ハーバードのサマーズ元学長の炎上発言に見る教訓

Larry Summersというスーパーマンみたいな人がいる.ウィキペディアのページを見れば,いかに彼がアンビリーバボーか分かりますw.

Summersはハーバードの学長をやっていた時にある問題発言をしてしまって,学長辞任に追い込まれた.その発言の趣旨は,「一流大学の研究者に女性が少ないのは,生まれつきの性差があるからではないか」といったものである.これが「女性蔑視発言」ということで猛烈な反発を食らったわけである.

しかし,彼の真意は女性蔑視ではないことは,彼の主張が書かれているハーバード学長のページを読めば明らか.彼が言っているのは,「数学的能力などのヒトの属性変数の標準偏差は,女性より男性のほうが大きいかもしれない」ということでしかない.標準偏差(分散)とは,バラツキことである.これは例えばこういうことを言っている.「すごくIQが高い水準には(女性に比べ)男性のほうが多いかもしれないが,その一方で,すごくIQが低い水準にも男性のほうが多いかもしれない.」こういう主張は,計量経済学によるデータ分析によって明らかになっている.確かに歴史に残るような天才は男性ばかりな気がするが,その一方で,知的障害者の方も男性に多いような気がする.つまりSummersの主張はこういうこと.「全米でTop 25の大学に入るようなレベルの物理学者というのは,極めて高い頭の良さが勝負で,このレベルに入る男性と女性の比率は,男性のほうがだいぶ大きくなって,だから一流の科学者には女性が少ないのかもしれない.」

バラツキの上位のほうにスポットライトをあてれば,確かに「Summersは女性蔑視発言をした」と言える.しかし,バラツキの下位のほうにスポットライトをあてれば,「Summersは男性蔑視発言をした」とも言えるのである.全体を正しく伝えるべきであって,一面のみを伝えるのでは恣意性を感じる.

ところが,Summersはかなり不遜な態度を普段からとる人物らしく,もともと反感を買いやすい人だったらしい.こういうことに加えて,マスコミの無知も重なって(よく勉強せずに,標準偏差の意味を調べずに偏った報道をしたということ),Summersの学長辞任という流れになった.

この件から得られる教訓は三つ.

1)普段から謙虚であれ.傲慢な人間のわずかな隙をみんな見逃さないから.
2)マスコミの報道は偏ってる.そういう前提で個はマスコミを利用するべき.
3)計量経済学は時にヤバイ結果を明らかにしてしまう.でも圧力に屈せずそのまま発表するべき.

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