学問(learning)

“Irrational Exuberance”の読書感想


Robert Shillerのベストセラー本,”Irrational Exuberance”の2005年のSecond Editionをようやく読了した.First Editionは2000年に出たこれ邦訳版も出ている模様.ただしFirst Editionの邦訳である点に注意.2000年から2005年までの株式市場と住宅市場の分析が追加されているので,当然読むならSecond Editionを薦める.英語の勉強にもなるし.
で,中身.Shillerのスタンスは「効率的市場仮説?なにそれ?そんなもの信じる人いるの?え?信じてる人いるの?うそでしょ?」という感じ.効率的市場仮説については,このエントリーを参照.効率的市場仮説の背後には,学者たちの市場への絶大なる信頼感と,人々は合理的であるという都合のよい思い込みが存在してい.ところがShillerのタイトル”Irrantional Exuberance”(根拠なき熱狂)を見ればわかるとおり,Shillerは「人々が合理的なわけないだろ」と考えている.
とはいえ,Shillerは経済学界でメインストリームに座る権威.従来の経済学者は「人は合理的」を信じ続けていたが,最近は「人は合理的ではない」として心理学を経済学に輸入した行動経済学とか行動ファイナンスとか呼ばれる分野も台頭してきている.
効率的市場仮説を徹底的に信じている学者もいれば,Shillerのようにまったく信じていない学者もいる.信じている学者の代表が,『ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理』のMalkiel .信じていない学者は,ShillerのほかにCampbell, Lo, MacKinlayなど(3人とも一流過ぎて言葉にできない).ちなみに,LoとMacKinlayはA Non-Random Walk Down Wall Streetという本を出している.真っ向からMalkielにケンカうってるな.Malkielの本の原著タイトルは,A Random Walk Down Wall Street
Shillerは参考文献リストで膨大な文献を挙げているんだが,その中にMalkielの本がないのがおかしかった.さらに,LoとMacKinlayの”A Non-Random Walk Down Wall Street”にも,Malkielの”A Random Walk Down Wall StreetMalkiel”が参考文献にあがっていない!
ShillerとMalkielってきっと犬猿の仲なんだろうな.
どちらの立場も,かなり説得的.Shillerの本を読めば,「効率的市場仮説なんてウソだな」という印象を持つし,Malkielの本を読めば,「効率的市場仮説は概ね正しいな」と思わされてしまう.どちらの立場も,思い込みや印象論だけでなく,ちゃんとした一流の経済学者がアカデミックな根拠を示した上での主張である.
どうして両方の立場が並存しているのだろう?実はこの問いが,僕がやっている研究とつながってくる.僕からすれば,今までの効率的市場仮説の研究のやりかたでは「両方の立場が並存して当たり前」という結論になる.
効率的市場仮説(Efficiency Market Hypothesis)の研究をしている僕としては,良いインスピレーションをもらえた.

“Irrational Exuberance”の読書感想” への4件のフィードバック

  1. 蓑谷せんせは、
    「期種(日時、週時、月次、四半期、年)や観測期間に関わりなく、株価がランダム・ウォークするという主張も、ランダム・ウォークしないという主張もともに誤りである。ランダム・ウォークするときもしないときもある、というあいまいな結論が実は正しいであろう。」
    としてましたね。。。(『金融データの統計分析』p278~279)
    Shillerセカンド・エディション知りませんでした(恥)。
    買ってよみまっす。。。

  2. 蓑谷先生もそんなこと書いてたんですね.その本持っていますが,ちゃんと読んでいませんでした.

  3. 『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』の読書感想

    金融日記の人の本。効率的市場仮説が主なテーマの、非常にいい本。市場は大変に効…

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