『スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学』の読書感想

うーん,正直どう感想を述べたらよいのかわからない.たぶん僕はこの本の想定読者層に入ってないから.

経済学の院生として述べると,著者の吉本佳生さんの名前も聞いたことないし,研究業績を見ても,海外学術誌に業績(英語論文)が一本も無い.なので,研究者としての著者は残念ながら一流とは言えない.が,本(日本語)はたくさん書いているようで,経済学の研究者というよりも,経済学の啓蒙者という感じか.そういう観点から本書を眺めると,経済学のことをまったく知らない一般人(主婦や高校生など)が主なターゲットなのだろう.タイトルもそれを意識してか,上手につけられている.

で,内容は,「コストと言っても,お金だけじゃなくって手間隙(=労力&時間)とかもあるんだよ」という(当たり前の)ことを何回も繰り返し述べている,という感じか.このことが軸にあって,その他の経済学の重要概念(比較優位,機会費用,規模の経済,範囲の経済,価格差別etc)がちらほら紹介される,という感じ.

スタバの話は,たくさんある章のうち,一つの章で扱われているに過ぎない.で,タイトルの意味するところは「スタバからしたらグランデ売ったほうがmarginal profitが大きいから儲けられるし,消費者からしたらコーヒーの単位当たり価格が安く買えるからグランデ買ったほうがお徳感が大きいね」ってことでしかない.

ある程度経済学を知っている人間は読んでも時間の無駄だと思う.しかし,日々の生活に直接関係あるトピックばかりを取り上げ,簡単な経済学を使って分析している本書を読んで「経済学って本来,もっと身近にあるべきものなんだよな」と思ってしまった.院生やってると数式と戯れているだけで現実経済から遠ざかってしまうので,この点は現実経済に目をちゃんと向けている本書はなかなか偉いなとも思う.それに,著者の洞察はあたり前のことばかりだけど,たまにけっこう深いなと思わされることもあった.

高校3年生の春休み(=大学入学直前)の自分に読ませたい.

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