする学生、その誰が読んでもおもしろいと感じるに違いない。

目次はこんな感じ。

第1話 思想/現実に流されないための錨
第2話 成長/決して失われることのない報酬
第3話 目標/成長していくための最高の方法
第4話 顧客/こころの姿勢を映し出す鏡
第5話 共感/相手の真実を感じとる力量
第6話 格闘/人間力を磨くための唯一の道
第7話 地位/部下の人生に責任を持つ覚悟
第8話 友人/頂上での再会を約束した人々
第9話 仲間/仕事が残すもうひとつの作品
第10話 未来/後生を待ちて今日の務めを果たすとき

なかなか高尚な話を展開している。第2話で、「仕事の報酬は、成長である」と主張し、その後の話はすべて、この考え方が基盤になっている。第3話は、成長するための方法として、目標が大事だ、と述べる。第4話では、厳しい顧客こそが、自己の成長を促す、と。第5話では、顧客を自分の考え方に共感させるのではなく、自分の考え方を顧客に共感させるべし、と。第6話では、他人との格闘なしには、成長はない、と。第7話では、部下の人生に責任を持つことで成長できる、と。第8話では、成長の過程で苦しいことがあるときには、友人の支えによって助けられる、と。第9話では、仕事の作品の一つとして、仲間そのものがあげられる、と。第10話では、トライしないと夢は絶対に叶わない、と。

著者の人間としての深さが垣間見られる本だった。

『思考の整理学』の読書感想

有名本らしい。『「超」整理法―情報検索と発想の新システム』でも引用されていた。1986年に出版されているのだが、いまだに読む価値はある。

本書では、自分の頭で能動的に考える能力を、飛行機能力と呼んでいる。これに対して、知識を受動的に得る能力を、グライダー能力と呼んでいる。学校ではグライダー能力しか磨かれない。それだけでは足りない、引っ張られるままのグライダーではなく、自力で飛べる飛行機になれ、というのが著者の考え方。

では、飛行機になるにはどうしたらいいか?そのヒントが本書にはいっぱい詰まっている。たとえば、脳内を整理するための睡眠については、

平常の生活で、頭が忙しくてはいけない。人間は、自然に、頭の中を整理して、忙しくならないようになっている。
睡眠である。
(p.113)

と述べてみたり。これを読んで、「起床直後のゴールデンタイムを有効利用しよう」と思った。あるいは、忘却の大切さについては、

人間は、文字による記録を覚えて、忘れることがうまくなった。それだけ頭もよくなったはずである。
(p.121)

と述べてみたりしている。これを読んで、「メモ魔になることの大切さ」を感じた。きわめつけは、「時の試練」という章にある、

思考の整理とは、いかにうまく忘れるか、である。
(p.127)

という文。まだまだ自分の脳に全力を出させることは出来ていないと思った。

ちなみに、なぜ飛行機能力を高める必要があるのだろう?あとがきに「考える」という行為に対する著者のスタンスが書かれているのだが、これが好き。共感する。

考えるのは面倒なことと思っている人が多いが、見方によってはこれほど、ぜいたくな楽しみはないかもしれない。何かのために考える実利実用の思考のほかに、ただ考えることがおもしろくて考える純粋思考のあることを発見してよい時期になっているのではあるまいか。
(p217)

 

cf)
http://blog.keychi.net/2008/09/glider/